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破離刃離☆勇者ハリガネⅣ~この世から捨てられた奴等が行き着く地、パルメザンチーズ山脈~  作者: 田宮 謙二


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覚悟と犠牲


地位? 名誉? 権力?


そないなもんは後に付いてくるもんや。


ワイが今欲しいのは直接的な強さや。


どんな人間や魔獣でも抗えない圧倒的な強ささえ手に入れれば、誰もワイに逆らえんようになるで~。




~パルメザンチーズ山脈賊団ゴクアクボンドのメンバー、セブン~



昼食を済ませ、ハリガネ達と別れたケンキョウとマカオの二人は食卓から応接間に戻っていた。


「そうか、お前達もここに来る道中であの兄ちゃん達に出会っていたのか」。


ソファーに腰かけているケンキョウは、傍に立っている付き人のメンバー達と言葉を交わしていた。


「はッ!! この場所は知らなかったようですが、彼等にパルメザンチーズ山脈への行き方を聞きましたッ!! 」。


「悪かったな...案内役を手配したかったんだが、ノンスタンスの奴等が縄張りで暴れてて手が回らなかったんだ」。


「いえッ!! 問題ありませんッ!! ボスッ!! ケンキョウッ!! 」。


メンバーの一人がそう答えると、向かい側に座っているマカオが思い出したかのように口を開いた。


「そういえば...私もここに向かう道中で彼等に会いましたよ。私も道に迷ってしまったんで彼等にパルメザンチーズ山脈の行き方を教えてもらいましてな」。


「各々にあの兄ちゃん達とそんな縁があったのか...」。


ケンキョウはそう呟きながら神妙な表情を浮かべた。


「そうそう、話は変わるんですが...。今日、亡くなったメンバー達の埋葬が無事終わりました。しかし、今回もまた犠牲者が多かったみたいですな」。


マカオがそう話すとケンキョウは険しい表情を浮かべながら両腕を組んだ。


「魔獣の犠牲になったのも多少いるが、ほとんどがノンスタンスの連中にやられた。奴等だけは何としても潰さねぇといけねぇ」。


ケンキョウはそう言いながらワイシャツの胸ポケットから煙草を取り出す仕草をしたが、メンバーに預けた事を思い出すと小さく溜息をついた。


そんなケンキョウにも意に介さない様子でマカオは話を続けた。


「近年は諸国の不況や魔法使いによる台頭の影響で、国内の傭兵やハンター関連の仕事が著しく減少しているようですな。まぁ、国家同士の戦争も終わって傭兵の需要が無くなったのもあるかもしれませんが...。それで、怖いもの知らずの傭兵やハンター達が最凶最悪の竜族魔獣“アルマンダイト”を狩り、最強の称号と一攫千金を手に入れようとパルメザンチーズ山脈に乗り込んできた」。


「そして、皆死んでいった...」。


ケンキョウはマカオにそう相槌を打つと更に話を続けた。


「奴等は怖いもの知らずなんじゃなくて、ただただ世間知らずなだけだ。もちろん、世間ってのはこの山脈での世界の事をいうんだがな。特に一人で動く奴等は“アルマンダイト”の餌食になっていった。あんな化け物を一人でやろうなんて最初こそ誰しもが一度は考える事だが、実際に相見えたら自分の考えがいかに浅はかであったか痛感するだろうよ」。


「まさに、経験者だからこそ分かる事ですな」。


マカオがそう返すと、ケンキョウは神妙な面持ちで天井に吊るされた“アルマンダイト”を眺めた。


「このパルメザンチーズ山脈に過ごして“アルマンダイト”を狩ってきたが、その分の犠牲も大きかった。仲間は奴等に食われ、ゴクアクボンドも壊滅寸前に陥った事が何度もあった。奴等に恐れをなして俺達から離れていくメンバーもいた。奴等を狩るには相当の覚悟と犠牲が必要だ。そもそも、魔獣の巣窟であるこの山脈は人間が生きていけるような場所じゃない。一人で乗り込むなんて自殺行為に等しい事だ。ただ...」。


ケンキョウがそう言いかけた時、室内の奥に置かれた書斎机の上にある魔法陣が白い光を放ち始めた。


『こちら中央監視室ッ!! 御疲れ様ですッ!! ボスッ!! ケンキョウッ!! 』。


白く輝く魔法陣から音声が聞こえてくると、ケンキョウはすぐさまソファーから立ち上って足早に書斎机の方へ向かった。


「何だ? 」。


『はッ!! ボスッ!! チョンケイが対面を御希望されておりますが、いかが致しましょう? 』。


「ここへ通せ」。


『はッ!! ボスッ!! ケンキョウッ!! 』。


ケンキョウは魔法陣の光が消えたのを確認すると、マカオ達の方へ戻り再びソファーに腰を下ろした。


「...」。


ソファーに座り直した神妙な面持ちのケンキョウはその場では一言も発さず、天井に吊るされた“アルマンダイト”を再び眺めていた。




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