上に立つ者
物資がたくさん集まって、基地でやるべき事も増えてきたな~!
あと、欲を言えば...鉱石が欲しいな~!
~討伐部隊“勇者”パルス=イン八世隊員~
「あの~、皆さん~。食事の準備ができました~」。
壁に設置されている魔法陣からシアターが姿を現した。
「了解で~す! あ~、お腹減ったぁ~! 」。
「今日は早朝からずっと作業していましたからねっ! 」。
「...」。
ハリガネは複雑な表情を浮かべつつ、言葉を交わしているミツカとヤマナカの後に続いて基地と繋がっている魔法陣を通っていった。
基地へ戻ると料理の良い香りが辺りに漂っていた。
「よ~し! ヤマナカ君! 池で身体洗ってこようか~! 」。
「はいっ! お供しますっ! 」。
ミツカとヤマナカは作業で泥だらけになった身体を洗うべく、外の池に通じている魔法陣の方へ向かっていった。
「おお~! これはまた豪勢だなぁ~! 」。
ハリガネは嬉々とした様子で卓上に並べられている白身魚の刺身や魔獣の肉を焼いたステーキ、そして野菜がたっぷり入ったスープと皿の上に積まれた山盛りの果物等を眺めながら椅子に座った。
「ささっ! 救世主ハリガネ=ポップ勇士っ! どうぞっ! 一気にグイッとっ! 」。
ハリガネの側にいたローは手に持っているワインボトルを金属製のグラスに注ぎ始めた。
「だから、救世主ってのは...。おい、何で基地に酒があるんだよ? 」。
ハリガネはそう問いかけながら怪訝な表情を浮かべてワインボトルを指差すと、ローは困惑した様子でそのワインボトルを見つめた。
「あれ~? ハリガネ=ポップ勇士が持ち帰られた酒瓶のはずなんですが...? 」。
ローがそう答えると、ハリガネは神妙な面持ちで両腕を組み考え込んだ。
(あ~、確かに荷車の中に酒瓶が入ってたな~。ここに戻る途中、処分するのすっかり忘れてたわ...)。
そう思っていたハリガネを余所に、アネックスはハリガネの太腿に座り込んだ。
「はぁ~い! ハリガネた~ん! 乾杯しよ~う! 」。
アネックスはそう言って卓上に置いてあったグラスを掴んだ。
「...俺は飲まん。つーか、俺の足の上に座るんじゃねぇよ! 早く退け! お前の席はあっちだろうが! 」。
ハリガネはアネックスにそう言って他のノンスタンスメンバーが座っているテーブル席を指差した。
「えぇ~?? 私、ハリたんたんとご飯食べたい~! 」。
「えぇい! うるさい! 早く退かんか! 」。
「い~や~だぁ~! 」。
「ははは~! アネックスちゃん、ずっと隊長さんをマークしてるね~! 」。
ノンスタンスのメンバーの一人であるマーシュは、振り解こうとするハリガネと必死にしがみつくアネックスの格闘を吞気な様子でケラケラと笑いながら他のメンバー達と遠巻きに眺めていた。
「は、ははは...。ホンマ、積極的な子やな~」。
ホワイトも苦笑しながらハリガネとアネックスのやり取りを見ていた。
「...ふんっ! あんなちんちくりん、どうせすぐ死んじゃうでしょ。今までだってそうだったじゃない」。
ワンムーンはしかめっ面でそう言い放った。
「アネックスを抱いた人間達は全員殺されてるしな...。アイツ、ノンスタンスにいた時に裏で死神って呼ばれてたの知ってるのかな? 」。
オシイチはそう言いながらスプーンでスープを掬い、自身の口の中に運んだ。
「知らねぇだろし、知ってても何にも思わねぇだろ。アイツもローと一緒で力のある人間にはあからさまに媚びを売り始めるからな」。
アゲハラは半ば呆れた様子でアネックスを一瞥していた。
「みんな、陰口はやめようよ。アネックスちゃんは私達や子供達が狙われないようにずっと守ってくれてたんだから...ね? 」。
「...」。
キュンがそう苦言を呈すと、メンバー達は表情を曇らせたまま黙々と食事を続けた。
「オイッ! コラッ! 飯が食い辛いっつーのッ! いい加減にしやがれッ! 頭撃ち抜かれたいのかッ!? 」。
「い~や~だぁ~! 」。
ハリガネが拳銃の銃口を頬に押し付けるも、アネックスは引き剝がされないよう必死にしがみついていた。
「...ふんっ! 」。
ワンムーンはそんなハリガネとアネックスに冷たい視線を向けつつ、不快感を露わにしながらパンを口いっぱいに頬張った。
(しかし、ハリガネはん...なんちゅう恐ろしい人や...。数々の困難を乗り越えるどころか、成果を上げて自分の部隊を着実に強化していくなんて...。ホンマ、デイとは大違いやな...。さすがは偉大なる父、ハリボテ=ポップ様の血を受け継いでいる御方や...。上に立つ者っちゅうんは、ああいう人の事を言うんやな...)。
一方、ホワイトは神妙な面持ちでハリガネを見つめていた。




