ドナドナ
フフフ...。
俺は何処にいるのかだって?
フフフ、それは言えないなぁ~!
えっ?
そんな事言ってないし、どうでもいい??
...。
~さすらいの遊び人、ジューン~
ハリガネとシアターは、ゴクアクボンドのメンバー達と共に鉢合わせした場所に向かっている途中であったのだが... 。
「あのう~」。
シアターと共に荷車に乗っているハリガネは、その荷車をせっせと牽引しているメンバー達に話しかけた。
「おう~! ロック! どうしたよ? 」。
メンバーの一人がハリガネにそう声をかけた。
「いや、何というか...。あっし達も運んでもらっちゃってよろしいんでやんしょうかと...」。
「全然構わねぇって! 二人のおかげで今日から俺達も地下に住めるんだからよぉ! このくらいはさせてくれよぉ! なっ? コロモ! 」。
そのメンバーが荷車を先頭で牽引しているコロモという男にそう声をかけた。
「当たりマエダダイゼンの頭だってんだ! これでクソみたいな地上での生活ともおさらばさ! 本当に二人共! ありがとな! 」。
コロモは笑顔で足取り軽く荷車を牽きながらハリガネ達に礼を言った。
「ちなみに俺の名前はパネーっていうんだ! よろしくなっ! 」。
パネーというヘルメットを被っていない黒いアフロヘアーのメンバーは、ハリガネにそう言って悪戯っぽく笑った。
「しかし、パルメザンチーズ山脈は意外と魔獣の気配が感じられないでやんすね~! ゴクアクボンドさんの御屋敷に伺う時も魔獣と遭遇しませんでしたし...」。
ハリガネはそう言いながら荷車から少し顔を出して周囲を見渡した。
ハリガネ達のいるパルメザンチーズ山脈内は植物がほとんどなく、モッツァレラチーズ渓谷と同様に険しい谷が続いていた。
そして、真横の側には青い水が流れており、ブルーチーズ湖に通じたブルーチーズ川がハリガネの視界に広がっていた。
「ああ~! それもその日によるなぁ~! 魔獣に出くわす時はよく出くわすし、見かけない時はとことん見ないなぁ~! 」。
パネーもきょろきょろと辺りを見回しながらハリガネにそう答えた。
「まぁ、ブルーチーズ湖で魔獣と遭遇する機会は少ねぇ方だとは思うけどな~。もし、奴等と遭遇しても俺達はさっさと逃げちゃうからなっ! 」。
「はははっ! そうだよなっ! しかも、俺の頭はアフロだからヘルメット入らねーし、頭に攻撃食らったら完全に終わりだからな~! 」。
「いや! お前あぶねーからヘルメット被れる髪型にいい加減変えろよ! もう坊主にしろよっ! 坊主にっ! 」。
「仕方ねぇだろ? 俺の頭は坊主にしてもすぐアフロヘアーに戻っちまうんだからよぉ~! 」。
「何だよ? それ? 」。
「ははは~! 」。
パネーとコロモが笑いながら気楽にそう交わしていた時、後方に白い煙を立ち上らせる大きな山が姿を現した。
「何はともあれ、ロック達がこれから山脈内を行動するのであれば魔獣達に気を付けた方が...とは言っても、お前等はハンターだし言わなくても分かる事か」。
「あ、はい。用心するでやんす」。
ハリガネはパネーにそう答えるとコロモが後方の山を指差した。
「特に、あの火山から下りてくる魔獣達には気を付けた方がいいな」。
ハリガネはコロモが指差した後方の火山に視線を向けた。
「あれは、クリームチーズ火山でゲスね~。山脈の中心部に位置する山で、“アルマンダイト”や凶暴な魔獣の巣窟...まさに魔の巣窟と言われている所でやんすね~」。
「おっ! 火山の事も知ってたかっ! そう、あの魔境に入ったら最後、入った奴はそこが墓場になるって事さっ! いくら命知らずな奴がこの山脈にいるっつっても、あそこの火山へ行くイコール死だからな~。そこで無駄死にするような輩はさすがにいねぇよな~。なんせ、あの火山から戻ってきた奴なんて今日に至るまで一人もいねぇんだからよぉ~! 」。
「そうでおじゃるね~」。
ハリガネはパネーにそう返しながら、遠くにあるクリームチーズ火山を眺めていた。
(クリームチーズ火山...“アルマンダイト”の巣窟。ここに向かう事は自殺行為に等しい。もし、あの火山に乗り込む奴がいるとすれば、そいつは...)。
ハリガネは神妙な表情を浮かべながら、そびえ立つクリームチーズ火山を視界から消えるまで眺めていた。




