ボスのフロアーは原則立入禁止
...(ミツカの“ダイナミック”な作業を見て冷や汗を搔きながら黙り込んでいる)。
~討伐部隊“勇者”ゴリラ隊員~
ハリガネ達は人気の無いアジトの通路をしばらく歩いていると、頑丈そうな黒い門扉の前に辿り着いた。
「さて、と...」。
チョンケイはそう呟きながらその扉に自身の掌を向けた。
すると、光り輝く白い大きな魔法陣が扉から浮き出てきた。
『こちら中央監視室ッ!! 』。
魔法陣から声が聞こえてくると、チョンケイは魔法陣に自身の顔を近づけた。
「チョンケイだ」。
『はッ!! 御通りくださいッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 』。
「...よし、中に入ろう」。
そう言ったチョンケイは扉に描かれた魔法陣を通ってその場から消えていき、ハリガネ達もその後を追った。
その魔法陣を通った先には壁や地面に魔法陣が設置された空間が広がっており、中には基地と同様にアジト内の映像を流し続けているスクリーンも多数配置されていた。
「ここはアジト全体を監視する事ができる監視施設だ。何かトラブルが起きた時もすぐに対応できるように人員も二十四時間常時配置している」。
チョンケイがハリガネにそう話していた時、数十人のメンバー達が慌ただしそうに向かって来た。
施設にいるメンバー達は戦闘時に備えて全員武装していた。
「はッ!! 見回り御疲れ様ですッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
メンバー達はその場に片膝をつけてチョンケイに挨拶をした。
「おう! 面を上げて楽にせ~い! 」。
「はッ!! 」。
チョンケイにそう言われたメンバー達は立ち上がり、“休め”の体勢に整えた。
「ケンキョウは今、手が空いているか? 」。
「はッ!! 今日は祈祷師のマカオ先生がいらっしゃるとの事ですから、現在は御自身のフロアーにおられます」。
「そうか、先生はちょっと取り込んでるから遅くなるとケンキョウに言っといてくれ。それと、話があるからそっちに今から行っていいかとも伝えてくれないか? 」。
「はッ!! 仰せのままにッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
一人のメンバーがそう答えると、さっさとその場から離れていった。
「本来、地下の階は魔法陣を通じて自由に移動ができるんだが、相棒や俺はメンバー達とは異なるフロアーに住んでてな~! 俺や相棒のフロアーに移動するには、ここにしか配置されていない専用の魔法陣を利用しなければいけないんだ~! ボスのフロアーはメンバーでも原則立入禁止なんだが、俺のフロアーや部屋は女の子達が自由に入れるようになってるのさ~! もうフリーパスよっ! はっはっは~! 」。
チョンケイがそう言って高笑いをしていると、その場から離れていたメンバーが足早に戻ってきた。
「ボスッ!! チョンケイッ!! ボスッ!! ケンキョウから言付けを御預かり致しましたッ!! 御自身のフロアーにある応接間にいるとの事ですッ!! 」。
「分かった、そこへ通してくれ」。
「はッ!! 仰せのままにッ!! どうぞこちらへッ!! 」。
「よし、行こう」。
チョンケイがハリガネを手招きしながら再び歩き出した。
(いよいよ、もう一人のボスとの対面か...)。
ハリガネは固唾を呑み、案内役であるメンバーの後についていくのであった。