一言も二言も多い
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しばらく本編の出番が無いのなら仕方が無い。
ここにいるとしよう。
~祈祷師マカオ~
辺りがすっかり暗くなった基地周辺。
隊員達と椅子に腰かけているハリガネは、賊団ゴクアクボンドとのやり取りやその時の出来事を細かく報告していた。
「マジっすかぁ~!? ゴクアクボンドのアジトに入っただけじゃなくて、ボスとも会ってきたんすかぁ~!? スゲー!! さすが我等の隊長~!! 」。
パルスはテンションが高い様子でハリガネの成果を手放しで賞賛した。
「隊長の偵察能力は王国軍に仕えられていた時から存じておりましたがっ! ここまで情報を引き出すとはっ! 敬服致しましたっ! 」。
ヤマナカも感心した様子で何度も頷いていた。
「...お前、それ作り話じゃないだろうな? 」。
その一方、ゴリラ隊員は険しい表情を浮かべながら眉をひそめ、半信半疑な様子でハリガネにそう問いかけた。
「ちょっ! 僕とシアターさんがそんなしょうもない嘘をついてどうするんですかっ? 僕等がそんな嘘をついても何の意味も無いでしょう? 」。
「まぁ、フユカワさんが魔法で操っていた監視ブロックで、隊長達が賊団のゴクアクボンドと接触していたのは基地内のスクリーンからオイラ達も確認できましたよ」。
パルスはそう言いながら壁に設置されたスクリーンを指差した。
「魔力の関係で追跡まではできませんでしたがね~」。
ハリガネ達の近くに立っていたフユカワはパルスにそう相槌を打った。
「それにしても、アジトへ潜入した事はもちろんだけど荷車に積み込まれていた大量の物資といい、彼等からよくそこまで引き出せたね~! 凄いなぁ~! 」。
ミツカは感心した様子で両腕を組み、まだ荷車に積んである物資を見つめていた。
「ははは~! いやぁ~! こういうのは結構得意なんでね~! 」。
「何を呑気な事言ってんだ。てか、本当にこの物資を活用するつもりなのか? 」。
「...? どういう事ですか? 」。
ハリガネは腑に落ちない様子のゴリラ隊員に、怪訝な表情を浮かべてそう問いかけた。
「いや、どういう事って...。お前、賊団から受け取った物なんだろ? 」。
「...? そうですよ? 」。
「いや、そうですよって...」。
「あ...」。
困惑した表情を浮かべているゴリラ隊員の様子を察したハリガネは、呆れたかのように溜息をつきながら肩をすくめた。
「ゴリラ隊員~? もしかして、王国軍に仕えていた自分が悪党の賊団達から物資を受け取るわけにはいかないとか、そんな滅茶苦茶固い事とか考えているんですか~? 」。
「か、固い事とはなんだッ! しかし、物資に毒や細工がされていないとはいえだな...。やはり、ポンズ王国に仕えていた兵士と敵対関係にある反社会的勢力組織から受け取った物資は抵抗があるというか...。本当に大丈夫なんだろうな? あの物資...」。
ゴリラ隊員はそう言いながら半信半疑な様子で物資を眺めていた。
「大丈夫ですよ~! さっきだって、物資のチェックをちゃんと済ませたじゃないですか~! それとも、賊団のゴクアクボンドから物資を受け取るという事は、王国に対しての反逆行為になるから王国下に仕えていた兵士としての信念や忠誠心に反するとか考えてるんですか~? もういいじゃないっすかぁ~! どっちみち僕達は反逆者として王国から追放された身なんですし、もう王国の兵士でもなければ国民でもないんですから~! そんなイデオロギーはもう活動の支障にしかならないですよ~! ほら、さっきだって話をしたばっかじゃないですか~! 諸国の軍で唯一“アルマンダイト”討伐したソルト国の名将オーダー大佐だって、自国を護るために賊団のゴクアクボンドに討伐の心得を...」。
ドゴォォォオオオオオオオッッ!!
「うぐぁぁぁぁああああああああああああああっっ!? 」。
ゴリラ隊員は突如ハリガネの頭上に鉄拳を見舞った。
「やかましいッ!! 分かっとるわッ!! だいたいお前は一言二言余計なんだッ!! 」。
(痛ってぇ~!! この脳筋野郎~!! 今日は商人に扮してたから頭に防具つけてねぇんだぞ~!? マジで覚えてろよぉ~!? )。
ハリガネは苦悶な表情を浮かべながら自身の頭を抱えた。
「ハリハ~リ、大丈夫ぅ~?? 」。
後方からハリガネに抱きついているアネックスは、そう言いながらハリガネの頭を撫で始めた。
「お前、人の名前で遊ぶのもいい加減にしやがれ。てか、いつまでも俺に抱きついてんじゃねぇ。早く離れろ」。
「い~や~だぁ~! 」。
ハリガネは不満げな様子で密着するアネックスを強引に引き剝がそうとするも、そのアネックスは頑なにそれを拒み続けるのであった。




