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破離刃離☆勇者ハリガネⅣ~この世から捨てられた奴等が行き着く地、パルメザンチーズ山脈~  作者: 田宮 謙二


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魚料理、“ツァボライト”のグリエ、アンショワイヤードソースと共に


え? 血液型ですか?


私はAB型でありますっ!


...え? そう思った??



~討伐部隊“勇者”ヤマナカ=マッスル隊員~




ハリガネはシャンパンを一口喉に流し込み、険しい表情を浮かべながら姿勢正しくして口をゆっくり開いた。


「実はでやんすね~! ノンスタンスとは深い親交があったわけではないんでやんすが、最近ポンズ王国内で顔見知りになっていた間柄だったんでゲスすよ~! 」。


「顔見知り...? 」。


ケンキョウは怪訝な面持ちでハリガネにそう聞き返した。


「一ヶ月ちょい前に、王国の都市ユズポン市内の“PUBオニヤンマ=キャロルズ”っていう開店前のパブがあったでござるが、あっし達はそのお店に品物の卸売おろしうりをしていたんでおじゃるよ~! その頃にはあっし達もお店に出入りしていたでござんすが、その時にノンスタンスのリーダーのデイとも会う機会があったんでおじゃる。ポンズ王国出身のデイは店にも頻繫に出入りしてて、山脈の関係者様とも親交持っていたみたいでござんすね~。それと、同じその店に携わっていたゴクアクボンド様のメンバーの方もデイとは面識があったと思いまする~」。


ハリガネはノンスタンスメンバーが基地で話した事とカッテージチーズ高原で遭遇したゴクアクボンドのメンバーの話を組み合わせ、自分達も商人として“PUBオニヤンマ=キャロルズ”のオープンに携わっていた事やノンスタンスや賊団とも面識があったかのように上手く辻褄を合わせてケンキョウ達にそう説明をした。


「...」。


ハリガネの話を聞いたケンキョウは黙ったまま眉間にしわを寄せつつ、神妙な面持ちで煙草をくわえて火をつけた。


食卓に沈黙が流れていた時、魔法陣から姿を現した女給仕達が次の料理を運んできた。


「こちら魚料理、“ツァボライト”のグリエ、アンショワイヤードソースと共に...でございま~す。こちらソースと一緒に御愉しみくださいませ~」。


女給仕達はその魚料理をハリガネ達の手前に差し出すと、傍に置いてある空のグラスに白いワインを注ぎ始めた。


“ツァボライト”のグリエ、アンショワイヤードソースと共には、魚魔獣である“ツァボライト”の白い切り身を焼いた魚料理である。


皿の中心の載せられた切り身の周りには緑色のアンショワイヤードソースが弧を描く様に盛り付けられており、その魚の上や周囲には色鮮やかな薬草や野菜が彩り良く載せられていた。


「ありゃあ~! 自分達もあの店と関わりあったんだ~! 」。


チョンケイは意表を突かれた様子を見せながらフォークとナイフで魚料理を頬張った。


「へいっ! 最初は人当たりの良い社交的な人間だったと思ったんでやんすが...。まさか、あの後にあんな事になるとは...」。


ハリガネは曇った表情を浮かべてうつむき気味にそう答えると、その様子を見ていたケンキョウは煙草の煙を天井に向かって吐き出した。


「まぁ、ゴクアクボンドがその店にメンバーを派遣して協力していたのは確かだ。結局、ノンスタンスの奴等にハメられて報酬がパーになっちまったけどよぉ。全く...繋がりを築いておきながら不義理な上にどうしようもねぇ連中達だ」。


ケンキョウは腑に落ちない表情を浮かべながら呟くようにそう言うと、ハリガネは少し憤った様子で力強く頷いた。


「そうでやんすっ!! 本っっ当に許せない連中でゲスっ!! アイツ等が王国内で騒ぎを起こしてくれたおかげで取引していたその店も後々に潰れちゃったしっ!! あっし達の売上も全部無くなっちゃったでござる~!! 完全に骨折り損のくたびれ儲けになっちゃったでおじゃる~!! 赤髪のデイの野郎~!! 次会った時は絶対にぶち殺すでやんす~!! 」。


ハリガネはそう言うと歯軋りをして悔しげな表情を浮かべながら、隣にいたシアターの肩に自身の手を置いた。


「そ、そうですよ~! 奴等は本当に大悪党ですよっ! うんっ! 」。


シアターもハリガネに合わせて憤った“演技”をし、その場にいる皆の気を引こうとしていた。


「はっはっは~! その上、こちとらシマまで荒らされてるんだからたまんねぇよな~! はっはっは~! 」。


チョンケイはそう言うと吞気な様子で高笑いをし始めた。


「笑い事じゃねぇだろ、オメーよ」。


ケンキョウはばつが悪い顔で高笑いを続けるチョンケイを睨んだ。


「いやっ! つーかよぉ~! もう笑うしかねぇだろうよぉ~! はっはっは~! 」。


ケンキョウは高笑いをしながらそう返すチョンケイに辟易へきえきした様子で舌打ちをした。


「“ガレージの乱”...」。


今まで皆の話を黙って聞いていたマカオが両腕を組んだままそう呟いた。


「...! 」。


皆はその言葉を聞くと、神妙な面持ちでマカオに注目した。


「“ガレージの乱”...。ポンズ王国軍の歩兵部隊である隊長が王国の指示に背き傭兵を中心とした部隊を編成し、都市ユズポンへ向けて強襲を仕掛けた...。最近起こったポンズ王国の大事件ですな」。


(な、何でそんな事知ってるの~!? この人ぉ~!! )。


突然に呟いたマカオの言葉にハリガネは思わず顔を強張らせた。


「...」。


マカオは両腕を組んだまま何も言わずに、一片の曇りもないその澄んだ両眼でハリガネの事をじっと見つめていた。




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