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え? 怖いものは無いのかって~?
う~ん、強いて言えば家族がいなくなるのは怖いね~。
実は、幼少期から実家で飼っていた兎族の小型魔獣がいてね~。
可愛がってたんだけど病気で死んじゃってね~。
あれは今思い出しても悲しくなっちゃうね~。
~ソイ=ソース共和国軍施設部隊、ミツカ=サウスタウン工兵~
(集団の男達は竜族魔獣の甲殻や鱗で加工した防具を身に着けてるな~。頭に被ってる防具はフルフェイスじゃない樹脂製のヘルメットか。何か賊団っぽいな...賊団の勢力図を確認した事を考えると、ここはソイ=ソース国寄りだから“ゴクアクボンド”の連中かな...? )。
ハリガネは六人の集団が近づいてくるのを確認するとシアターにそっと耳打ちした。
「シアターさん、通信ミュートにしといてください。正面から賊団らしき集団が接近してきます」。
「...っ! わ、分かりましたっ! ミ、“ミュート”! 」。
シアターはハリガネから言われた通り、手の甲に装着された通信式魔法陣の効力を無効化した。
「え~、こちらハリガネ~。賊団らしき集団を発見。基地への接近を回避すべく今から対応に向かいますので通信を切断しま~す。よって、しばらくは交信できませんのでよろしくお願いしま~す。アウトアンド“ミュート”~」。
ハリガネは通信式魔法陣越しから隊員達にそう告げた後、交信手段を自ら断ち切った。
「オイッ!! オラァッ!! てめぇらぁッ!! 何処のモンだッ!? コラァッ!? 」。
男達はハリガネ達の存在に気づくと、激しい剣幕で装備しているライフルを構えながらそう声を張り上げた。
「いやぁ~! 良かったぁ~! 助かったぁ~! あっし達はポンズ王国からやって来た商人でございやして、主に雑貨を取り扱ってるでござんす~! この度はパルメザンチーズ山脈付近まで通りかかったので、“ゴクアクボンド”様の方へ御挨拶のため向かっている最中だったんでごわす~! 」。
ハリガネがヘンテコな口調でそう答えると、男達は怪訝な表情を浮かべて仲間同士で顔を見合わせていた。
「何だ、ただの商人か」。
「いやぁ~! 御近づきの印に御品物を御届けしたかったのですが、途中で道に迷ってしまいやして~! 」。
ハリガネがそう言うと、一人の男が神妙な表情を浮かべて仲間達に視線を向けた。
「しょうがねぇ、こいつ等をボスんとこまで連れていくか? 」。
その男がそう言うと、他の仲間達は怪訝な表情を浮かべた。
「おい、俺達は戻って来ない下の奴等を探すようにボスに言われてたじゃねぇかよ? そいつ等見つけてこねぇで戻って大丈夫なのかよ? 」。
「じゃあ、俺も戻るわ。こいつ等が運んでる荷車の中に物資もたくさん積んであるし、使えねぇパシリ達を持ち帰るよりは商人を持って帰った方がボスの機嫌が良くなるだろうし」。
「ボスの評価も上がるかもな」。
「はっ!? テメェ抜け駆けしてんじゃねぇよっ!! ...俺も戻るわ」。
「...満場一致か、仕方ねえホームに戻るか」。
「おい、ついてこい」。
男達はハリガネ達と荷車を囲むように先導し始めた。
(やっぱりゴクアクボンドのメンバーだったか。まぁ、奴等のアジトまで向かうのは予想外だったが揉めたり基地がバレるよりは大分マシだ。いや、ゴクアクボンドのアジトや周辺の様子を見る事ができるから、逆に都合が良いかもしれないな...)。
ハリガネはそう思いながら固唾を呑み込み、ゴクアクボンドのメンバー達と共にそのボスのいる彼等のアジトへ向かうのであった。