偵察の証言
...。
色々大変やなぁ。
~祈祷師マカオ~
「ここにいなかった...? 仰られている意味が自分には分かりかねますがねぇ...」。
セブンは不敵な笑みを浮かべつつ、ケンキョウにそう答えた。
「あれから十年が経つのか...早いもんだな」。
ケンキョウは両腕を組みながら、当時の事を懐かしむように話を続けた。
「十年くらい前の事だ。奇しくも息子のハリガネ=ポップと同じく、父親であるハリガネ=ポップも反逆行為により王国から追放されてしまった。そして、ハリボテ=ポップは王国を追われたその足でこの山脈までやって来た。そして、山脈に構えた組織の人間や魔獣複数を相手に、魔法が使えない奴は長剣を主に物理攻撃で対抗し山脈各地をしばらく暴れ回っていた」。
「あの時は凄かったわなぁ~! ハリボテ=ポップの首を獲ろうとした山脈の組織の中には、アイツとやり合ったのが原因で壊滅しちゃったところもあったからな~! 今、思い出してもぞっとするよなぁ~! 」。
チョンケイはそう言って自分を抱きしめ、身体を身震いさせながらケンキョウにそう言葉を返した。
「その時の私は山脈から距離のあるオリーブオイル国にいましたが、山脈内でハリボテ=ポップが活発的に行動していた事は知人から聞いておりました。当時はゴクアクボンドさんの方でもハリボテ=ポップから被害を受けていたと聞いておりましたが」。
マカオがそう言うと、ケンキョウは小さく頷いた。
「まぁ、山脈にいる俺達でもあのハリボテ=ポップの事は多少なりに知っていたはいたが、ウチも気性の荒い連中ばっかの集まりだ。部外者が勝手に入って好き放題されて黙ってる奴等じゃねぇ。それに、組織のテリトリーに容易く入られたらボスである俺達のメンツも立たねぇからな。その際は他の組織と協力して現地に送ったが、相手にならなかったみたいだったな
。たった一人の元兵士が魔獣達を相手しながら、数的にも圧倒的に有利な俺達とも戦うなんて普通に考えれば正気の沙汰じゃねぇ。だが、奴は逃げるどころか魔獣や俺達に立ち向かっていったみたいだ」。
「ほう、それは現場にいたメンバーの証言ですかな? 」。
マカオがそう問うと、ケンキョウは再び小さく頷いた。
「まぁ、偵察からの証言ですがね」。
「そうですか、今になって考えるとハリボテ=ポップと交えた時の戦況を伝達したその偵察は、組織的にも大きな成果を上げた事になりますな」。
「ええ、その偵察は確かに有力を掴んで戻ってきましたよ」。
ケンキョウはそう言うと、神妙な表情を浮かべながらもう一つ言葉を付け加えた。
「ハリボテ=ポップと一緒にね」。




