浮き彫りとなった問題
やぁ! みんな!
僕の事覚えてるかな~?
せっかく僕の名前が前作の終盤で明らかにされたのに、また元に戻っちゃった~!
僕はバリバリ☆勇者ハリガネシリーズⅠとⅡで登場するよ~!
まぁ、シリーズⅢでも前置きにちょくちょく出てるけどね~!
~某道具屋の従業員~
部隊の基地である洞穴の入口は魔獣や賊人達に侵入されぬようヤマナカにより大岩で塞がれており、人は洞穴の入口から直接出入りする事は不可能である。
その基地から離れた岩陰の裏にあるパルスが設置した魔法陣から、ハリガネ,ミツカ,パルス,ゴリラ隊員が続々と姿を現した。
「ミツカさん、外へ出てどうするつもりなんですか...? 」。
ハリガネは基地の周囲を見渡しながらミツカにそう問いかけた。
「ほらぁ~! この辺って地面が破壊されてたり、木々も焦げ倒されていて荒れてるじゃなぁ~い? 」。
「まぁ、そうですけど...」。
ハリガネは隊員達と辺りを見渡しながらミツカにそう答えた。
一昨日、山脈賊団エミールの中でもトップクラスの実力を誇る魔女のウェーブに強襲を受けた事で、基地の周囲にそびえ立っていた木々も生い茂っていた植物達もことごとく破壊されてしまっていた。
パルメザンチーズ山脈内に拠点地を構えるエミールは山脈内で活動している賊団であり、その中でも有力な組織として多くの団員と魔法使いを束ねている。
「僕が初めてここに来た時にも思ってはいた事なんだけど...。いやぁ~! いくら各場所に監視用の魔法陣が配置されているとしても周りがこんなに荒れてると不可解だし、この洞穴が岩で人工的に塞がってるのがこっから見てもバレバレだよぉ~! これじゃあ、すぐに居場所がバレちゃうよぉ~! そのエミールっていう賊団から強襲を受けたのは聞いたけど、こんな状態でよく基地の場所がバレなかったね~! 」。
ミツカはそう言いながら顔をしかめて岩に塞がった基地を睨んでいた。
「まぁ...改めて見るとそうですね...。混乱状態だったので気がそこまで回ってなかったのかもしれなかったですね。幸い、チェダーチーズ山の周辺は諸国の軍が巡回している事もあって敵対関係にある賊団は寄り付かないんですが、この前はちょっと予期せぬ事態だったもので。もう、エミールの連中はこの辺にはいないと思うのですが」。
「なるほどね~、いずれにせよこの周辺...特にあの洞穴の入口はどうにかした方が良いかもね~。まず、敵に居場所を悟られないようにこの辺に植物を移植させて、洞穴の入口を塞いだ岩も植物や苔でカモフラージュした方が良いと思うよ~! よしっ! 僕がこの辺の環境を改良するよ~! 」。
ミツカは周囲をゆっくりと見渡しながらハリガネにそう答えた。
「さすが工兵出身の兵士! 施設の分野に関してはミツカさんに御任せしますよ~! いやぁ~! 頼りになるなぁ~! 」。
ハリガネは感心した様子で何度も頷きながらそう言った。
「う~ん、そうは言っても僕はこの世で主流となっている魔法が使えない側の人間だからね~。魔法使いや魔術師ってのかな...? そんな魔力を掌るような特殊な人間じゃないからね~! 物理的な部分でしかサポートできないから、魔法が使える人達は羨ましいなぁ~! 」。
(アンタは十分特殊だろうが。どデカい長剣を片手で軽々と振ったり、ほぼ一人で川や城を作ったり...)。
魔法使いを羨ましがっている呑気なミツカに対し、ハリガネは顔を引きつらせながら心の中でそうツッコミを入れていた。
「いやぁ~! ミツカさん、大丈夫っすよぉ~! オイラや基地内で待機しているシアターも魔法が使えますんで、できる事があればサポートしますよぉ~! それに、施設が専門だったミツカさんがいると色んな可能性が広がる気がしますぜ~! 」。
パルスはミツカにそう言いながらウキウキした様子で、大岩によって塞がれた基地の入口を皆と共に眺めていた。
「よぉ~し! そうと決まれば早速作業を始めよう! 」。
ミツカがそう言ってその場から動こうとした時...。
「待てッ!! 」。
ゴリラ隊員が厳かな口調でそう声を発し、作業に取り掛かろうとしたミツカを止めた。
「勝手に決めるなッ!! まだこの辺に賊団の連中が潜んでいるのかもしれんのだぞッ!? そんな境遇下で改良工事を始めるなんて正気の沙汰じゃないぞッ!? 一体何を考えているんだッ!? 」。
「いやいやぁ~! でも、あんな状態を放置するのも居場所を教えているようなもんだから、それも危険なんじゃないかと思うんだけどぉ~! 」。
「俺は決して作業をするなと言っているわけではないッ!! 今はその時ではないと言っているんだッ!! 時と場合を考えろと言っているんだッ!! 」。
「いや、でもこの間エミールに基地周辺が襲撃された後、外に出て魔法陣の配置作業をしてたじゃないですか? 即決即断とか、何事も善は急げとか...。手は早いうちに打っておいた方が良いってこの間言ってませんでした? 」。
ハリガネが二人の間に入ってゴリラ隊員にそう問いかけた。
「あれは緊急処置だッ!! それに魔法陣を設置するだけで速やかに処置ができると聞いていたし、実際迅速に対策ができたからなッ!! だが、工事とか物理的な作業は別だッ!! 作業で外にいる時、潜んでいる外敵に居場所がバレでもしたらそれこそ本末転倒じゃないかッ!! 」。
「う~ん、そんなに大掛かりな作業じゃないし~。やっぱり、多少のリスクを背負ってでも即急に対処すべきだと思うんだけど~」。
「いや、今は静観して...」。
「二人共っ! 分かりましたっ! 」。
ハリガネが再びゴリラ隊員とミツカの間に入って二人の話を遮った。
「確かに、ゴリラ隊員の言う通りエミールの件もあって状況を考えると、時期的にも基地周辺で工事作業をする事は賊団の連中と遭遇するリスクも生じるので避けるべきなのかもしれません。そして、戦力も考えて山脈に潜む賊団達に我々部隊の存在を知られるわけにはいきません。奴等も“アルマンダイト”討伐を目標にしている以上、接触するという事はその“アルマンダイト”討伐に大きな障壁となってしまいます。下手な事をすれば敵対関係はもちろん免れないでしょうし、ローの証言からも考えて最悪エミールだけでなく山脈に潜む全ての山脈賊団に宣誓布告をしたと捉えられて多方面からこの部隊が狙われてしまうという憂き目に遭ってしまいます。そうなると、ミツカさんの言っていた基地を外部から知られないよう環境を改良する事が急務となってきます。ただでさえ、隊員達も少ないこの状況下ですし」。
「それではどうすれば良いと言うのだ? 」。
ゴリラ隊員は両腕を組みながら険しい表情でハリガネにそう問いかけた。
「大丈夫、僕に考えがあります」。
「...? 」。
ハリガネは自信有りげに微笑を浮かべながら静かな口調で答えると、隊員達は怪訝な表情でお互い顔を見合わせていた。




