新討伐部隊“勇者”の朝礼
「え~、皆さん。おはようございま~す」。
パルメザンチーズ山脈手前に存在するチェダチーズ山。
その山中に基地を構える“アルマンダイト=ガーネット”討伐部隊“勇者”。
そして、その部隊を率いるハリガネは昨日ソイ=ソース国の工兵ミツカ=サウスタウンを部隊に加え、そのミツカと共に新たな一日を迎えていた。
「おはようございますッ!! 」。
ハリガネの挨拶で朝一恒例である朝礼が始まると、テーブルを囲んでいる隊員達も挨拶を返した。
「え~、もう言うまでもないとは思いますが、昨日はソイ=ソース国の元兵士であるミツカ=サウスタウンさんが隊員として新たに加わりました~」。
「ミツカ=サウスタウンで~す! 重ねてですがよろしくお願いしま~す! 」。
ハリガネに紹介されたミツカは隊員達に深々と御辞儀をして挨拶をした。
「昨日も少し話しましたが、ミツカさんは工兵出身で防壁とか施設やトラップ関係の専門分野に特化した隊員です。まぁ、建築関係とか大掛かりな工事は賊団から居場所がバレてしまうのでさすがにできませんが、部隊内では欠かせない存在となっていく事でしょう。本国ソイ=ソースでは防衛部隊も兼任しており、複数の大型魔獣相手にも臆せず戦える強戦士です。頼もしい人が僕等の仲間になりましたね~」。
ハリガネはそう言いながら誇らしげにミツカの肩をぽんっと叩いた。
「いやいやぁ~! 御力になれるよう頑張ります~! 隊長もどうぞよろしく~! 」。
ミツカは照れくさそうな様子でハリガネに手を差し出した。
「こちらこそですよぉ~! 」。
そして、ハリガネとミツカはその場で固い握手を交わした。
「...」。
隊員達が活き活きとした表情を浮かべてミツカに対し期待感を含んだ視線を向けている反面、ゴリラ隊員は渋った面持ちで両腕を組んだままその場に立っていた。
「ゴリラ隊員~! 何をそんなムスッとしてるんですか~? 」。
ハリガネは怪訝な表情を浮かべ、腑に落ちない様子を見せているゴリラ隊員にそう問いかけた。
「...別に」。
ゴリラ隊員はぶっきらぼうにそう言って隊員達からそっぽを向いた。
「何すかぁ~? まだミツカさんの事を疑ってるんですかぁ~? もういいじゃないですか~! 仮にこの人がミツカさんではないとしても、戦闘能力に関しては僕が保障します! フィジカルがヤマナカと引けを取りませんよ! 僕とシアターさんは背負っていた対魔獣用の長剣を二刀流で使いこなすミツカさんをこの目で見たんです! ゴリラ隊員は長剣を二刀流で使いこなす剣士を見た事があるんですか!? 」。
「隊長っ! ミツカ勇士の実力は私よりも数段上でありますっ! 私は長剣を片手で振り切る事はできませんっ! 機会があれば、是非ともミツカ勇士の戦闘を私も拝見したいでありますっ! 」。
ヤマナカもそう言って羨望の眼差しをミツカに向けていた。
「ふんっ...別に不満があるわけではない」。
ゴリラ隊員はハリガネにそう答えと、露骨に大きな溜息をついた。
「う~ん! こんなサバイバルな環境下で入ってきた新参者の僕を信用しろって言うのは、ちょっと無理があるのかもしれないね~! よし! 隊に入れていただけた御礼として僕が一肌脱ぐとしよう! 」。
ミツカは笑みを浮かべながら自身の両腕で力こぶを作った。
(一肌って...アンタもともと上半身裸じゃねぇか...。下はボロボロの白い道着に同じくボロボロの黒帯を締めてるだけだし...)。
ハリガネはそう思いながらボディービルダーのポージングを取っているミツカに冷めたい視線を送っていた。