第15話
その後間も無くして、警察官達と他のウォッチャーが合流してきた。旭は彼らと一緒に、リベルタスが隠れ家としていた巨大迷路の中を調査する。
「どう、旭くーん、何か見つかったー?」
「いえ、それが全く」
風華の問いかけに、旭は頭を振って見せる。
旭達はリベルタスのスマートフォンやパソコンを調べたが、テロ計画の類は見つからなかった。また、アジト内を徹底的に調べた結果、銃を一応発見できたが、彼らが購入したと思われる数の半分だけ。爆薬も同じく半分の量しか見つかっていない。
「リベルタスのメンバーに直接聞いてみましょうか」
このままでは埒が明かないと、旭は物置部屋の隅で拘束されているメンバー二人に尋ねる。彼らはパニッシャーに撃たれたが、軽傷だ。尋問のためにと最低限の治療を施して、ここに置いているのだ。
「あなた方に、聞きたいことがあります」
「……なんだ?」
メンバーである金髪とロン毛の男達は旭を睨みつけるが、旭は意に介さない。
「あなた方は少し前に、拳銃を海外から購入しましたね? ここでいくつか見つかりましたが、数が足りない。残りの銃はどこにありますか? それと他のメンバーはどこにいますか?」
旭の質問に対し、先に口を開いたのは金髪の方。
「……残りの銃は、物資を買いに行った仲間が持ってる」
ロン毛は「おい!」と金髪の言葉を慌てて遮る。
「何、喋ってんだ!」
「このガキには、命を助けてもらった。その借りぐらいは返してもいいだろ。それに仲間を裏切ったわけじゃない。あいつらも俺達の状況に、今頃気がついてるはずだ」
「まあ、それもそうか……」
この二人は何を言っているんだ?
旭は金髪に再度質問。
「もう少し、こちらにもわかるように説明してください。物資を買いにいった仲間が銃を持っているということですが、どういう意味ですか?」
「そのままの意味だよ。お前らが来る少し前、俺達とは別のグループが食糧などを買いに外に出かけた。銃を持ってな」
「何故、外出に銃を持って行ったのでしょうか?」
「自衛と、リスク回避のためだ。実際、お前達がここに来ただろ。もし、銃を全部ここに置いていたら、全て押収されてた」
「あなた方は爆薬も購入していましたよね? 調達係は爆薬も半分持ち出しているんですか?」
「そうだ」
「調達係があなた方の今の状況に気づいている、とは?」
「俺達留守番組はあいつらとは定時連絡を取ることになってて、その時刻もすでに過ぎてる」
「……このアジトが我々に検挙されたことがすでにバレている、ということですか?」
「あいつらはここにはもう戻ってこない。もう別のアジトに移動しているはずだ」
「そのもう一つのアジトは、どこにありますか?」
「答えられない。先に言っておくが、隠しているわけじゃない。俺達にはわからないっていう意味だ」
「わからない?」
「俺とこいつはごく最近リベルタスに加わってな、多くを教えられていない。留守番組の中には知っていた奴らもいたかもしれねえが……」
「……さっきのパニッシャーに殺害された、と」
「かもしれねえな」
旭は頭を激しく掻きむしる。
こういうことがあるから、嫌なんだよ。
旭はパニッシャーのやり方に改めて辟易。彼らはテロリストだけではなく、テロリストが持っていた重要な情報さえも抹殺してしまう。金髪達以外にも生き残りは一応いるが、はたして情報を持っているかどうか。
金髪は「あ、そうそう!」と何かを思い出しかのように声を上げた。
「ガキ、今何時だ?」
旭は腕時計で現在の時刻を確認し、「もうすぐ午前十時、です」と律儀に答える。金髪とロン毛は顔を見合わせ、ニヤニヤと笑みを浮かべる。悪意が滲み出る笑みに、旭は薄寒いものを感じた。
なんだ? 何を企んでいる?
警戒する旭の内心を見透かしたのか、金髪は手錠が嵌められたままの腕で、とあるものを指差す。それは壁際に設置されたテレビであり、ノートパソコンと接続されている。
「テレビとパソコンの電源をつけて、あるサイトにいってくれ。面白いものが見えるぜ」
「面白いもの?」
旭は釈然としないながらも、金髪の言う通りにする。金髪が教えたのは、有名な動画配信サイトのURL。そのページでは、とある動画が午前十時に公開予定となっていた。
「この動画が面白いもの、ですか?」
「まあ、焦るな。十時まで待ってくれ」
金髪の言葉通り、旭達その場にいた人間は黙って待つことに。
そして、午前十時になると、動画の公開が始まった。
自動で再生される動画を見て、旭や風華、周りのウォッチャー、警察官達は絶句。
「……篠津川、達也さん……?」
旭は唖然としながら、そう呟く。
動画の中には、篠津川達也の姿があった。




