第2話
「……え、私、ですか……?」
「はい。あなたです。一緒に来てください」
幸子は本音を言うと、断りたかった。好き好んでテロリストについていく人間はいない。しかし、児童館の館長の女性から「彼らの言う通りにして!」と強く懇願された。
山本達の機嫌を損ねれば、子供達に危害を加えるかもしれない。館長はそう考えたのだ。
幸子は震える声で「……わかりました」と答え、重い足取りで山本達についていく。
児童館の外に出ると、マイクロバスが正面玄関前に止まっていた。山本達が用意した物で、子供達はすでに乗せられたようだ。
幸子は、車体の近くで倒れている女性に気が付く。彼女は幸子と同じく、今日から入ったアルバイトの女子大生。女子大生は苦悶の表情で太ももを抑えており、エプロンは血で真っ赤に染まっていた。
先ほどの銃声は、彼女を撃った時のもの。山本達に抵抗したため、撃たれたのだろう。
咄嗟に駆け寄ろうとした幸子の肩を、山本が掴む。
「心配は無用です。急所は外しています。我々も不要な犠牲は出したくありませんので」
さあ、乗ってくださいと山本に促され、同僚を心配しながらも幸子はマイクロバスに乗車。
幸子が空いている席に座ると、テロリストの一人、小太りの男がスマートフォンを渡すように指示。GPSを警戒してのことだろう。
小太りの男が幸子と子供達のスマートフォンを捨てて戻ってくると、山本はマイクロバスを発進させる。
これが、幸子と子供達が誘拐された経緯である。
幸子は今にも泣き出したいが、唇を噛み必死に堪える。もし、自分がここで泣き叫べば、子供達は不安になってしまう。年長者として、気丈に振る舞わなければ。
それに希望はある。
白昼堂々の集団誘拐。今頃児童館から通報を受けた警察が動いているはず。
日本の警察は優秀だ。きっとうまく交渉してくれて、自分達は無傷で解放されるだろう。
だが、幸子の考えは楽観的であったと、すぐに思い知らされる。




