白いローブの先生
賊団のボスに必要な事~?
う~ん、賊団のトップは有能である事が求められているが、それだけでは一人前のボスにはなれないな~!
やっぱり器だ!
下のもんに示しがつけれる人間ってのは器が広くないといけねぇ!
~パルメザンチーズ山脈賊団ゴクアクボンドのボス、チョンケイ~
ハリガネ達はチョンケイと共に砦の裏側の方へ移動すると、目の前には銃や剣が突き立てられた簡素な墓地が広がっていた。
「う~ん、特に今年は大分死んだな~! 」。
チョンケイは神妙な表情を浮かべながらそう言って墓地を見渡していた。
「...ん? 」。
その時、両手を合わせて跪き、墓前に祈りを捧げている白いローブの男にハリガネは注目した。
その男は祈り終えると立ち上がり、ハリガネ達の方へ振り向いた。
その中年の男は幸薄そうで無愛想な顔立ちをしている一方、清らかで澄んだ鳶色の瞳を皆に向けていた。
そして、何故か自身の両耳を栓で塞いでいる。
「あっ! あの人はっ! 」。
「ん? 何だ? 先生の事を知ってるのか? 」。
思わず声を上げたハリガネにチョンケイはそう問いかけた。
「あ、はい...。前にも山脈付近の所を通りかかった事がありまして...。その際に、その先生が道に迷われていたところをあっし達が出会いまして...。それで、あっし達が山脈への行き方を御教えしたでやんす。先生はゴクアクボンド様の御住所を御知りになりたかったみたいでごわすが、あっし達も分からなかったものですから...」。
ハリガネがそう答えると、チョンケイは納得した様子で何度も頷いた。
「ああ~! そうなの~! 先生知ってたのかぁ~! 」。
チョンケイがそう相槌を打つと、先生と呼ばれている男は周りに佇んでいたゴクアクボンドのメンバー達を従えてハリガネ達の下へやって来た。
「埋葬と儀式が終わりましたぞい」。
先生は無表情を保ったままチョンケイに淡々とそう告げた。
「先生っ! 耳栓っ! 耳栓っ! 」。
チョンケイは自身の両耳を指差してそう伝えると、先生は思い出した様子で両耳の穴を塞いでいる耳栓を外した。
「おっと、失敬。山脈は魔獣の甲高い鳴き声がうるさいもんだから、耳栓をしていた事をすっかり忘れとったわ」。
先生はそう言いながら耳栓をローブのポケットに入れるとハリガネの方に視線を移した。
「やぁ、また会ったな。十億ゴールドの男...いや、今は二十五億ゴールドの値打ちがあるんだったな」。
「...ッッ!! 」。
先生の一言でハリガネの身体が一気に凍り付いた。
「...っっ!? 」。
ゴクアクボンドのメンバー達も動揺した様子でざわつきながらハリガネに視線を送った。
「せ、先生っ! それは一体どういう事ですっ!? 」。
チョンケイは困惑した表情を浮かべながらハリガネを一瞥して先生にそう問いかけた。
(くっ...!! やはりこの男の言ってる事は冗談じゃなかったのか!! ハンターや賊団内で二十五億ゴールドの首が懸けられていたのも本当だったのか!! ...クソッ!! よりによってこの状況下で...ッッ!! この男はマジで一体何者なんだよッッ!? )。
険しい表情で奥歯を噛み締めるハリガネからは一滴の汗が頬に伝った。
「...」。
一方、変わらず涼しげな表情をしているその先生は、ハリガネをじっと見つめたまましばらく黙っていた。