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破離刃離☆勇者ハリガネⅣ~この世から捨てられた奴等が行き着く地、パルメザンチーズ山脈~  作者: 田宮 謙二


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ミリタリーノーカ


掘削にシャベルもツルハシもドリルも不要っ!


武道家たるものっ!


己の拳と足...すなわち、自身が磨き上げた格闘術で全て事足りるのでありますっ!




~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~




「ちょうど空いてた洞穴の拡張をしててね~! 」


ハリガネはミツカ達と共に魔法陣を通り、稲や農作物を耕すために確保していた別の洞穴へ移動していた。


その洞穴とは賊団エミールのメンバーである、魔法使いウェーブの攻撃魔法によって作られた空間であった。


「あっ! 本当だ! 洞穴が広くなってる! 」。


ハリガネはそう言いながら辺りを見回していた。


天井に設置された白い光を放つ魔法陣によって洞穴の周囲は明るく照らされており、土で耕された畑がハリガネ達の目の前に広がっていた。


「あれ? これって稲を植えるための田んぼですか? 何か野菜を植えるための畑みたいに見えるんですが...」。


ハリガネはそう言いながら畑らしきその場所を凝視していた。


「うん! パルスさん達が稲だけじゃなくて他の農作物も育てたいらしくてね~! 」。


「他の農作物? 」。


ハリガネがミツカにそう聞き返した時、魔法陣からパルスとノンスタンスのメンバーであるオシイチが両腕に物資を抱えて姿を現した。


「あれ? パルスさん、どうしたんですか? 今はシアターさんと調理中のはずじゃ...」。


「いやぁ~! 隊長がゴクアクボンドから持って帰ってきた物資の中に素晴らしいモノを見つけたんっすよ~」。


「...素晴らしいモノ? 」。


ハリガネが眉をひそめて再びそう聞き返した時、パルスは満面の笑みを浮かべながら抱えている物資から白い布袋を取り出した。


「この袋の中に小麦の種があったんっすよ~! 」。


パルスはそう言いながら袋から出した種を自身の掌に載せ、ハリガネに見えるよう目の前に差し出した。


「あ、それ種だったんですか。何かの穀物なのかなとは思ってましたけど...」。


「これを植えれば小麦が育つわけっすよ~! それで、さっき基地の方でオシイチ君とその事について話をしてて、早速種をまくための土を耕そうって決めたところなんですよね~! 」。


「そ、それはまた急ですね...」。


そう言って苦笑するハリガネを余所に、パルスとオシイチは隅に置いてあった育苗箱の方へ足を運んだ。


「おぉっ! 凄いっ! この間まで種もみだったのに、すっかり立派な苗として育ってるっ! 」。


オシイチは嬉々とした様子で育苗箱に入っている緑色の苗を眺めていた。


「ん...? この箱を囲んでいるドーム状に光った設備的な物は防壁ですか? 」。


ハリガネは隅で綺麗に並べられた育苗箱を見つめながらそう問いかけた。


育苗箱は青白く光る半透明で半円形の物体に囲まれており、その物体には白く光る円形の魔法陣が描かれていた。


「はい! 防壁とは言っても、それで囲った苗の湿気や温度調整、あと照明を施すための設備空間として召喚させましたがね~! 」。


「はえ~! 防壁を育苗空間として利用したんですか~! 」。


ハリガネは驚いた様子でパルスにそう言った。


「この洞穴は湿気が高くなくて米を栽培するにはあまり向いてないみたいなんですよ~! それで、オシイチ君と色々話し合って、魔法でカバーできるところはカバーしようって事に決めたんっすよ~! 」。


「なるほど、そういう事か...」。


ハリガネはそう相槌を打ちつつ、神妙な面持ちでたくましく成長している苗を眺めていた。


「それでオシイチ君っ! どうだい? もう苗は田んぼに植えちゃってもいい感じかな? 」。


「そうですね...もう少しこのまま育てておいた方が良いと思います。しかし、魔法は育成環境を整備するだけではなく、育成そのものにもこんなに影響するなんて凄いな~。通常では有り得ないスピードで成長していますよ~」。


オシイチは感心した様子で何度も頷きながら苗を眺め続けていた。


「へへへ~! 試行錯誤したけど肥料も改良した甲斐があったってもんさ~! 」。


パルスは嬉しそうに両腕に抱えていた物資を地面に置いた。


「パルスさん、それは...? 」。


ハリガネはパルスが地面に置いた袋や赤色の液体が入った小瓶を指差した。


「植物を育てるための肥料ですよ~! 魔獣の骨を砕いた骨粉や、特性を持った野草を乾燥させて粉末にした物で栄養薬を調合したんですよ~! これも色々と悪戦苦闘してたんですけど、ようやくこれで植物を効率良く育てる事ができるようになりましたね~! 」。


「パルスさんのおっしゃっていた事がまさか...とは思ってましたが、このペースだと本当に一か月ちょいで収穫できちゃうかもしれないですね」。


「へっ!? 一か月でっ!? 」。


オシイチの言葉を聞いたハリガネは自身の耳を疑った。


「そうっす! 王国でもそのくらいで米の収穫できますよね? 」。


「...えっ? そうでしたっけ? お米ってだいたい一年かけて作るものだと思ってたんですけど...」。


ハリガネが困惑した様子でそう答えると、パルスは怪訝な表情を浮かべて小首をかしげた。


「あれ? 隊長知りませんでした? ポンズ王国の米栽培って、年間で十二回以上のサイクルで行われるんですよ? 」。


「えぇ~!? 十二回以上って事は、一か月で一回以上は種から育てたお米を収穫する事ができるんですかぁ~!? 」。


「そうっすよ? 王国の魔術向上に伴って農業や工業技術も向上しましたからね~! 今となっては、ハイスピードハイクオリティな農作物を王国内で栽培する事が可能になりましたからね~! オイラは農学の知識は無いっすけど、農業に精通してるオシイチ君の助言があったから何とか米が栽培できそうです! この勢いで、隊長が手に入れてきた小麦の種や、他にも食用の果物から手に入れた種を使って開拓中の畑に植えて農作物も栽培していこうって考えてるんですよね~! 」。


(まさか、こんな洞穴で農業する事になるなんて思わなかった...。てか、ポンズ王国の農作物収穫ってそんな高頻度で行われてたんだ...)。


ハリガネは顔を引きつらせつつ、ダイナミックに田畑を耕し続けるミツカとヤマナカを眺めていた。





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