第13話
それが銃声であると認識した旭は、咄嗟に扉の前から横にずれる。腰のホルスターからテーザー銃を抜き、扉の向こうの様子を伺おうと聞き耳を立てる。
聞こえてくるのは、銃声と悲鳴。
最初、リベルタスが旭に気づいて、扉の向こうから発砲したのかと思ったが、どうも違う。
ただ、何か不穏な事態が発生していることは確かなようだ。
「……悠長に応援を待つことは出来なさそうだな。アイ、今の銃声と俺が先行することを他に伝えてくれ」
「風華さんからの注意事項をお忘れですか? 一人で突っ走るなと」
「緊急事態に対する柔軟な対応」
「……はあ。承知しました。ご無理はなさらぬよう」
旭は扉をゆっくりと開ける。
ドアの向こうは迷路の中と違い、明るかった。通路には電気スタンドが設置されており、室内を明るく照らしている。どうやら自家発電装置で電力を供給しているようだ。
旭は慎重に様子を伺いながら、通路に入る。
「これは……」
通路には、複数の若い男女が転がっていた。彼らの服には、リベルタスのエンブレム。生気の無い顔から絶命していることは明らかだった。
「一体誰が……まさか……!」
旭はとある予感を覚えるが、悠長に止まって考えている場合ではない。。
旭は血溜まりの廊下を警戒しながら、ゆっくりと歩を進める。
空調室の前に来た時、扉が開き、旭に向かって何かが飛び込んできた。旭は咄嗟に腕を交差し防御。鋭いもので押されたような感触がした。
「はあ、はあ。ウォッチャーも来てたのか……!」
ニット帽を被った男性が、青白い顔で旭を睨んでいた。脇腹を押さえている左腕は赤く汚れとおり、右手には小型のナイフ。どうやら旭はあのナイフで刺されたらしい。ウォッチャーの上着は防弾防刃の特注品だ。あのような小さなナイフでは傷をつけられない。
旭はまず投降するように呼びかける。
「あなた、リベルタスのメンバーですね。投降してください。その傷、すぐに治療が必要です。大人しく投降した方が身のためです」
「ガキがうるせえ!」
男は旭に向かって、ナイフを振り回す。だが、ウォッチャーの上着によって全て防がれた。
多少手荒になるけど、仕方がないな。
旭は男にテーザー銃を向け、引き金を引く。狙いは、負傷している脇腹から出来るだけ離れた箇所。男の右肩に電極が刺さり、強力な電撃を受けた男は苦悶の声をあげ、その場に倒れた。
「申し訳ありませんが、拘束します」
男の手の親指を結束バンドで縛った後、旭は男の服を捲る。脇腹に小さな穴が空いており、血が溢れ出している。旭はウォッチャーの鞄から止血用シートを取り出し、銃痕に貼り付けた。
「ちょっとした応急処置しかできませんけど」
「……ガキ。なんで、俺を助ける?」
「死んでもらっては困るからです。後であなた方の情報、企みを吐いてもらいます」
「……けっ、あまちゃんが」
男はそう吐き捨てた後、気を失った。
「アイ」
「待機中の救急隊員が来るように、すでに要請しています」
「助かる」
処置を終えた旭は通路を進み、一番奥の物置と書かれた部屋を見つけた。
ドアノブに手をかけ、ゆっくりと部屋の扉を開ける。




