親父の存在が付加価値
最近では、魔法陣が設備の機能として活用されてから扉は開けるのではなく通り抜けるという認識になりつつあるんだ。
そして、王国の建物内ある扉というのは普通には開かず、ここは出入り口だから通り抜けて下さいっていう標識的な扱いになっているんだ。
それに扉自体は壁に貼り付けているような仕様となっているから、開くような構造にもなっていないし最近ではドアノブも付いてないのが主流だな。
あくまでも扉は出入り口の目印に過ぎない存在になっているからね。
この通り抜けが可能な通路式魔法陣によって、強固な防犯対策にも大いに役立っているんだ。
ただ、第一作に出てきた王立図書館の扉はドアノブが付いていて普通に開ける仕様になっていたから、まだまだ扉を開いて中に入るという風習は未だにあるというのが現状だな。
ま、俺の実家もそうなんだけどさ。
~討伐部隊“勇者”ハリガネ=ポップ隊長~
「まぁ、俺も何だかんだで外部からコイツ等をセキュリティとして雇ってるわけだしな。とりあえず、そいつの事はお前に任すわ」。
ケンキョウは傍にいるメンバー達を一瞥しながらチョンケイにそう答えた。
「おうっ! ありがとよぉ~! まぁ、最初はよぉ~! セブンには俺の護衛をやってもらおうと思ったんだがよぉ~! コイツは護衛より外で動く方が性に合ってるっつうからよぉ~! 戦闘部隊として組織で活動してもらう事になったんだわぁ~! それに、戦闘部隊も人手が足りなくてちょうど困ってたところだしなぁ~! まぁ、そんな感じで話も決まったからっ! それで良いよなっ? 」。
「...問題無い」。
ケンキョウが静かな口調でそう答えると、チョンケイは満足げな様子で大きく頷いた。
「うっしっ! そうと決まればセブンっ! これからお前にはジャンジャン働いてもらうからなっ! 明日から頼むぞぉ~! はっはっは~! 」。
チョンケイは高笑いをしながらセブンの肩を叩いた。
「ほな、親分さん達。何卒、よろしゅう~」。
「...」。
セブンは変わらず不敵な笑みを浮かべながら挨拶をすると、周囲のメンバー達は気に入らない様子でセブンを睨み付けていた。
「うむっ! 期待してるぞっ! ノンスタンスのデイの首には懸賞金が懸かっているんだっ! ついでに同じく懸賞金が懸けられているハリガネ=ポップの首も獲ってきてくれてもいいんだぞっ!? 」。
「ハリガネ...ポップ」。
ハリガネの名をチョンケイの口から聞いたセブンはヘラヘラしていた表情を一変させ、神妙な面持ちでそう呟いた。
「おうっ! なんかそいつ等の首を欲しがってる変なオヤジがウスター=ソース国にいてよぉ~! 奴等の亡骸と引き換えにたんまり金やら高価品やらが手に入るらしいからよぉ~! まぁ、その二人に遭遇したら頼むわぁ~! 」。
「さいですか、承知しましたわ」。
セブンが静かな口調でそう答えると、チョンケイが不思議そうな様子で両腕を組みながら首をかしげた。
「しかし、妙だなぁ~! あのオヤジ、何で諸国に狙われている国際指名手配犯のデイよりも、反逆者の身分とはいえポンズ王国の傭兵の一人に過ぎないハリガネ=ポップの方を高値に設定したんだろうなぁ~? 長らく諸国に追われ続けてきたデイの首の方が価値が高いと思うんだがなぁ~? 」。
チョンケイがそう言いながら唸っていた時...。
「親父の存在がデカいんとちゃいますか? 」。
「...! 」。
室内にいる人間達は再び不敵な笑みを浮かべながらそう答えたセブンに注目した。
「ハリボテ=ポップ...か」。
今まで黙って話を聞いていたマカオが突如その名前を口にすると、室内に重苦しい雰囲気が漂った。




