39. 人気トップ歌手シリウス・ライト
ジャジャ~ン!!
と現れた人物は世界でも人気トップ歌手のシリウス・ライトだった。
「むーーー様!」
と叫びながら武藤 仁に抱き付き彼女は感情を爆発させた。
「嬉しい!! こんな所でお会い出きるなんて運命感じちゃうーーー、むー様、私と一緒にゴハンしませんか? その後は二人でーーー」
彼女のマシンガントークに圧され、ヒィッと義理兄が小さな悲鳴を漏らした気がした。武藤 仁に迫るシリウス・ライトは途中で私と目が合い気づいた。
義理兄は助けてくれと目で訴えるが私は目に写る光景をドン引きしながら固まった。
「誰よアンタ」
目を細め私を怪しむシリウス・ライトだった。
「コッチの台詞だ、ってか何してるの?」
義理兄を見ると涙目になりながら頭をブンブン左右に振って、違う違うんだと小さく抵抗を続けていた。
「むー様は今から私と一緒にゴハンするんだから関係無い人は出ていって頂戴!」
フン! と鼻を鳴らし威圧的な態度を取った。
「むー様?」
義理兄を怪訝な目で見るとまだ抵抗をしていた。
「違う!! 彼女とは一度仕事の関係で知り合っただけだ!」
まるで不倫がバレた夫の様に彼女との経緯を説明し始め身の潔白を訴えながら私に助けを求めた。
「仕事上の関係以外彼女とは何も無い!」
そういう関係は一切無いと言い切ったがシリウス・ライトは違った。
「そんなコトはないわ! だって私は一目見た瞬間に運命を感じたの!」
嗚呼~成る程、彼女は所謂脳ミソお花畑ちゃんかと納得した。こういう手合いは何言っても伝わらない宇宙人な人種が多い。
どうやらアブノーマルな女に義理兄は引っ掛かった様だ。
「私とむー様には運命で繋がった赤い糸がーーー」
義理兄はブンブン頭を振った。
「前世から決まっていてーーー」
小刻みに震えながら助けてくれと目を潤ませながら訴える。今にも泣きそうだ。
「ちょっとシリちゃん、何しているの!!」
なんと騒ぎを聞いて救世主が現れ、シリウス・ライトを静止に入った。
「すみません、大丈夫ですか?!」
慌てて出て来た短髪で眼鏡を掛けた女性が割って入って来た。
「私は大丈夫ですけど、アッチがーーー」
義理兄に抱き付き身体をピッタリくっ付けるシリウス・ライト、二人の方を指でさすと女性は大きな声を上げ引き剥がしに掛かる。
「何しているのシリちゃん! 離れなさいっ!!」
「マネージャー!」
この女性はシリウス・ライトのマネージャーの様だ。彼女が注意しても、でもでもだってぇ~ばかりでラチが飽かないので私が"爆弾"を落としてやった。
「さっきご飯終わった後は~なんて言ってましたよ~」
わざと大きな声で言ってやるとマネージャーは顔色を変えた。
「シリちゃんダメじゃない、週刊誌や記者に聞かれたら炎上騒ぎになったら仕事無くなっちゃうわよ!!」
流石マネージャー、でも怒るトコはそこじゃないだろう。今のこの光景をよく見ろよ!
現れた女性マネージャーによりお説教されシュンとなり大人しくなった。お店の従業員の方にも平謝り、私達にも謝罪したいというコトで相席する形になった。
「大変失礼しました!」
「いえいえ」
「私、シリウス・ライトのマネージャーの佐々木千尋といいます」
マネージャーの佐々木さんは挨拶と共に名刺を頂いた。佐々木さんがシリウス・ライトのブレーキ役なんだなと察した。常識的な人で良かった。
「ウチのシリウスが迷惑を、申し訳ありません!」
佐々木さんは深々と頭を下げて謝罪したが当の本人は頬を膨らませ、ブスくれた顔をして反省のハの字も見当たらない。
「大丈夫です、被害は少なかったですから」
被害に遭ったのはのは俺だぞと言いたげだが、シリウス・ライトが恐いのか何も言えなかった。彼女が義理兄と私を交互に見ながら聞いて来た。
「二人は・・・・・・何なの?!」
何なのと言われても・・・・・・
またマネージャーが一喝した。
「失礼ですが、お二人の関係は?」
言ってもいいのかと義理兄の顔を見が、よっぽどシリウス・ライトが恐いのか黙ったままだった。
私はコホンッと咳払いを一つした。
「ここは初めましてですかね、私は武藤蘭香、義理妹です」
シリウス・ライトとマネージャーが同じタイミングで驚いた。
「い、妹さんでしたの・・・・・・てっきり私はーーー・・・・・・」
何だ、言葉の後を濁す様な物言いは?!
「義理の妹です」
大事な処なので補足した。
頬をパンパンに膨らませ真っ赤な顔をしながらシリウス・ライトがテーブルを叩いて立ち上がった。
義理兄は一瞬ビクッと条件反射で肩を動かした。
「嘘よ、嘘ーーーっ!!」
はぁ?
口を開いたっ思ったら勢いに任せガンガン喋りだした。
「むー様に兄妹がいるなんて聞いたコト無いし、どの雑誌のインタビューにも載ってなかったモン!」
雑誌って、シリウス・ライト"ガチモンのファン"の人だった。
「だから絶対違うモン!」
瞳を潤ませながら大声で話す。
「違うって何だと思ったのよ」
「アンタ、むー様の"彼女"でしょ!!」
・・・・・・は? いやいやいや、何でそうなる?
「いや違うし」
義理妹だって説明しただろ。
義理兄にも協力を求めたがそっぽ向かれた。
この状況、私一人に押し付ける気か!
義理兄の協力は期待出来ないと分かったので履いていたヒールのカカトで思い切り義理兄の足を踏みつけグリグリ攻撃を加えた。
「私は義理の妹です、諸事情が有り義理兄が私の保護者を勤めていて、武藤の姓を名乗っていますが血縁関係は有りません」
「嘘よ、ハッキリ言いなさいよ"彼女"だって!」
シリウス・ライトはボロボロと泣き出した。
だからハッキリ説明しただろ義理妹だって! 何で泣く?
「認めない、私は認めないんだからぁ!!」
ダメだなコレ、いくら説明しても完全に自分の世界観に入っちゃてる。聞くのはイヤモードってヤツ? 彼女への説明を諦めマネージャーの佐々木さんと話した。
「今日はプライベートで来ているので内密にお願いします」
後で雑誌とかに変なコト書かれたらマズイので佐々木さんには今日のコトは黙ってくれる様にお願いした。佐々木マネージャーは分かりましたと頭を下げて、シリウス・ライトを引っ張り部屋から退室していった。
「嵐が去ったな」
大きなタメ息をしながらグッタリしていた。
「義理兄さんがハッキリ言わないからでしょ」
「仕方無いだろ、・・・・・・迫って来た彼女が恐くて・・・・・・」
筋肉ムキムキの身体で女が恐いなんてギャグにしかならないよ義理兄さん。
「帰ろうか義理兄さん」
やつれた顔で小さく頷いた。
従業員さんに謝り注文をキャンセルした。着ていたドレスを返す為一度試着室に寄ると、待ってましたつ云わんばかりにシリウス・ライトが仁王立ちして立ち塞がっていた。
「うわっ! 何っ!?」
驚いていると近距離まで近づいて目の前に携帯を突き出して来た。
「教えて!」
はい?
「LINEとスマホの番号教えて!」
はぁぁぁ~?!!