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便り

チャイムが鳴り、「はーい」とドアを開ける。


これは定期購読してる雑誌の宅配だった。


「ありがとーございました~」


「来た来た~!待ってたんだよねこれ~!」


音楽全般における知識などが載ってる雑誌で、今回はプライベートスタジオの特集で、機材が大好きな僕にはとても待ってた企画だ。


今回は最近音楽界隈を席巻してるバンド【PENGUIN ROCKET START】の作曲者でベーシストの【堀江ほりえもか】のスタジオも載っている。


僕はDTMがメインで、パソコン内で全部完成してるから、楽器やエフェクターの類は何も部屋には無い。


なので、楽器がある部屋を見る機会は中々なくて、見てて楽しい。


「僕もそろそろ楽器なんかやらないとなぁ」


わかってはいるけど、今のジャンルの僕が求められてることだから今から急にジャンルを変えるのは怖い。


 堀江もかの部屋は結構綺麗で、ドラムとピアノ、シンセとギターとベース。


物理的な楽器は大体置いてあるから、本当に何でも屋って感じでとてもいい。


ページをめくるといろんなアーティストの部屋が、さも当たり前の様に載ってる。


「このMAXって人、僕と同じジャンルなのにこんなに機材あるんだ」


コンプレッサーやイコライザー、そのほかの物理的なラックのエフェクターが並んでる。


 しばらく読み進めるとアイドルの特集が載ってた。


南風原はえばる久音くおん】彼女は【ワンデイ!】というアイドルで、その特集が組まれてる。


いつもなら素通りだけど、この子はなにか他人事じゃない気がしてた。


丁寧に読んでると、「今度、昔住んでたところに帰るんです!」という話が上がってた。


「大きな公園」の話や「大きな滑り台がある」とか「一番大きな木があって、その下でした約束」などそんな話をしてた。


住所こそ言わなかったけど、他人事じゃない予感がさらにしてきた。


――「久音ちゃんはまた戻ってくるの?」


「久音ちゃんって、まさかね」


雑誌を閉じ、夜ご飯の準備に取り掛かる。


~   ~   ~


――「さようなら~」


学校から帰り、ポストを覗くと封筒が入ってた。


「ん?なんだろ。この封筒。差出人は『あの時の久音ちゃん』?」


部屋に戻り、封を切って中身に目を通す。




 紡ちゃん久しぶりだね。私戻ってきたよ。


この手紙がちゃんと届いたらきっと、紡ちゃんはまだそこにいるんだね。


私は今アイドルをしているよ。来年で高校1年生になるよ。


紡ちゃんは何歳になったのかな。あの時お互いの事は何も知らなかったよね。


来年から私は【音宝女子高等学校】に通うことになったよ。


この街にはまだ紡ちゃんがいるって信じてるから楽しみにしてるんだよ。


今紡ちゃんは何してるかな?


お返事待ってるね。




なんだろうこれ。


僕の名前知ってるのなんで?


怖いから、丸めて捨てようとした。


――「久音ちゃんはまた戻ってくる?」


涙があふれていた。


忘れてた、僕の大事な友達。


「……久音ちゃん。まだ覚えててくれたんだね」




 僕が小学校の頃、ずっとブランコに揺られながらお母さんを待っていた時の事


「ねぇねぇ!なんで一人なの!」


声を掛けられ、目をあげる。すると金髪が絡みつくように、それと情熱的な赤い目が僕を捉えて離さなかった。


「僕は、別に……」


話すことが苦手だった僕にはとても難しい質問だった。


「じゃあさ!久音と遊ぼうよ!」


「君は、久音ちゃんっていうの?」


「うん!久音は久音だよ!」


「でも僕はこれに揺られてるだけでいいんだ」


「そっか!じゃあ久音もゆらゆらしとくね!」


沈黙の数分、数えたわけじゃなかったけどたぶんそれくらい。


「なんで僕にかまうの」


「うん?うーん。多分好きになっちゃった!」


「す、好きって……」


「ねぇねぇ!名前教えて!」


「僕はつむぐだよ」


「紡ちゃんだね!」


「ちゃんじゃない!僕は男!」


「うーん。でも紡ちゃんがぴったりだから紡ちゃん!」


「も、もう。じゃあいいよそれで」


帰りを告げるチャイムが鳴る。


「ん!久音帰らないと!」


「そっか。じゃあね」


「またね!」



 そんな出会いから始まった。久音ちゃんとの日々。


この出会いがなければ僕は今の僕を受け入れることはできなかった。

ついに出てきましたね久音ちゃん。

本当はもっと引っ張る予定だったのですが、物語は速く回したいのでここで出させてもらいました。

引き続き、お楽しみに!

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