醜い不毛な争い
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頑張れ。
~祈祷師マカオ~
「ふぃ~! さっぱりした~! ただいま戻りました~! 」。
「周囲の異常はありませんでしたっ! 」。
ミツカとヤマナカは水浴を終え、基地内に戻ってきた。
「...ん? 隊長どうしたんです? 何か息を切らしてて滅茶苦茶疲れているみたいですけど? 」。
ミツカは怪訝な表情を浮かべ、肩で息をしながらその場に立っているハリガネにそう問いかけた。
「いや、何でもないっす...」。
疲労困憊のハリガネはそう答え、息を整えながらゆっくりと椅子に腰を下ろした。
(何とかホワイトとキュンにアネックスを剝がしてもらったが...。はぁ~、マジで疲れた...。何なんだよ~! ホントによぉ~! )。
ハリガネはボサボサになってしまった髪を整えながら一息つき、グラスに入った水を一気に飲み干してのどの渇きを潤した。
「アネックスちゃんっ! もうやめよっ! ねっ? 」。
「アネックス! ええ加減にせいっちゅうねんっ! 」。
「い~や~だぁ~! 助けてぇ~! ハリガネノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチたぁ~ん! 」。
一方、ホワイトとキュンに引き剥がされたアネックスは喚きながらジタバタして抵抗していた。
(しつけーな...。てか、ゼッテー俺を馬鹿にしてるよなアイツ。それに何だよ? ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチって...。ああ~、面倒クセーなぁ~。もう知らん)。
ハリガネはうんざりした様子で手前に置いてあったフォークを手に取り、喚き続けるアネックスを余所に食事を取り始めた。
「ホンマええ加減にせいっ! 問題起こしたら大変な事になるでっ! 」。
「い~や~だぁ~! ハリガネ五寸釘デスマッチたんがワンムーンちゃんに取られちゃうよぉ~! 」。
「...っっ!? 」。
ハリガネは眉をひそめてアネックスの方に振り向いた。
「はぁっ!? 何でよっ!? 私は関係無いじゃんっ!! 」。
ワンムーンは不快感を露わにした様子でアネックスにそう反論した。
「だって、ワンムーンちゃん強い人好きじゃんっ! デイ様やライダーの前ではビュンビュン耳と尻尾振ってんじゃ~ん! 」。
「はぁっ!? 振ってないわよっ!! 」。
アネックスの言葉にワンムーンは一層嫌悪感を露わにし、勢い良く椅子から立ち上がった。
「振ってたもんっ!! あの二人と話す時だけ構ってちゃんオーラ出してたもんっ!! 態度が全然違ってたもんっ!! 」。
「態度が違うって...あの二人はリーダー格だから私なりに敬意を払って...」。
「あれは敬意を払ってるとは言わないんですぅ~! ブラコン全開の甘え上手な妹の様に寄り添って媚びて思わせぶりな立ち振る舞いをして、二人をたぶらかそうとしてたって言うんですぅ~! 二人は我が強いし、同じく我が強いワンムーンちゃんはああいうタイプ大好きだもんね~! 」。
「たぶらかしてないもんっ!! 」。
「たぶらかしてましたぁ~! 」。
「自分だって見境なく複数の仲間達と楽しんでたみたいじゃないっ!! 」。
「何ですってっ!? 」。
「何よっ!! 」。
「いい加減にせんかッ!! これ以上、基地内で騒ぎを起こして風紀を乱すなッ!! 」。
見かねたゴリラ隊員がワンムーンとアネックスの間に入って二人を一喝した。
「フンッ!! 」。
すっかりヘソを曲げてしまったワンムーンはドカッと椅子に再び座り直し、食べ物を口の中一杯に頬張ってやけ食いを始めた。
「わぁ~ん! カミソリボード=デスマッチた~ん! ワンムーンちゃんが私をいじめるぅ~! 」。
アネックスは両手で自身の顔を覆い、その場にへたり込んでしまった。
(あ~、頭が痛くなってきた。てか、カミソリボードって何だよ? そもそも何だよ? そのデスマッチ縛りはよぉ~。もう名前の原型をとどめてねぇじゃねぇか)。
ハリガネは心底うんざりした様子で嘘泣きを続けるアネックスを無視し、我関せずといった様子で食事を続けた。




