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ツインボス


ただ、ゴクアクボンドの組織において魔法を使わない人間で出世しやすい唯一のポジションがある。


それは厨房さ。


美味い飯が作れたら組織内でも重宝される。


危険だらけの山脈において数少ない楽しみの一つが食事だからな~。





~パルメザンチーズ山脈賊団ゴクアクボンドのメンバー~





木造建築物の並びを通り過ぎると、石で建築された砦がハリガネ達の目の前に現れた。


「ここが地下に通じている砦だ。中には地下に通じている魔法陣が設置されている」。


その男はそう言って砦に設置された木製の大きな扉を叩こうとした時...。


「あれ~? お前等、何で戻ってきたんだよ? 」。


砦の裏から小太りの男が姿を現し、自身の両脇に美女達を抱き寄せつつハリガネ達の方へ歩いてきた。


その小太りの男は坊主頭にサングラスを載せており、上半身裸の上から鮮やかな紫の毛皮を羽織っていた。


そして、金の分厚くて長い喜平ネックレスを首に掛け、下は白のスラックスに足は下駄を履いているという賊団のボスらしいワイルドな出で立ちをしていた。


両脇にいる二人の若い美女達も高価そうな白い魔獣の毛皮の服を纏っているが、肌の露出が多く谷間と太腿やくびれを強調した大胆な格好は異性の目を刺激させるには十分過ぎる程であった。


そんな魅力的な二人の美女達を抱きかかえて誇らしげに笑みを浮かべるその男の立ち振る舞いは、まさに弱肉強食な賊団社会に君臨する典型的な権力者の象徴であった。


「はッ!! 御機嫌麗しゅうッ!! ボスッ!! チョンケイッ!! 」。


ゴクアクボンドのメンバー達はそう言いながら地面に片膝をつけ、チョンケイと呼ぶボスの前に跪いた。


「何だ~? お前達、ソイ=ソース国から戻って来ない奴等を探しに行ったんじゃなかったのかよぉ~?? 」。


チョンケイはそう問いかけながら両脇の美女の頬にキスをし始めた。


「はッ!! 下の連中の捜索中にポンズ王国の商人に遭遇しましてッ!! 話によると山脈まで通りかかった成り行きでボスへ挨拶に参じたとの事ですッ!! 」。


その男がそう答えるとチョンケイは興味深しげにハリガネとシアターが動かしていた荷車を見つめた。


「お~! 本当だ~! 品物が積んであるなぁ~! 何? 自分達ポンズ王国の人間なの~? 」。


「へい! あっし達はポンズ王国出身の商人でやんす~! この度はゴクアクボンド様の長であらせられる旦那様に御挨拶したく参上致しましたでおじゃる~! 御忙しい中、大変恐縮でありんす~! 」。


ハリガネはまじまじと荷車の中を見続けているチョンケイにそう答えた。


「じゃあ、後でケンキョウの所にも行っといた方が良いぞ~! 」。


「ケンキョウ様...ですか? 」。


「おう! ウチは俺とケンキョウのツートップで組織回してんだよぉ~! そのケンキョウって奴が組織の統括してっからよぉ~! 」。


「ありがとうございやすっ! 今から伺わせていただきやすっ! 」。


ハリガネは深々と頭を下げてそう礼を言うと、チョンケイは両腕を組みながら何やら閃いた様子でハリガネの方に視線を移しながら大きく頷いた。


「う~し! 俺が話を付けてやるよぉ~! アイツ気難しい奴だからよぉ~! お前等だけでアイツんとこ行くと普通に追い返されるだろうからな~! 」。


「はッ!! ありがたき幸せッ!! 」。


跪いているゴクアクボンドのメンバー達は更に深々と頭を下げた。


「おうよ~! 最近はノンスタンスとかいう訳の分かんねー愚連隊みたいな奴等に手こずってるから、アイツずっとピリピリしてっからよぉ~! 俺を通した方が早いだろぉ~?? 」。


「はッ!! 御先導いただきッ!! 誠に光栄でありますッ!! 」。


そのまま跪いているゴクアクボンドのメンバー達は、自身達の額を地面に着けてチョンケイに最大限の感謝を示した。


(なるほど...ゴクアクボンドは二人体制なのか。それに、コイツはノリが良いから口も軽そうだし、色々と聞き出せそうだな...)。


ハリガネが神妙な面持ちでそう思っていた時、チョンケイの傍にいる美女の一人が神妙な表情を浮かべて口を開いた。


「御主人様ぁ~、先生ほったらかしにして大丈夫なのぉ~?? 」。


美女の一人が猫撫で声でそう言うと、チョンケイは突如思い出したように目を見開きながら自身の握り拳で片方の掌を叩いた。


「あっ! そうだぁ~! 先生を放置したままだったぁ~! 」。


「先...生? 」。


ハリガネがそう聞き返すと、チョンケイは大きく頷きながらハリガネに対して手招きをした。


「そうそうっ! ケンキョウんとこ行く前に御世話になってる先生を紹介するわっ! ちょっと建物の裏側までついてこいよぉ~! 」。


「は、はぁ...」。


ハリガネとシアターは怪訝な表情を浮かべてお互い顔を見合わせつつ、チョンケイの後についていった。




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