国民的修道女の失踪
...。
習慣というものは辛いものだな。
環境上、仕方が無いとはいえ禁煙を強いられるのがこんなに辛いとは...。
~討伐部隊“勇者”ゴリラ隊員~
パルスとシアター、そしてノンスタンスのメンバー数人が夕食を作っている最中、ハリガネや隊員達は依然として意見交換を続けていた。
「しかし、お前が賊団から狙われている事を考えると、これからは迂闊に外へ出るのが難しくなってくるな。しばらくは基地で周囲を静観してた方が良さそうだな。それに、チャールズやフユカワのおかげで魔法陣のスクリーンからソイ=ソース国をメインとしたニュースもここで手に入るようになったしな」。
ゴリラ隊員はそう言いながら監視スクリーンの隣に設置されたスクリーンに視線を向けた。
「まぁ、今回は緊急事態でしたから、しばらくは偵察よりも基地内で“アルマンダイト”討伐に向けての作戦や自作できるトラップや兵器の充実化を...ん? 」。
その時、ハリガネ達は怪訝な表情を浮かべながら、未だに背後から抱きついているアネックスの両腕を振り解いてそのスクリーンに近づいた。
「どうした? 」。
ゴリラ隊員も怪訝な表情を浮かべてスクリーンを凝視するハリガネにそう問いかけた。
「失踪したポンズ王国の国民的修道女、ポンダ=ライスフィールド未だ発見されず。歌手や女優として活躍...逃亡したノンスタンスが混乱の最中に拉致した可能性も」。
ハリガネはスクリーンをタッチしながらそのニュース記事の詳細を読んだ。
「あ~! それね~! 王国内がずっとパニックになってるみたいなんですよね~! ノンスタンスが王国へ侵攻した後に修道女のポンダ=ライスフィールドさんが行方不明になったんですよ~! ノンスタンスが騒ぎを起こした後だったんで、ポンダさんがノンスタンスに拉致されて今後の交渉手段に利用するつもりなんじゃないかという憶測も飛び交ってましてね~! まぁ、今のところ王国の方では何も手掛かりが掴められていないみたいですよ。彼女の所属している修道院はその対応に追われてて混乱状態みたいです」。
チャールズはハリガネにそのニュースに関しての詳細を淡々と説明した。
「...」。
ハリガネは神妙な面持ちで黙ったままスクリーンを眺めていた。
そのスクリーンの中にはコンサートライブらしき催しの檀上に立ち、茶髪ロングヘアーのポンダがマイクを片手に熱唱している姿が映し出されていた。
「おい、何だ? 何か気になる事でもあるのか? 」。
「...いや、何でもないです」。
ハリガネはスクリーンを一瞥しながらゴリラ隊員にそう答え、椅子に座り直した。
「~~っ! ハーたんはあんな女がタイプなの~?? ハリガネ=ポップコーンたんの浮気者~! 」。
アネックスはしかめっ面で頬を膨らませ、再びハリガネの首に背後から抱きついてきた。
「さりげなく付き合ってますアピールしてんじゃねぇよ、テメー。いい加減にしねぇとサブマシンガンで蜂の巣にした後に火炎瓶で簡易火葬すんぞ、コラ」。
「火葬の時も一緒だよ~! コーンポタージュたん! 」。
「...お前、ボキャブラリー尽きたろ? 」。
ハリガネはアネックスにいちいち言い返すのが馬鹿らしくなっている様子で、疲れた表情を浮かべながら黙り込んだ。
「おっと! ヤマナカ君~! 僕達もご飯前に作業再開しようか~! 」。
「そうですねっ! 再開しましょうっ! 」。
ミツカとヤマナカはそう言って椅子から立ち上がった。
「え? また外へ出るんですか? 」。
ハリガネが眉をひそめてそう問いかけると、ミツカは首を横に振った。
「ううん、施設の拡張をしててね~! 」。
「施設の拡張...? 」。
ハリガネは首を傾げてそう聞き返した。




