肉料理、鹿族“スフェーン”のポワレ、赤ワインソースとキノコ“クレナイ”を添えて
え? 血液型??
B型だけど~?
え? そうだと思った~??
そうかなぁ~??
~討伐部隊“勇者”パルス=イン八世隊員~
「ハリガネ=ポップ...? ハリガネ=ポップって、そのノンスタンスの騒動があった時を利用してポンズ王国へ反逆した傭兵の一人ですよね? 王国を追放されて俺等のいるパルメザンチーズ山脈の方へ向かってるんだとか...。 確か、ポンズ国王から“アルマンダイト”の討伐を命を受けてて、それを成し遂げたら身分が復活できるらしいなぁ~! 何か、変な命令だとは思うんだけどなぁ~! 」。
チョンケイはそう言いながら大きく口を開けてパンを頬張った。
「相手がハリガネ=ポップだろうが誰であろうが警戒は怠るんじゃねぇぞ。これ以上、俺達のテリトリー内で部外者に好き勝手な事はさせねぇ...。ノンスタンスの野郎共...特にデイっていうガキの首は何が何でも狩り獲らなきゃならねぇ」。
ケンキョウは目つきを鋭くさせながらグラスに入っている白ワインを一気に飲み干した。
「おいっ! そういや、ハリガネ=ポップらしきチビで傭兵っぽい奴は最近見てねぇか? 」。
チョンケイは入口付近に佇んでいるメンバー達にそう声をかけた。
「いえッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 未だ確認できておりませんッ!! 」。
チョンケイに問われたメンバーの一人は直立不動でそう答えた。
「そうか...」。
チョンケイは口を尖らせながらつまらなそうな様子で白ワインを一口飲んだ。
その時、料理を運んできた女給仕達が再び食堂に現れた。
「こちらはメインディッシュ、鹿族“スフェーン”のポワレ、赤ワインソースとキノコ“クレナイ”を添えてでございま~す」。
女給仕達は料理を差し出すと、ハリガネ達の傍に置いてある空グラスに赤ワインを注ぎ始めた。
「情報によると、そのハリガネ=ポップって傭兵はもともと王国の兵士だったみたいだな。諸国で収集した情報によると、今は王国に反乱を起こした集団の首謀者だった奴と行動しているらしいな」。
ケンキョウが料理を自身の口に運びながらそう返すと、チョンケイは神妙な面持ちで何度か頷いた。
「おう! 赤髪のデイはもちろんだが、ハリガネ=ポップって傭兵の首もついでに狩り獲っちまおうぜ~! 」。
(参ったなぁ...ゴクアクボンドに俺の存在どころか山脈に向かってる事までバレてんのかよぉ...。これは面倒臭い事になってきたぞ...。てか、逆に今日ここに来て良かったわ。じゃなきゃ、その事聞けなかったもんな~)。
チョンケイが威勢良く言い放った言葉に、ハリガネは平常心を装いながらも奥歯で料理を強めに嚙み締めていた。
「つーか、ハリガネって奴はその仲間一人だけなんだろ? もしかしたら山脈に行く途中でもう魔獣に喰われてんじゃねぇのか? 魔法も使えねぇんだろ? そのチビ兵士」。
ケンキョウは素っ気なくそう言いながら赤ワインを口に含んだ。
「いや、でもよぉ~! できれば生きてくれてた方が良いだろうよぉ~! 」。
「どういう事だよ? 」。
ケンキョウが続けてそう問いかけると、チョンケイは呆れた表情を浮かべつつ露骨に大きな溜息をついた。
「あのなぁ~! お前忘れたのかよぉ~? ノンスタンスのデイだけじゃなくて、王国を追われたハリガネ=ポップの首にも懸賞金が懸かってんじゃんかよぉ~! しかも、デイよりも高い十億ゴールドだぜっ!? 十億ゴールドっ!! 」。
チョンケイはそう言いながらケンキョウに両手を突き出した。
「...っ! 」。
シアターは動揺した様子でケンキョウとチョンケイを交互に見ていた。
(やっぱり、俺は賊団やハンターから狙われている身だったのか...。しかし、俺達を狙うように仕向けた奴は一体何者なんだ…? )。
ハリガネは神妙な面持ちではしゃいでいるチョンケイを見つめていた。
「...」。
一方、相変わらず無表情のマカオはそんな様子のハリガネを観察しているかのようにじっと見つめていた。




