門扉に立つ異端児
俺の血液型...?
O型だ。
そうさ、チョンケイと同じO型なんだ。
~パルメザンチーズ山脈賊団ゴクアクボンドのボス、ケンキョウ~
「さっきの砦の裏には魔獣の飼育小屋があってなぁ~! 地上で魔獣の飼育もしてるんだ~! 」。
チョンケイを先頭に、ハリガネ達はアジトの出入口である門扉の方へ向かっていた。
「本当は大型魔獣で送迎してあげてぇんだけど、自分達は荷車を牽いてるから難しくてなぁ~! 」。
「いやいやぁ~! 素晴らしい御品物をたくさんいただいた上に、送っていただくなんて恐れ多いでゲスよ~! 」。
「はっはっは~! それでロックとスープはそのままポンズ王国に帰んのかい? 」。
チョンケイは歩きながらロックに扮したハリガネと、スープに扮したシアターにそう問いかけた。
「いえ、ソイ=ソース国にいる知人にこれから会う予定がございやして、しばらくはソイ=ソース国へ滞在するつもりでやんす~! 」。
「お~! そうかぁ~! あっ! そうそうっ! ところでロックとスープを連れてきたのはお前達か? 」。
チョンケイはハリガネ達に相槌を打つと、傍にいるメンバーにそう話しかけた。
「はッ!! 左様でございますッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
「お前等はあれか? 地上に住んでるメンバーか? 」。
「はッ!! 左様でございますッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
メンバーが続けて返答するとチョンケイは納得した様子で小さく頷いた。
「おうっ! あとで地下の奴等に話しつけておくから、お前達は今日から地下に移って良いぞぉ~! それと、細かい話はロックとスープを送った後にそいつ等から聞いといてくれやぁ~! 」。
チョンケイがそう告げるとハリガネ達をアジトへ連れてきた六人のメンバー達は、目を丸くしながら慌ててその場に跪いた。
「はッ!! ありがたき幸せッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
「はっはっは~! 良いって事よぉ~! 今日はお前等がこの二人を連れて来てくれたおかげで色々と事が運んだからなぁ~! 」。
チョンケイが高笑いしながらメンバー達にそう言葉を返した時...。
パァンッ!! パァンッ!!
門扉の辺りから銃声が聞こえてきた。
「ん~? もう地上の奴が帰ってきたのかぁ~? まだ日は沈んでねぇぞぉ~?? 」。
チョンケイはそう言いながら正面にある門扉を興味深しげに見つめた。
「おぉ~い!! 魔獣狩ってきたで~!! はよ開けんか~い!! 」。
門扉の向こう側から男の声が聞こえてきた。
キィィィィイイイイイイイイイイイ...ッッ!!
複数の見張り番達が門扉を少し開けてアジト外にいる人間の応対をし始めた。
「貴様ッ!! 仲間であるなら証明を見せろッ!! 」。
「なんやぁ~?? ここ出ていく前、自分等に顔を見せたさかいワイの顔なんぞもう覚えたやろぉ~? 顔パスや! 顔パス! 」。
「何だとッ!? 貴様ッ!! ここに入る時は身体に彫ってある刺繍を俺達に見せなければならないッ!! ゴクアクボンドの人間であればここの規則に従えッ!! 」。
「せやかて、ワイは昨日ここに加入したばっかなんやぞ~? それにゴクアクボンドのメンバーの証である入れ墨をまだ彫ってもらってないんや~! 順番待ちって言われてなぁ~! それで、もうしょうがないからそのまま外へ出て魔獣を狩るか物資を調達してこいっちゅうたのはそっちの方やないか~! せやから、言われた通りに魔獣を狩って戻ってきたんやないか~! かなわんなぁ~! ホンマにもう~! 」。
「順番待ち...? そうか、最近新規メンバーが増えたから墨師が足りてねぇのか」。
チョンケイは神妙な面持ちでそう呟きながら門扉の方へ歩み寄った。
「...っ!! はッ!! 外の見回り御疲れ様ですッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
近づいてくるチョンケイの存在に気づいた見張り番達はその場に跪いて忠誠心を示した。
「おうっ! もう狩りから戻ってきたのかぁ~! 」。
チョンケイは扉の隙間からその男に声をかけた。
「おっ! わざわざ親分さんが出迎えですか~い! 」。
「き、貴様...ッッ!! 言葉と慎し...」。
男の言葉に血相を変えた見張り番達が食ってかかろうとすると、チョンケイは手でそれを制して話を続けた。
「お前一人で狩りに行ってたのか? 」。
「まぁ、一人で魔獣を狩ったのは事実ですわ。せやけど、ごっつうデカい魔獣狩ってきたさかい自分一人で運ぶ事はようでけへん。ほんで、狩った後に同じ地上の奴等を呼んでここまで運んできてもろたんですわ~! 」。
「一人で...か」。
チョンケイは眉間にしわを寄せながら、そう答えたその男の顔を扉の隙間越しから見つめていた。




