魔法使いと剣士の二刀流、魔術士
フフフ、まだ俺は本編には出ていないけど前書きに来ちゃった。
俺はさすらいの遊び人ジューン!
ま、前作読んでくれた人達なら俺の事分かるよね~?
ちなみに、俺の血液型はO型だよ~ん!
~さすらいの遊び人、ジューン~
「門を開けてくれ」。
「...は、はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
チョンケイの言葉に、見張り番達は戸惑った様子を見せながらもそう返事した。
「...アイツの後ろに討伐した魔獣の存在が確認できた。嘘は言ってねぇかもしれねぇが、念のため地下にいる戦闘部隊の奴等に声をかけておいてくれ」。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
チョンケイから耳打ちを受けたメンバーはそう返事すると、この場から足早に立ち去っていた。
キィィィィイイイイイイイイイイイ...ッッ!!
バァァァァアアアアアアアアアアン...ッッ!!
門扉が開かれると、肩叩き棒の様にライフルで自身の肩を叩きながら不敵な笑みを浮かべて立っているその男がハリガネ達の前に現れた。
男は竜族魔獣の黒い甲殻や鱗で加工された鎧を装着しており、頭部は何も装着しておらずハリガネ達に素顔を晒していた。
「おもんないのぅ~」。
ニタニタと不敵な笑みを浮かべるその男は、ボサボサに伸びきった長い髪を乱暴に掻きながらそう呟いた。
「竜族の“オンファサイト”をたった一人で殺したってのか? さすがに冗談だろ? そんな大型の竜族魔獣なんて相当力のある魔法使いじゃない限り一人で討伐できるはずがないだろ~? 」。
チョンケイは怪訝な表情を浮かべ、十数人が運んできた漆黒の翼竜魔獣“オンファサイト”を指差した。
「ほんなら、ワイは相当の力のある魔法使いって事になるでしょうなぁ~」。
その男は笑みを浮かべたまま自身の掌の上に炎を燃え盛らせた。
「おっ!? お前は魔法使いなのかっ!? 」。
チョンケイが驚いた様子でそう問いかけると、その男はクスクスと笑いながら後方の“オンファサイト”に視線を向けた。
「まぁ~、世では魔法使いの方に分けられるでしょうな~。せやけど、ワイは魔術士を自称してまんね~ん! 」。
「魔術士...? 」。
チョンケイが眉をひそめてそう聞き返した。
「魔法使いはどないに強力な魔法を操っても貧弱な奴等ばっかりや。結局、魔力が無くなればただの木偶の坊や。ワイはそんな奴等とは異なり、操る魔法と培ってきた剣術を組み合わせて独自の道を開拓した。それが魔術と剣士を混合させた唯一無二の能力者...すなわち魔術士やっ! 」。
その男は携えている剣の柄頭を指差しながら誇らしげにそう語った。
「ふ~ん、要するに魔法使いと剣士の二刀流って事か~。それで、本当にお前一人で“オンファサイト”を討伐したってのか? どうも、信じ難い話なんだが...」。
「あ、あの...ボス、チョンケイ...」。
その男に同行していたメンバーの一人がチョンケイに話しかけてきた。
「...ん? 」。
「そ、その...俺は加担せずに近場でこの男の戦闘を眺めていたんですけど...。確かに一人でこの魔獣を倒しました」。
「...ん? 加担せず...? 何で戦闘に参加しなかったの? 」。
「あ、いや。俺達がいると邪魔になるだけだから殺した魔獣だけ運んでくれればいい...と」。
メンバーの一人がチョンケイに怖ず怖ずとそう答えると、その男は再びクスクスと笑い始めた。
「こんなんワイ一人で狩れるから十分や。無駄に死人が出るとそいつも運んでいかなあかんくなるさかい、ただただ足手まといにしかならんわ。こいつ等がいて役に立つっちゅうんはワイが狩った魔獣を運ぶ事だけや」。
その男は従えていた後方のメンバーを親指で差し、小馬鹿にしているかのように鼻を晴らしながら意気揚々とそう答えた。
「...」。
一方、魔獣を持ち上げているメンバー達はぐうの音も出ない様子で表情を曇らせ黙っていた。
「ほう~、随分と自信があるみたいだな~」。
チョンケイは感心した様子で両腕を組みながらその男の顔を見つめた。
(腰に携えてる剣は対人用の太刀か...。まぁ、魔法と剣術を合わせて使うって言ってたし、凶暴で毒霧を巻きちらす“オンファサイト”を一人で倒すくらいだから相当手練れたハンターなんだろうな)。
その男を一見すると常時眠そうで無気力な顔つきだが、その時の表情は危険なパルメザンチーズ山脈でのサバイバルな世界を楽しんでいるような様子にハリガネは見えていた。
「まぁ、自信っちゅうか...。少なくともゴクアクボンドの中じゃあ、ワイが一番強いっていう事は確信が持てますけどね~」。
「...! 」。
その男がそう答えるとチョンケイは自身の片眉を一瞬吊り上げた。
「き、貴様ッッ!! 」。
見張り番達がその男に食ってかかろうとすると、チョンケイは手でそれを制した。
「...とりあえず、お前等は奥の方へその魔獣を運んで処理してくれ」。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
チョンケイに促されたメンバー達はその男を残し、その場から離れていった。
「ところでお前、名前は何ていうんだ? 昨日加入したばっかって言ってたけど、何でウチに入ったんだよ? 」。
チョンケイがそう問いかけると、その男はまたクスクスと笑いながら話を切り出した。
「ワイはセブンっちゅうもんです。もともと流れの傭兵とかハンターやって生活してるんですわ。せやけど、最近はなんっちゅうかスリルや刺激が無くておもんないですわ。そこで、人づてでパルメザンチーズ山脈の事を聞いたんですわ。山脈には凶獣“アルマンダイト”が生息してるっちゅうやないですか。せやったら、“アルマンダイト”狩り獲りながら近場に拠点を構えたゴクアクボンドの御世話になろうって次第なんですわ~」。
「こ、この身の程知らずがッッ!! ここは宿屋じゃねんだぞぉッッ!! 」。
「せやのに、昨日は屋根も無いこの地べたで一夜を過ごす事になるとは思わなかったわ~。入るとこ間違ったかな~? 」。
「き、貴様ッッ!! 」。
「もういい、下がれ」。
見張り番達がセブンという男に再び食ってかかった時、それを見かねたチョンケイは再び手で制した。
(随分と肝が据わった奴だな。しかも“アルマンダイト”を自分で狩り獲るなんて豪語してやがる)。
ハリガネが神妙な表情を浮かべていた時、不意にセブンと目が合った。
「...ん? 何や? 自分? 馬鹿デカい長剣背負ってるところを見ると自分もハンターなんか? 」。
セブンはそう言いながらハリガネが背負っている長剣をまじまじと見つめていた。
「へ、へいっ! あっし達は魔獣を狩りながら商売をしている商人でやんす~! (馬鹿デカいは余計だ、この野郎)」。
「ふ~ん、その背丈で長剣振り回すんかい? 逆に剣に振り回されるんとちゃうかぁ~? アッハッハッハ~! 」。
「あ...あはは~。よ、よく言われるでやんす~(あ? 何だとテメー。お前の身体で振れるか振れないか試してやろうか? コラ)」。
ハリガネは内心怒りながらもセブンにそう受け答えをした。
「何はともあれ、このまま門扉を開けっぱなしにしておくわけにはいかないな~! おいっ! ロックとスープを途中まで送ってやれ~! 」。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! ...二人共、行くぞ」。
メンバー達はハリガネとシアターにそう声をかけて先頭を歩き出した。
「あっ! へいっ! それでは旦那様っ! あっし達はこれで失礼致しやすっ! 今日は本当にありがとうございやしたぁ~! 」。
ハリガネとシアターは深々とチョンケイに一礼して荷車を牽き始めた。
「はっはっは~! おうっ! また遊びに来いやぁ~! 」。
チョンケイは手を振りながらハリガネとシアターを見送った。
「...」。
「おいっ! お前、セブンと言ったな? 」。
セブンは横切っていったハリガネ達を神妙な面持ちで見つめていると、チョンケイがセブンに声をかけた。
「お前に話がある、俺と一緒についてきてくれるか? 」。
キィィィィイイイイイイイイイイイ...ッッ!!
バァァァァアアアアアアアアアアン...ッッ!!
チョンケイがセブンにそう言った時、出入口は門扉により再び閉ざされてハリガネ達はゴクアクボンドのアジトから姿を消した。
「...分かりましたわ」。
セブンは閉ざされた門扉を一瞥した後、砦の方へ歩いていくチョンケイの後を追った。




