表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウォッチャー  作者: 河野守
第3章 自由な悪意

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/40

第8話

「そろそろ本格的に計画を進めるよ」

 遠藤はテーブルの向こう側にそう話しかけた。向き合って座っているのは、篠津川達也。

 今の達也は坊主頭で、頬がすっかり痩せこけてしまっている。東京特別刑務所にいた頃よりは大分改善したが、顔色は以前悪いままだ。

 達也がここまでやつれてしまうのも無理はない。刑務所という施設はとても異質な場所だ。中でも達也が八年もいた東京特別刑務所はとりわけ厳しい刑務所。どれだけ苦しい思いをしたのか、あそこで働いていた遠藤にはよくわかる。

 達也は暗い声で、遠藤に問いかける。

「……本当にこんなやり方でいいのかな?」

「もちろん。今回の計画が成功して真実が公表されれば、大勢の人が不幸にならずに済む。それだけじゃない。君の身の潔癖が証明される。そうすれば、君の家族もこれ以上苦しむことはなくなる。君は俺の計画に納得してくれたから、一緒に来てくれたんだろう? 君と俺で正義を成そう」

「……そうだったね。……わかった、わかったよ……」

 達也の言葉は遠藤にではなく、まるで自分に言い聞かせているようだった。自分の迷いの部分を押さえ込もうと。

 達也の様子を見て、遠藤は罪悪感を覚える。自分の言葉に嘘偽りはない。だが、達也の人の良さと正義感につけこんで、彼をここまで連れてきて自分の計画に協力させたことは、自分でも卑怯だと思う。

 達也とこれ以上顔を合わせていることが辛くなり、遠藤は席から腰を上げる。

「そろそろ自分の部屋に戻るよ」

「家族は!」

 ドアノブに手をかけ部屋を出ようとした遠藤に向かって、達也は問いかける。

「俺の家族は大丈夫なのか? 俺が脱走したことで、家族に何か迷惑がかかっていないか?」

「……今のところは問題ない。君の家族は俺が様子を見ている。何かあったらすぐに助ける。だから、心配するな」

 遠藤はドアノブを回し、扉を開ける。

「じゃあ、俺は自分の部屋に行くよ。……何度も言っているけど、勝手に外に出ないように」

「わかっているよ」

「うん。それじゃ、おやすみ」

 部屋を出た遠藤は口を強く一文字に引き締め、前をまっすぐ見る。

 俺は昔、君には助けてもらった。卑劣なあいつから守ってくれた。

 あの時、俺は君に憧れを抱いたんだ。君のような正義感の強い人間になろうと。

 そして、次は俺の番だ。

 俺にとって恩人の君が、あいつに嵌められた。

 あの時の恩を返す。

 今度は俺が正義を執行する。

 あいつに正義の鉄槌を下す。

 たとえ、どんな手を使ってでも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ