主人から労いの言葉
やぁ! みんな!
心なしか前書きも騒がしくなってきたね~!
内容が薄いのにね~!
~某道具屋の従業員~
すっかり夜となったチェダチーズ山付近にある討伐部隊“勇者”の基地内で、隊員達はテーブルを囲んでハリガネが収集した情報に関して意見を交わしていた。
「しかし、山脈に構えた大規模賊団ゴクアクボンドはやはり猛者の集まりだったか...。まさか、“アルマンダイト”を複数も討伐していたとは...」。
ゴリラ隊員は神妙な面持ちで両腕を組みながらそう言って考え込んだ。
「我々が独自で収集した情報はポンズ王国を含めた諸国軍の調査部隊が分析したものですからね。山脈の賊団と敵対関係にある諸国でも各賊団に関する事は分析できていなかったみたいですね。まぁ、山脈に入るという事は賊団に対する宣戦布告を意味しますから、軍の部隊も迂闊に侵入するわけにもいきませんからね~。奴等のアジト内の応接間に剥製の“アルマンダイト”が吊るされていた事や、ボスの証言を考えると今回潜入したゴクアクボンドは山脈の中でも主要賊団として実績がある事は間違いないと思います」。
ハリガネがそう答えるとゴリラ隊員は小さく頷き、卓上に広げられた地図を険しい表情で見つめた。
「十年くらい前にあったソルト国の“アルマンダイト”討伐にもゴクアクボンドが関わっていたとはね~! しかも、あの名将オーダー大佐が数人だけでゴクアクボンドのアジトに乗り込んでいたなんて寝耳に水だね~! 全然知らなかったよ~! 」。
ミツカは吞気な様子で笑みを浮かべながらそう言った。
「私もオーダー大佐の事はもちろん存じておりましたがっ! 勿論、この事は水面下での接触だったのでしょうねっ! 兵士として誇りよりも国の防衛を優先するとは戦士の鑑ですなっ! 賊団と直談判なんて私にはとてもできませんっ! 」。
ヤマナカは感心した様子で何度も頷きながらオーダー大佐を手放しで賞賛した。
「うむ、ゴクアクボンドが予想以上に赤髪のデイ相手に苦戦している事も明白になったな。しかし、隊長の話を聞く限りは地下に拠点を置いている奴等の経済力や組織力を考慮すると、こちら側から刺激させるような事はしない方が最良のようだな」。
ゴリラ隊員は真剣な眼差しで地図を見つめながらそう言った。
「潜伏して貴重な情報を収集したのも大きいっすけど、大量の物資を持ち帰ってきたのはかなり大きかったですよ~! 食料だけじゃなくて空壺や大鍋も入ってましたしね~! 薬草や果物も大分揃ってきたし、より質の高い薬品が作れそうっすよ~! いやぁ~! さすが隊長~! 」。
「いやいやぁ~! アジトへ向かう時はちょっと不安でしたけどね~! 」。
ハリガネは苦笑交じりでパルスにそう答えた。
「...ま、シアターもよくやったわ」。
「え...? 」。
ポツリと呟いたパルスの一言に、シアターは面食らって振り向いた。
「な、何でもねぇよっ! ほらっ! すっかり遅くなっちゃったし、今から調理するからお前も手伝えっ! 」。
パルスはそう言うとシアターから背を向け、さっさとキッチンの方へ向かっていった。
「...」。
シアターが呆然としている時、パルスはしかめっ面でシアターの方に視線を向けた。
「おいっ! 何してんだっ! 早くしろいっ! 」。
「は、はいっ! 」。
パルスに催促されたシアターは慌てた様子で足早にキッチンの方へ向かっていった。
(旦那様が僕を褒めてくれるなんて久しぶりだなぁ~! )。
慌ててパルスの方に向かうシアターの背中は心なしか嬉しそうであった。




