伝説の剣、“レジェンドスティック”という名のソーセージ
遂に私の正体がバレてしまったな。
そうだ、私の名前はバニラアイスクリームだ。
妻はソフトクリームだ。
~祈祷師マカオ~
ハリガネ達はマカオに色々と振り回されたものの、再び砦の正面まで戻ってきた。
「荷車はここに置いておけッ! ボスに渡す物のみを持参しろッ! 食べ物や口に含める物は入れるなッ! 」。
「へい、かしこまりやしたぁ~」。
ハリガネとシアターはメンバーの指示に従って持参してきた木箱の中に慌ただしく物資を入れた後、荷車からメンバー達の下へ木箱を持ち運んで戻ってきた。
「箱を貸せッ! 物資をチェックするッ! 」。
メンバー達はハリガネ達から物資の入った木箱を取り上げ、念入りに物資を調べ始めた。
「...毒素は入ってなさそうだな。全部魔獣の部位か」。
メンバー達が木箱に入っている物資を調べている時、一人の男が嬉々とした様子でその荷車の中から何かを取り出していた。
「おぉっ! また出会ってしまった! 世界に一つしかないという伝説の剣、“レジェンドスティック”! 」。
マカオは一本の“ソーセージ”を天にかざしながらそう叫んだ。
「いや、世界に一つって…。この間御会いした時、先生はその“レジェンドスティック”を持っていったでござんしょう? 」。
ハリガネは眉をひそめながらマカオにそう問いかけた。
「今はもう無い」。
「...え? 」。
「あれは私の体内に吸収されていった。だから、今はこの剣こそがナンバーワンだ! 」。
(ただ食っちまっただけじゃねぇかぁっ!! そもそも剣なのか棒なのかはっきりしろよぉっ!! )。
ハリガネがげんなりした顔でソーセージを誇らしげに掲げているマカオを見つめていると、チョンケイがハリガネの肩をポンッと叩いて砦の扉を親指で差した。
「先生は一回あーなったら止まらないんだわ~! とりあえず、先生はほっといて中に入るぞぉ~! 」。
「は、はぁ...」。
チョンケイに促されたハリガネは惚れ惚れとした表情でソーセージを眺めているマカオを尻目に見つつ、扉の開かれた砦の中へ入っていた。
砦の中に入ると白く輝く巨大な魔法陣が地面の上に敷かれており、他のメンバー達がその魔法陣の周囲を囲んでいた。
「はッ!! 外の見回り御疲れ様ですッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
チョンケイが砦の中に入ってくると魔法陣の付近で警備をしていたメンバー達は他のメンバーと同様、地面に片膝をつけてチョンケイの前に跪いた。
「おい! 商人を連れてきた奴等以外はあの荷車の監視をしろっ! 中の物は盗むんじゃねぇぞぉ~? 」。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。
数人のメンバーはチョンケイの指示に従い、砦からすぐさま出て行った。
「この魔法陣に入れ」。
メンバーにそう促されたハリガネとシアターは、物資の入った木箱を抱えたまま光っている魔法陣の中に入った。
「移していいぞ」。
チョンケイは美女を従えながら自身も魔法陣の中に入り、傍にいたメンバーにそう告げた。
「はッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! ...配置完了ッ!! “ループ”ッ!! 」。
メンバーの一人がそう言うと白い光の輝きが一層増し、その光と共にハリガネ達はこの場から消え去っていった。