夢の中の美女
私は夢を見た。
雲ひとつ無い青空
そこは見たこともない場所で薔薇が咲き誇る庭園
真正面には少し年上くらいだろうか。
美しい女性が立っていた。
綺麗なストレートの茶色で長い髪。
個性を象徴するような黄色の豪華なドレス
端正な顔立ちがこちらに微笑みかける。
少し気の強そうなつり目が
愛おしげに熱のこもった視線でこちらを見あげる。
ドレス姿の女性は私の頬に手を伸ばし
優しく触れてくる。
頬に彼女の手の温もりを感じ
ウットリとした恍惚に包まれた。
そして彼女の口紅で彩られた艶やかな唇が開き
こう囁かれた
「マティス⋯。愛してるわ」
その瞬間
私は夢から覚めた
見慣れた天井
握り締めていた自分の毛布
少し長めの寝巻きにしているシャツ
そして、昨晩いつも通りに眠りについた自分の部屋だ
「んぅ⋯なにか夢をみてた気が」
目覚めたのは
黒髪に金のメッシュがはいったショートヘアーに
頬に十字の傷跡があるのが特徴的な少女
マチルダ 18才だ
まだ眠い目を擦りながら
床に置かれた皿に目をやる
寝る前に用意したキャットフードが
空になっているのを確認すると
ベッドから立ち上がった
マチルダが起きたのを察知した
茶トラ猫と黒猫の2匹が足元に擦り寄ってくる
「おはよう!ライス」
しゃがみこんで茶トラの猫を撫でると
尻尾をピンとたてて喉を鳴らし喜びを表現した。
この甘えん坊は茶トラ猫の♂ライスだ
「ニャッ!ニャッ!」
黒猫が短く鳴きマチルダに呼びかける
マチルダの足元から空っぽの皿の前に足を運び
こちらをジッと見つめる
これがいつものご飯欲しいのサインだ。
「スピカもおはよう!今ご飯用意するね」
この食いしん坊が黒猫の♀スピカ
足早にマチルダは空っぽの皿と
水の入ったマグカップを拾いあげ
キッチンへ向かった。
皿を水洗いし、水気を拭き取り
新しいキャットフードと新鮮な水を入れて
猫達の待つ部屋へ向かう
「おまたせ!ご飯だよー」
猫たちは待ちかねたように
目を輝かせながらコチラを見上げ
皿を置いた途端にがっつくように食べ始めた。
そんな様子を横目で確認しながら
マチルダは自分の身支度をはじめる
ツバの広い羽飾りのついた青い帽子に黒いマント
ふっくらとした胸を包むヘソ出しの丈の短い紺のインナーと
黒のタイトスカートに青いメッシュの
ヒラヒラとしたフリルがついたボトムス
青い手袋と青いブーツ
愛用の服を身にまとい
腰にはレイピアをたずさえて
準備完了
肩にスピカを乗せ、ライスを抱っこしながら
猫達とともに今日の任務は何かと城に向かう