ケンキョウの攻略方法
う~ん、基地から外で作業してる映像をずっと眺めているのはさすがに飽きたな~。
~討伐部隊“勇者”パルス=イン八世隊員~
応接間の天井に吊るされていた“アルマンダイト”は、口を大きく開けて鋭利な白い牙を剝き出しにしていた。
そして、爪を地に向けて構えつつルビーの様な紅の眼球を大きく見開き、天高く舞うその“アルマンダイト”は地に立つハリガネ達を睨み付けている。
(“アルマンダイト”の剥製か...あのサイズは小柄だがサイズ的に幼獣じゃないな...。しかし、ゴクアクボンドにも“アルマンダイト”の討伐に成功していた実績があったのか...。これは衝撃的な事実を知ってしまったな...。いや、山脈にいる賊団だから一頭は狩ってても不思議じゃないか...)。
「おう、どうした? 兄ちゃん」。
ケンキョウは急に立ち止まったハリガネを見つめながら、怪訝な表情を浮かべてそう問いかけた。
「あ...。いやぁ~! 素晴らしい魔獣の剝製に思わず見とれてしまいやして~! 失礼致しやした~! 」。
ふと、我に返ったハリガネは辺りを見回しながらそう答え、ケンキョウの前にあるテーブルの上に木箱を置いた。
「...」。
ケンキョウはハリガネとシアターが運んできた木箱をしばらく見つめると、やがて手に持っていた煙草の火を灰皿で揉み消した。
「ほ~ん、兄ちゃん達は商人って聞いてたけど、箱にあるのは魔獣の部位ばかりだな~。毛皮も着てて長剣も背負ってるし、兄ちゃん達はハンターもやってんの? 」。
ケンキョウは目の前に差し出された木箱から艶やかに輝いている“インフィナイト”の白い牙を取り出し、それをまじまじと眺めながらハリガネに問いかけた。
「へいっ! あっし達は諸国周辺を巡りながら魔獣を狩りつつ、それを加工して取引しながら生活しているでやんす。他にも諸国で仕入れた品物を物々交換で取引しているでござる」。
「仕入れた品物? ここには狩り獲った魔獣の部位しかねぇぞ? 」。
「へいっ! 今日仕入れた物は食べ物と煙草しかなかったでやんす。そういう物は贈らせていただく事はできないとの事でして...」。
「煙草あるのか? ああ~、そろそろ煙草切れちまうんだよな~」。
ケンキョウがそう言うと、その様子を察したチョンケイは入口付近でひれ伏せていた一人のメンバーを指差した。
「おいっ! 商人の荷車の中から煙草を持って来いっ! 」。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
そのメンバーがチョンケイにそう返事をして立ち上がった時...。
「商人よ、煙草を忘れていったぞい。ケンキョウ殿には煙草を献上した方が好感度が上がりやすいぞ。攻略サイトにはそう書いてあった。あと、こまめにセーブはしておいた方が良いぞ」。
扉の中からマカオが数人のメンバー達を従えて一カートン分の煙草と、自身が“レジェンドスティック”と称しているソーセージを数本両腕に抱えながら姿を現した。
「先生~! 遅いじゃないっすか~! すっかり待ちくたびれちまったよぉ~! 」。
ケンキョウはマカオにそう言いながらソファーに大きく仰け反った。
「この商人達が持っていた“レジェンドスティック”に色んな特殊効果が入っててなぁ~。ちょっと吟味しているのに時間がかかってしまった。いやぁ~、失敬、失敬。それでは早速、診療を始めますかい」。
マカオはそう言いながらケンキョウの方へと歩き出した。
(な...何なんだコイツは...。マイペースにも程があんだろうが。この間も変な飴玉押し付けたし...。本当に何なんだこの祈祷師は...)。
ハリガネは顔を引きつらせ、歩み寄ってくるマカオを見つめながらそう思っていた。