ようやく戻ってきたチェダチーズ山
え? 何でゴクアクボンドに入ったかって?
う~ん、俺は定職に就いてなかったし、やりたい事は特に無いんだけど何かは成し遂げたいなって思ってたわけ。
そこで一発当てたろうみたいな感じで相棒のコロモとゴクアクボンドのメンバーになったわけよ。
最初は大変だったけど、結果的には良かったんじゃね?
~パルメザンチーズ山脈賊団ゴクアクボンドのメンバー、パネー~
そんなこんなで、ハリガネとシアターは魔獣と遭遇する事なくチェダチーズ山まで無事戻ってきた。
「本当にこんなとこでいいのか? 」。
「このままソイ=ソース国周辺まで送ってやってもいいんだぞ? 」。
「あ、いえ。ソイ=ソース国付近は今、厳戒態勢が敷かれておりまして~。ソイ=ソース国の周辺には多くの兵士が配置されているはずでやんす~。何か最近、国内へ不法侵入した人間がいたみたいで」。
「あっ! もしかしてアイツ等やらかしたかっ!? ...ったく、どうしようもねぇなぁ~! 」。
パネーはそう言ってばつが悪い表情を浮かべながら舌打ちをした。
「まぁ、そういう事だったらしょうがねぇわなぁ~。それじゃ、俺達はこのまま帰るわ! また機会があったら顔出しに来いよぉ~! 」。
「へいっ! わざわざ送っていただきありがとうございや~す! 」。
ハリガネとシアターは手を振りながら、パルメザンチーズ山脈へ戻っていくゴクアクボンドのメンバー達を見送った。
「...」。
ハリガネはメンバー達の姿が見えなくなったのを確認すると、振っていた手を下ろした。
「それじゃあ、シアターさん。僕等も基地へ戻りますか」。
「は、はいっ! 」。
ハリガネとシアターは基地へ戻るべく荷車を再び牽き始めた。
「...」。
少し歩き始めたところでハリガネは両目を閉じ、その場で耳を澄ました。
(まだ気配は微かに感じるが、その内消えるな。俺達の周りには人の気配が無い...な)。
そう確信したハリガネは自身の手の甲に口を近づけた。
「え~と、魔法陣を呼び戻すのは確か...あっ! そうだ! “スタート”! 」。
ハリガネが自身の手の甲に向かってそう言うと、その手の甲の上に青白く光る円形の魔法陣が浮き出てきた。
「え~、こちらハリガネ~。遅くなりましたが賊団への対処終了、賊団はゴクアクボンドでした。私ハリガネ、そしてシアター共に負傷する事もなく無事です。詳細は基地内で話しま~す、どうぞ~」。
ハリガネはそう告げると、その魔法陣から音声が聞こえてきた。
『こちら、ゴリラッ! 了解したッ! あと、基地周辺の作業は既に完了しているッ! 戻る途中も何者かに追跡されてないか警戒を怠らないようにッ! どうぞッ! 』。
「了解で~す、アウト~」。
ハリガネがゴリラ隊員にそう答えて交信を切り上げた。
「今回の偵察もなかなか内容が濃かったな...。さて、何処から話そうかなぁ~? 」。
そう独り言を呟いたハリガネは神妙な表情を浮かべて、オレンジ色に染まった夕焼け空を見上げていた。




