詩集『同じ月を見てる』
『連』は、きょん八丈島とは別に、詩を書く時に使っていた名前です。
俳優の大杉さんから思い付きました。
当時は悪役を演じる事の多かった大杉さんと同じ名前でリリカルな詩を書くのが面白いと思ったのが動機です。
『ふわり』
羽のように軽く
綿飴のような手触りで
雪のように儚い
そんな優しさを忘れない
傷口に触れないよう そっとそっと
その気持ちだけで痛みなんて飛んで行ってしまう
まるで心まで抱き締められているような安心感
そんな優しさは忘れられない
『泣いてくれる人がいるのなら』
止まってしまった時間
止まってしまった物語
傷と痛みと悲しみに侵されてしまった心
その場所が苦痛なら一歩だけ踏み出してみる
自分の為に 誰かが泣いてくれると知ったならば大丈夫
どんなに辛くとも平気
ほんの少しだけ進んでみよう
まだ侵された心が足枷になるのなら休めばいい
一歩 一歩
おっかなびっくりの一歩を繰り返して
少しでも前に向かって
『秋の夜に満月と』
透き通る空気
心地良く冷たい風
川沿いの土手を歩く
鈴虫の鳴き声と 遠くに見える高層ビル
ちょっとしたデート気分でスキップしたくなってしまう
相手は満月
暗い足元を照らしてくれる気の効く相手だ
静かに黙ったまま
どこまでも一緒に歩く
『君の数だけ』
「どうしてテレビの人は可哀想で ここにいる人は汚いの?」
それは飢饉に苦しむ人々を知らせるテレビジョンを見た後の公園での出来事
テレビジョンの中の大人達は 口々に飢饉の惨状を憂いていた
涙さえも流していた
それが幼い君には大変な出来事に映ったのだろう
そして公園の水道
リヤカーを牽きながら暮らす老人が飲んだ水道
そこから我が子が 水を飲む事を止める母親の姿
とても不思議に映ったらしい
しばらく考えてから君は真剣な眼差しで尋ねた
僕は答えなかった
これからの人生
いくつもの不可解な謎と出会うであろう君
その半分以上を体験している僕
教えてしまうのは簡単だけれども
何故だろうね とだけ言った
思うのだ
答えは 君だけの答えを出して欲しいと
君だけの真実を見出して欲しい
君の数だけ
世界に真実を作り出して欲しいと願うのだ
『真夏の入道雲』
愛は不変でなく 常に変わり続けている物のようです
ここに 私の知る愛について記しましょう
幼き頃
愛は与えられる物だと信じて疑いませんでした
若き頃
愛は与える物だと確信していました
衰える頃
愛は存在しないのだと絶望していました
老いる頃
愛は感じる物だと悟りました
恐らく これからも愛は変わり続けるのでしょう
その速度は まるで真夏の入道雲のように重く鈍く
この身が土に還る瞬間
その時に持つ愛への答えも
誰かに伝える事で変化を続けるのでしょう
本当にゆっくりと
手の届かない大きな真夏の入道雲のように
『二色の空間』
黒いドレス 黒いワンピース
黒いスーツ 黒い学生服
小さな長方形の黒い箱
黒い大型車から運び出された
厚塗りの女性の瞳からは黒い涙
心まで黒くなってしまった人は悲しむ様子も無い
ただ静かに黒い時間が過ぎて行く
高くそびえる煙突から白い煙が昇って行く
白い雲に吸い込まれて一つになる
白い翼の残骸は やはり黒い炭にはならなかった
真白の粉のように弱々しく残った
たった二つの色の世界
悲しみを彩る二色の空間
『錆びた時計』
秒針は止まったまま
ざらついた表面は赤い錆色
約束の時間は永遠に訪れなくて
けれども先にも進めない
心の深い深い場所
手を伸ばしても届かないくらい暗い場所
そんな時計を持っているなら忘れてしまうのが良い
その錆びた時計は何も刻んでくれないのだから
今 その手の中にある時計だけを信じて進もう
『何も無い夜が』
真夏の土手と缶ビール
彼女は彼が好きで 彼は僕が好きで 僕は彼女が好きで
星空だけが僕等を照らして
誰もが 何も動かさないと誓っていて
このままでいようと決めていて
そんな三人でいるのが楽しくて
草の上に寝転がり 宝石箱を引っくり返した天井を見てた
優しくて穏やかで
とても哀しい時間
いくつかの季節を経て 僕等は離れ離れになった
あの何も無い夜が ただの寂しがり屋に力をくれる
『キスした数だけ』
初めてのキスは観覧車
隙を狙うカラスのように唇を盗んだ
もちろん隙を作って待っていた あの子の期待に応えて
ほんの少しだけ驚いたフリをした彼女
離れた唇に重ねられた 彼女からの長いキス
夕日が沈む浜辺で 明日の事なんて考えないキス
大好きで 大切で 愛しくて 沢山のキス
喧嘩して 飛び出して 見つけて抱き締めて
目が合うだけで
手を繋いで歩いて
当たり前のようにドアを開けて
行ってきます ただいま
繰り返された数だけ
キスした数だけ悲しくて
やっぱり最後もキスしてバイバイ
キスした数だけ忘れられなくて
キスした数だけ想い出が溢れてくる
『いつから泣けなくなったのだろう』
どしゃぶりの雨の中
傘を放り出す
気が付くと涙が枯れていた
もう泣く事を忘れて どれくらいの時が経つのだろうか
だから時々
どしゃぶりの雨の中
傘を放り出す
まるで涙が流れるように
頬を流れる雨
大粒の涙のように流れて行けと
吸い込まれそうな灰色の空を仰ぐ
『見つからない扉』
あの頃の自分が見つからない
無防備なくらい 信じられた頃の自分
沢山の心の中にある扉
一つ一つ開けて確かめる
人を許せた頃のパーツ群が安置された扉
どんな時も笑っていようと誓った自分の住む扉
様々な扉を開く
誰でも信じられた頃の自分
それが入った扉だけが見当たらない
残骸さえも残っていない
探しても探しても見つからない
延々と探し続けて気付く
ああ そうだったんだと
『たゆたう』
海の底に沈んで行くような
そんな錯覚を伴った深い眠り
また目覚めるのだろうか
深海魚の棲息する深度まで意識を保つ
目覚めない事を恐れて
生きる事は簡単で
消えてしまう事も等しく簡単で
海底深く沈む幻を見る頃
再び天井が現れる
現実には長い夜なのに 僕に取っては一瞬の幻
海の底に沈むように眠り
目覚めた時 天井に笑う
『君の空』
すべてを失ったと思った時
孤独に膝を抱える前に
最後に残された元気で 空を見上げてください
満天の星空なら君へのスポットライト
足元だけを照らす光でも歩けるから
真っ青な快晴なら君へのお節介な両腕
冷たい体を温めてくれるぬくもり
雨の降り注ぐ暗い空なら
君の涙も悲しみも洗い流す香水のシャワー
少し淋しい曇り空なら
落ち着いた間接照明で穏やかな眠りを
そこで気付く君
もう新しい何かを手に入れている事に
『太陽と月があるから』
忘れないで
大好きな人が消えてしまった日
大切な物を失った時
汚れたと思い込んでしまう時期
独りぼっちの季節
壊れかけた自分に怯えている部屋で
さよならが続く悲しい時間
どんな時も忘れないで欲しい
太陽は君を照らす
雨の日だって 雨雲の向こうで君を照らしている
月は君を照らす
毎日 違う顔で君を照らす
君の歩く道に暗闇なんて無くて
いつも太陽と月が君を照らす
太陽と月は 永遠に君を照らし続ける
本当の暗闇は どこにも存在しない
とても簡単な事
ただ 太陽と月の照らす道を歩けば良いのだから
『困ってしまいますね』
どんなに辛い事があっても
どんなに哀しい事があっても
どれだけ泣いても
とてもとても傷ついても
沢山の責任に押し潰されても
挫けて膝を抱えてしまっても
全部に絶望したって
気付くと立ち上がってる
まるで強い人のように立ち上がってしまっている
そんなに強くないのにって自分に言い聞かせても
また前を向いて歩き出してしまう
本当に困ってしまいますね
けれども少しだけ自信を持っても良いのかも知れないですね
そんな自分の仕組みに
そんな人間の仕組みに
『ビー玉』
古いドロップの缶
軽く振ってみる
ゴロリン ゴロリン
懐かしい音がする
蓋を開けると 中に詰まった幼い時間が飛び出した
透明なガラス玉の中
何色もの色
その一つ一つに想い出が映し出される
あの頃 空想した事
ビー玉の中に映って 今でも胸を熱くする
風鈴がチリンと風を受けた
私の目から 小さなビー玉が零れ落ちた
『流星群の夜空に』
守りたい物から零れてゆく
大切な物から壊れてゆく
抱き締めたい物から消えてゆく
泣かないでダーリン
君の失くした物
僕が拾い集めてくるから
愛しすぎると遠ざかる
頑張る事が笑われる
真面目にしてると一人になってしまう
泣かないでダーリン
君を苦しめる物
僕が盾になって防ぐから
そうして守っているから夜空に顔を向けてください
沢山の星の光が 君の傷を洗い流してくれるから
『一人で泣かないでください』
一人 膝を抱えて泣いた夜
こんなに哀しい事があるのかと驚きました
何故 自分が泣いていたのかも忘れるくらい
たった一人で 泣く事が哀しかったのです
どうか貴方は一人で泣かないでください
あんなにも哀しい想いをしないでください
どうしても一人で泣かなければいけない時
大声で泣いてください
誰かに 泣き声が聞こえるように
手を差し伸べる人がいるかも知れない
私に泣き声が届くかも知れない
貴方に気付く人がいれば良いのです
どうかどうか
一人ぼっち 泣かないでください
『報われない朝』
あんなに努力した夜が明けて
目覚めたばかりなのに
とても淋しい気持ちのまま
限界以上の力を出して尽くしたけれども
何かが足りなかった夜
ベッドから抜け出せないまま時計の秒針を見つめる
後悔して 悔しくて 落ち込んで 辛くて
それでも朝に追い立てられて
心と体に 喧嘩をさせて起き出す
カーテンの隙間から差し込む光なんて なんだか針のようで
部屋全体に光を取り込むと やっぱり眩しさが不快で
けれども報われない朝が来て
一日の始まりが告げられて
だけど憂鬱になる必要なんてなくて
本当は知っているはずです
同じ朝
同じ夜
同じ明日
そんな物が存在しない事を
きっと明日は報われる朝で
清々しい光の中で目覚めるはずで
『象さんは優しい』
死期を悟った象さんは こっそり群から離れる
群の皆が気付いた時には もう姿を消している
それから象さんは歩き続ける
ずっとずっと遠い場所に向かって
群の誰にも 自分の眠る姿を見られない遠くへ
象さんは優しい
仲間を泣かせたくないから歩く
死期の迫った衰えた体で
ずっとずっと歩き続ける
群の仲間達が 消えた象さんを忘れた頃
草原の死角で座り込む
そこで永遠に眠る
『交差点』
まだ学生服に縛られていた頃
きっと幸せになろうと交わした 悲しい別れ際の約束
幸せになった時 この銀色の指輪を外そう
そう言って互いの指輪をカチンと合わせた
今もはっきりと覚えている音
振り返らず歩き出した別々の道
あれから何年経っただろう
僕の指から約束の銀色は消えていた
ある雨の日の交差点
よく似た銀色の指輪
ベビーカーを押す指に銀色の指輪
傘で隠れた顔
瞬間の突風
懐かしい面影
そのまま通り過ぎる
とても幸せな人の顔をしているよ
そう心の中で声を掛けて
『傷』
痛くなんてない
平気
なんとも無いもの
強い口調で胸を張る人
新しい傷 古い傷 まだ血を流し続けている傷
そっと傷口に触れてみる
途端に傷が痛み出し 涙が溢れ出す
その傷が癒えるまで
その痛みが消えるまで
しばらく泣いていてください
素直に泣く事で 癒える傷もあるはずですから
その傷が癒えるまで
その痛みが消えるまで
我慢しないでいてください
痛いと言わなければ 手当てさえも出来ないのですから
時間の許す限り
誰かの手が その傷に触れていてくれるはずですから
『操り人形』
何本もの糸が手足に繋がっています
高い場所で糸繰りをする手
上手に手足を動かす見えない繰り手
カタカタと音をさせながら 糸の動きに合わせます
悲しみがありました
その横に立たされました
繰り手は それを抱きしめさせました
カタカタと音をさせながら その悲しみが消えるまで抱きしめていました
カタカタと音をさせながら 糸の動きに合わせます
孤独がありました
その横に立たされました
繰り手は それを抱きしめさせました
カタカタと音をさせながら その悲しみが消えるまで抱きしめていました
憎しみに狂う心がありました
その横に立たされました
繰り手は それを抱きしめさせました
カタカタと音をさせながら その悲しみが消えるまで抱きしめていました
失う事に怯える魂がありました
その横に立たされました
繰り手は それを抱きしめさせました
カタカタと音をさせながら その悲しみが消えるまで抱きしめていました
ある時
プツリと一本の糸が切れてしまいました
目の前には 絶望がありました
高く見えない場所にある繰り手は それを抱きしめさせようとしました
足りない糸が それを上手にさせてくれませんでした
しばらくすると大きな木の枠組みが落ちて来ました
操り人形を上手に動かしていた繰り手の道具でした
高くて見えない場所にいる操る手が それを手放してしまったのです
操り人形の動きは ピタリと止まってしまいました
操り人形は 目の前の絶望を抱きしめたいと思いました
けれども操り人形は動けませんでした
たとえ自分の意思で動けたとしても 落ちて来た大きな繰り手の落とした物
その重みで動けない事でしょう
ただ ただ
操り人形は 絶望の横で倒れていました
抱きしめたい 抱きしめたいと願いながら
『夢と悪夢』
夢を見ていたい
夢を追い掛けていたい
それは素晴らしい事
それが悪夢に変わる事もある
夢の為
夢だから
夢を絶対叶えたい
夢は犠牲の上に成り立たない
純粋に力だけを与えてくれる
夢に縛られている人の夢は ただの悪夢
『コワレタザンガイノユメ』
銀河鉄道に乗っていた
ガラじゃないと走行中の列車の扉を開ける
止める者もいたが 躊躇なく眼下に広がる暗黒にダイブした
両手を広げる
風圧で凧のように体がしなる
目を開けるのも辛い
まるでスローモーションのように ゆっくりゆっくり
長い時間 落下していた
どれだけの時間 暗闇の中を落ちていただろうか
真下
真っ赤な何か
閉じた瞼からも判る熱を含んだ赤
いつの間にか落下速度が ゆるやかに変わっていた
閉じていた目を開く
それは荒涼とした岩山だった
ただし とても禍々しい闇の中にあった
その中心
噴火寸前の火口のように マグマのたぎる穴
マグマの中には巨大な三つ首の犬
獰猛な唸り声を発していた
やっぱりこちらが行くべき場所だと目を閉じた
全身を噛み砕かれる感覚
けれども痛みを感じない
時々 チクリチクリと二の腕の辺りが痛む程度だった
行く着いた先を確認しようと こわごわと目を開けた
白い天井
血管には管
動かない体の僕がいた
『天使が旅立った朝』
その天使に罪は無かった
暴力に耐えていた
その暴力を振るう者達でさえ 庇い許していた
誰にも翼の傷の事を話さなかった
天使の翼は大きく広がっていた
理不尽な小さな世界を
精一杯 飛び回っていた
天使は花の香りを そっと教えてくれた
微笑みながら素敵な香りだと教えてくれた
どこまでも遠く
その翼で飛んで行くはずだった
悪魔にまで 心安らぐ空間をくれた本当の天使だった
天使が旅立った朝
その翼と同じ純白の部屋
見守る人々が泣きじゃくる朝
天使が一番求めた愛は不在だった
僕が世界を大嫌いになった初めての朝だった
『優しかった』
暖かい手を持っていた
心安らぐ言葉を知っていた
悲しみを乗り越える術に長けていた
温もりの感触 愛情表現 眠れぬ夜の過ごし方
沢山の事を教えてくれた
そんな素晴らしい時間にも終わりは来る
いつも失って気付く人の愚かさ
優しくなかったのは自分なのだと
『胸の中に降る雨』
突然の来訪者のように
淋しくなる時があります
何をしても淋しいまま
ただ 淋しい時間が過ぎて行きます
どんな音楽も効き目がなくて
どんな小説も紛らわせてくれない
そんな淋しさに支配されてしまう時があります
雨が止むを待つように
静かに雨雲が流れて行くのを待っています
『コール』
手にした受話器
溜息と一緒に元に戻す
意を決して再び受話器を手に取り
ゆっくりと番号を押す
ほんの数桁
数字を押す間に また受話器から手を離してしまう
なんて言葉で話し始めたら良いのか
気持ちを悟られやしないか
電話するなんて簡単な事なのに
何度も同じ事を繰り返して
結局 電話は出来きないまま
どこか残念で
どこかで安心して
そんな自分を嫌いじゃなくて
『さよなら』
ありがとうって意味
永遠に忘れないって誓い
大好きだったって告白
悲しいけれど頑張るって決意表明
寂しくないよと強がってみせる思い遣り
お別れの言葉じゃなくて
さよならって言葉は
相手に伝える秘密の暗号
『悪魔の見る夢』
誰も泣く事なく 総ての人々が幸せな世界の到来
誰も傷付く事なく 誰もが優しさを持てる世界
誰かが消えたら大騒ぎして 見つかるまで皆で探し続ける
雪に凍える国が常春の国になり
熱砂の砂漠に緑が溢れ
どんな生き物も殺される事なく 寿命尽きるまで生きる
自由な心が当たり前で 不自由な生き方は偏屈者のスタイルになって
皆が笑って暮らして
お腹をすかしている人なんていなくて
誰もが屋根の下で眠り
鉛と鋼が武器にならない
悪魔にしてみたら悪夢だろうけれど
僕等は心の底
いつも見ている夢
『大人ごっこ』
堅苦しいスーツにネクタイ
真っ黒い髪
ビジネスシューズ
礼儀正しい言葉
良く下がる軽い頭
上手な愛想笑い
大きなホテルの巨大ホール
テーブルに並んだ豪華な料理
ドリンクを運ぶ身形の整ったボーイ
黒塗りの車で自宅まで送迎
これが大人の趣向らしい
僕は初めにネクタイを外す
エレベーターの中で外してしまう
大人ごっこの怖さは 心地良いって所だ
それが出来るから大人なんじゃない
大人なんて存在しない
誰もが自分である事に必死で 大人って幻想を夢見てるだけ
ネクタイを外した瞬間
僕は僕に戻るスゥイッチをONにする
時々 大人ごっこから抜け出せなくなる人もいるけれど
遊びだって永遠に続けば疲れてしまう物なんだ
『一週間』
月曜日
夜空の月に挨拶した
火曜日
真っ暗な部屋の明りを蝋燭一本だけにする
水曜日
噴水の前で水色の便箋で手紙を書いた
木曜日
大きな栗の木下の木陰で昼寝と洒落込む
金曜日
ネックレスを見知らぬ子供にプレゼント
土曜日
庭で草むしり
日曜日
日付が変わるまで考え事
独りぼっちのお婆さんは それが幸せだと言った
僕は幸せが何かを知った
『すがる人達』
他人の欠点を指摘して識者気取り
自分に何も無い事の裏返し
ブランドに身を固め輝いてるつもり
自分に何も無い事の裏返し
沢山の品物を揃えて成功者顔
自分に何も無い事の裏返し
未開の無知を笑い利口な人間だと胸を張る
自分に何も無い事の裏返し
素直に笑えたら楽しい
素直に泣いたら手を差し伸べて貰える
素直に怒れば話し合いの場が持たれる
すがった先には寂しさしか残らない
『稲妻が切り裂く』
夜と夜が出会った
どこまでが片方で どちらが左右か分からない
それが夜と夜の出会い
交じり合った夜と夜
同じ色の闇色の中で融け合う
瞬く星々の祝福を受けて
夜と夜
月明かりの下 愛し合う
突然の稲妻
夜達は切り裂かれた
一筋の稲光で二度と交じり合う事が出来くなる
夜達は幸福だったのだろうか
『ロボとブランカ』
狼王ロボ
強くて 人間なんかよりも賢くて 人間を大嫌い
わがままで ずるくて 自分の信念を曲げない
そんなロボが 唯一 心を許す白いメス狼
それがブランカ
二匹は強い絆で結ばれた恋人
ロボはブランカが大好きで ブランカもロボが大好きで
よっぽど人間よりも恋愛が上手で
素直に羨ましい
『言葉』
たった一言で 人を殺せてしまう怖い物
たった一言で 人を元気にする魔法のような物
たった一言で 泣いた子供を笑顔にする特効薬
同じ言葉なのに 争いの元になり 慈しみ合う切っ掛けにもなる
繋げた言葉をメロディーに乗せれば国境さえ越えてしまう
国境を取り除いたとしても言葉の持つ力は変わらないだろう
声帯を震わせて空気を振動させているだけの物
それなのに 多くの力を持つ言葉と言う力
そう
言葉は 力だからこそ 愛も憎悪を産み出す事が出来てしまう
時々だけど僕は 言葉に怯えてしまう事がある
無口な人の傍にいると安心する時もある
簡単なようでいて 伝える事さえままならない時もある
たった一言の同じ言葉にだって 沢山の意味があると知った日
僕は詩を書くようになった
『命の価値』
ここに力尽きかけた命を見つけたとしましょう
今にも止まってしまう 命が刻む時の流れ
止まらぬように努力するべきなのか
あるがままを受け入れるべきなのか
きっと誰もが迷ってしまうでしょう
その命にも意思があると知ったのならば
その意思を尊重しないまま延命措置を取りますか?
その意思を尊重して見送りますか?
残酷だけれども命には価値があり
価値ある命があるのならば 価値の無い命も存在してしまう事になり
それを判断するには どんな力を見に付ければ良いのでしょうか
その答えを探しています
『パーツ』
定期入れの中の写真
同じ体操着なのに 君だけが違って見えた校庭のマラソン
ただ 川に沿って歩くだけて幸せだった
恥ずかしくて真っ赤になる顔
好きって言葉を言うだけに三年間
ゆっくり小指から触れて手を繋ぐ事
シャンプーの香りに高まる鼓動
笑顔の裏側なんて想像もしない
たくさんたくさん
どこかに置き忘れてしまった大切な僕の一部
『長くて重い一瞬』
一瞬の交差
ほんの少しの時間
それが人生を変える事がある
どうしようもなく堕落していた時
真っ直ぐな目に出会った
ただ真っ直ぐに前を見る瞳だった
その瞳に見据えられると 自分の存在を消したくなってしまう程
機械の両足で歩き
短い両手で一生懸命な身振り手振り
大勢の人を楽しませる仕事に誇りを持つ人だった
その場から逃げ出したい衝動を押さえ込んだ
僕だって綺麗に真っ直ぐに世界を見たかったらしい
その一瞬の交差が 僕の人生を変えた
堕落するのは簡単だった
そこから這い上がるのが辛かった
辛い時 あの真っ直ぐな瞳を思い出した
今の僕は 真っ直ぐに前を向いている
一瞬の交差
ほんの少しの時間
それが人生を変える事がある
逃げ出す事も大切で 逃げ出さない事も大切で
けれども逃げ出さない方が どこか心地良い自分になれるらしい
『景色の向こう側』
白い部屋
白いベッド
白い服の人々
透明の管で繋がれた君
沢山の機械で繋がれた君
両手を広げたくらいの大きさの窓だけ
それが君の見ている世界
けれども現実は悲しみだけを与えない
君は言う
この景色の向こう側の事を
両手を広げたくらいの大きさの窓からは見えない景色の事を
小さな男の子が転んで泣いてるかも知れない
横断歩道を渡れない老人がいるかも知れない
そこに行く為に生きるのだと
強さって事は 生き抜く意思だと
君の見る景色は どんな高価な美術品より美しく
人の心を奮わせる
『想う程に遠くなる』
愛して已まない人との出会い
そこから始まる恋心
いつしか愛に変わり 永遠を望む
遠い時は逢えるだけで幸せだった
いつも傍にいるようになれば どこかしら鼻につくようになる
人間なんていい加減な物だ
最初の気持ちなんて すっかり忘れてしまう
与えるより欲しがってばかりになってしまう
ただ生きていてくれるだけで嬉しかった人
自分に都合の良い人になって欲しいと望むようになってしまう
そして再び遠く離れてしまう
離れて初めて過ちに気付く
人は人を想う程に遠ざけてしまう
『信じる力』
人類史上
最初に嘘をついたのは誰なのだろう
最も重い罪を犯したのは 最初に嘘をついた人間だ
そこから騙された人間の悲しみが生まれた
猜疑心も生まれた
復讐心も生まれたのだろう
それが広がって僕等の世界は素直に笑えなくなった
人類史上
最初に嘘をついたのは誰だろう
きっと軽い気持ちだったはずだ
嘘と言う概念も無かった時代
たった一人の人間の嘘が 今の僕達を苦しめている
『砂漠の色』
真昼の砂漠は太陽色
太陽と同じ色の大地
その色に合わせるかのように灼熱の大地
そこに生きる生命を脅かす
真夜中の砂漠は暗闇色
月明りも無駄なくらい暗闇の色
急激に気温の下がったマイナスの世界
そこに生きる生命を脅かす
どこか人間に似ている
人間と人間は 砂漠と空の関係に似ている
『ニューヒューマニズム』
優しく抱きしめてくれた腕に不安を感じてしまう
さよならって言葉に怯えて無口になっていく
自由になりたくて不自由になってしまう
立ち止まった街角の路地裏 座り込んで泣き出しそうなボロボロの老人
自分の限界を思い知らされて 消えてしまいたくなる夜
愛されたいから悲しくても笑ってしまう
僕達が人間である事の証明
誰もが強く縛られている鎖エゴイズム
エゴを捨てる事が出来たなら
どんなに素晴らしい世界になるだろう
どれだけ人が解り合える世界になるのだろう
演技ばかりが上手になっていく
今日の事より明日の事ばかりで頭が一杯なんだ
鏡に映った知らない誰かが自分だった時の落胆
誰かを守るのは 自分を守って欲しいから
気付いたら 優しさの全てに躊躇するようになっていた
愛されたいから悲しくても笑ってしまう
僕達が人間である事の証明
誰もが強く縛られている鎖エゴイズム
エゴを捨てる事が出来たなら
どんなに素晴らしい世界になるだろう
どれだけ人が解り合える世界になるのだろう
『欲しい』
支えて欲しい
優しくして欲しい
愛して欲しい
犠牲になって欲しい
盾になって欲しい
守って欲しい
目を離さないで欲しい
抱きしめて欲しい
離れないで欲しい
傍にいて欲しい
与えて欲しい
喉元から込み上げる気持ち
口を開いて空気を振動させて音にする
きっと それだけで楽になれる
『明日が見えないと哭く人』
不安に押し潰されそうになっている
待ち受ける未来に怯えている
聞いてしまうかも知れない 誰かの冷たい言葉に震えている
起こるかも知れない事件に身構えている
突然の不幸に固唾を飲んでいる
そっと肩に手を置く
今を見てくださいと語りかける
何も起こっていない 平穏な時間の中にいるのだと
見えない物なら見えるまで待てば良い
ほんの少しだけ気を緩めても明日は敵にならない
明日なんて今は ここに存在しない
今しか人間には存在しない物なのだから
明日なんて夜に見る夢のような物
『好きって事は』
きっと何も考えなくても良い事
ただ好きでいれば良い事
だから
大丈夫って事
『輝いています』
どこまでも続く坂道
君と歩き続けた
上り坂 手を繋いで歩き続けた
坂の真ん中
下り坂で僕等は 眼下に広がる海を見つけた
太陽が乱反射していた
とても綺麗だった
ゆっくりと海に向かい 坂道を下る僕等
太陽を映す海の輝きのように
いつまでも心の奥底で輝いています
『ビートルズが繋ぐ夜に』
バックパッカーの集まる宿
綺麗に汚れた壁 綺麗に汚れた床 綺麗に汚れた建物
高級料理店の一品と同じ
それだけで 屋根もベッドもついてくる
とにかく僕等にゃ持ち合わせが無い
だから最高の環境なんだ
白い老人が口笛を吹いた
それまで 黙々とページを読み進めていた黄色い少女が踵でリズム
黒い青年は食器を叩き出す
僕が出鱈目な英語で黄色い潜水艦と歌う
負けじと白い青年が 正調イエローサブマリン
とにかく僕等にゃ持ち合わせが無い
だから作り出す
僕等が楽しむ為の時間を
国境を越えたセッションは イマジンで幕を閉じた
『大きな栗の木の下で』
リュックサック枕代わり
ゴロンと寝そべる
天井は緑色の葉脈模様
照明はオートで様々な色に変化する
薄暗い灰色から真っ赤
ゆっくりとオレンジに変わり やがて黒一色へ
小さく細かい照明だけが大きな栗の木の下を照らす
快適なエアコン付き
退屈を感じた頃 ふわりと強い風
眠りに入る頃 頬を撫でるように凪
少し硬いベッドは 火照った体を心地良く冷やす
目覚ましの心配なんていらない
地球に任せておけば良い
自分が消えてしまいそうなくらい大きな栗の木の下で
『オスカー・ワイルドの王子のように』
誰かが泣いていた
銅像のような顔の僕
誰かを笑わす滑稽な表情なんて作れなかった
プライドを一枚剥がして道化師になった
誰かは にっこりと笑ってくれた
誰かが暴力に泣いていた
銅像のように鈍い僕の体
誰かを守れる強さなんて無かった
苦しい鍛錬から逃げ出す自己防衛本能を外した
強くなった僕が誰かを守れた
誰かが食べ物が無いと泣いていた
銅像のように何も持っていない僕
もちろん誰かのお腹を満たす大金なんて持ち合わせていなかった
人を欺く事への罪悪感を捨てた
手に入るようになったお金で誰かを満腹にする事が出来た
誰かが理不尽な権力に泣いていた
銅像のように不器用な僕
権力のある場所に建てられた銅像じゃなかった
笑いたくも無い時に笑い 泣きたい時に泣かないように 感情を忘れた
いつしか権力のある場所に銅像は建て替えられて 権力で人を泣かせた者を権力で捻じ伏せた
誰かが寂しいと泣いていた
銅像だから一人ぼっち
僕も寂しいと泣きたかった
寂しいと嘆く弱さを足元に置いた
寂しいと泣く人の傍らで 明るく振舞う事が出来た
そうして削り続けた銅像は 少しの塊だけになっていた
もう 銅像ですらない 小さい塊になっていた
それが幸福なのか解らない
それを考える力も どこかで分けてしまったから
『真冬の寒い朝に』
熱いコーヒー
厚切りのトースト
不器用だからスクランブルエッグ
しっかりと朝御飯
仲直りのデート
だから万全の体勢で挑む
とっておきのコートは 昨日の夜からハンガーに
ラブストーリーのチケット
何度もサイフの中を確認する
何度見ても入っている
完璧だ
ひたすら謝る
許される為の言葉も沢山用意した
さあ出発だ
玄関のドアを開けた
寒い冬の朝
彼女が立っていた
早く仲直りがしたかったと言って 白い息を吐き出した
少しだけ僕の部屋で熱いコーヒー
それからは楽しいデートに出発だ
『呼び名が変わる時』
友達だった時
見知らぬ誰かを手助けする事を褒めてくれた
素晴らしい人だと感動してくれた
沢山の話をして笑い合った
どんな言葉も素直に聞き入れた
とても幸せな時間
恋人だった時
見知らぬ誰かを手助けする事を批難した
私の事より大切なのと泣いていた
無言でいる時間が増えていった
言葉の裏側ばかりを気にするようになった
それも幸せな時間
想い出の人になった時
色々な表情を思い浮かべるようになった
怒った顔 泣いた顔 苦しんでいる顔 笑った顔
雨の夜のような気持ちになるけれども幸せな時間
友情が産み出す時間
エゴのぶつかり合いが産み出す時間
少しの成長と沢山の後悔を産み出す時間
『無題』
僕に取っての最優先事項は 一番弱い所にいて 怖い怖いと怯えている人です。
身近で 何かに怯えている人がいれば まず手を差し伸べます。
その手を掴んだ人は 二通りに分かれます。
掴んだ手の力強さに自尊心を傷付けてしまい 歪んだ手助けになってしまう人。
素直じゃない人。
掴んだ手に引かれるまま 怖い怖いと怯えていた場所から抜け出して笑顔を取り戻す人。
素直な人。
その どちらにも特別な感情を持ちません。
助けるという行為だとさえも思っていません。
僕の勝手で余計なお節介。
自己満足でエゴイストのナルシズム。
まるでプログラムされた機械のように 対象を見つけたら手を差し出す。
そこに感情は存在しません。
ただ そうするように出来ている僕なのでしょう。
完成した絵。
完成した彫刻。
完成したビルディング。
完成した公園。
その一部分が気に入らないから作り直せ。
そう誰かが言ったとします。
全てを作り直す事は とても大変な作業です。
きっと 極一部の生まれた時から大富豪。
そんな人でもなければ不可能な事です。
だから自分が完成されたと思っている人は どこか気に入らない部分があっても嘆く事など無いのです。
絵も彫刻もビルディングも公園も。
その役割は きちんと果たせているのですから。
無理に変える必要など無く ただ自分であれば良いのだと思います。
全てを壊して 一から作り直す事も出来ますが その修復作業中に 役割を果たせなくなってしまったら 誰かが困るかも知れません。
完成した絵に心癒されていた人。
完成した彫刻を練習に模倣していた芸術家。
ビルディングで働いていた人々。
公園で遊ぶ子供。
そして 完成されている人。
もしも 心無い言葉 辛い境遇 突然の逆境。
それら災害にも似た不幸に襲われた時。
自分が揺らいでしまうのならば それは未完成だと言う証明になります。
つまり まだ作り上げる途中の段階。
その時ならば 修復作業は とても簡単なのです。
地震に弱いビルディングならば 耐震性を強化します。
未完成の彫刻なら 新しい一刀を加えます。
人も同じなのだと思います。
僕は 欠陥商品として完成しているようです。
その事実を ありのまま受け入れる事が出来るので 恐らく完成品なのでしょう。
貴方は完成品ですか?
それとも明るい未来を作る可能性を持つ 素晴らしい未完成品ですか?
『愛が解らないと泣く君へ』
優しい仕草と優しい言葉
優しい声と優しい笑顔
そして優しく触れる手
それらを持ち寄って公園の陽だまりに寝そべろう
それを愛と呼んでしまおう
それを愛だと決めてしまおう
だから愛と言う言葉に囚われないで笑おう
『壊れ物の幸せ』
幸せは難しい
幸せになるのは難しい
人を幸せにするのは簡単なんだ
相手の望む事を頑張る
例え それが辛い作業だとしても
それで相手は幸せになってくれる
君や僕や貴方の不幸を礎に
自分の幸せを探す
望む事は沢山
君や僕や貴方へ
誰かを不幸にしてまで幸せになりたいですか?
幸せと不幸は片方しか選べないのだろうか
『アンコール』
知ってるかい?
何度でも応えてくれるアンコールがある事を
何度も繰り返し応えてくれるアンコールがある事を
挫けた時
立てなくなった時
もう駄目になった時
諦めた時
そんな時のアンコール
終わらないコンサートのように
何度でも応えてくれる
だから立ち上がって拍手をしよう
自分へのアンコール
永遠に応えてくれるアンコールだから
『真昼の白い月』
大人の知らない秘密
公園のベンチに横になる
時間は正午を少し過ぎた頃
秘密の邂逅
その条件は快晴
空には白い月が浮かぶ
誰もが知っていた
そして誰もが忘れてしまう白い宝石
僕は 今だに秘密の蜜月を過ごしている
真昼の白い月と見つめ合う
きっと大切な事は 他に沢山あるのだろう
それでも真昼の白い宝石は 僕の時間を止めてしまっている
空を見上げる事を忘れない
そんな中途半端な立場
そんな自分を悪くないと思っている
『変わらない』
もしも
僕の両足が無くなったら一緒に遊んでくれなくなるかな?
もしも
僕が殺人犯として新聞に載ったら その現実 すぐに受け入れられるかい?
もしも
僕が僕でなくなったら態度を変えるかい?
きっと違う
変わらぬ笑顔で笑ってくれるだろう
そう思っているから変わらない僕がいる
何も変わらない僕だから 何も変わらないと信じている
『一人、公園のベンチで』
ふいに誰かに抱きしめて欲しいと思う
隣に 誰かの温もりを感じたくなってしまう
今 何故だか流れている涙を 拭い去って欲しいと願う
けれども
それが実現したとしても この寂しさは消えないだろう
人は孤独を抱えながら生きる宿命を背負っているのだから
絶え間なく訪れる来訪者としての孤独
上手く付き合って行くしかないのだから
『君の翼、僕の翼』
互いに見えない翼を掴もうとする
見えない翼を必死に掴もうと足掻く
その翼を捕えれば 永遠が約束されると思い込んで
君の翼は 君が飛び立つ為の翼
僕の翼は 僕が飛び立つ為の翼
だから そっと触れるだけでいい
互いに翼を持つ者同士だと知るだけでいい
永遠こそ約束されないけれど
翼ある者としての安心感は得られるのだから
その翼は 互いを暖め合う事も出来るのだから
『お日様の下で笑う天使』
どんなに高価な宝石を身に着けていても
どれだけ美しいドレスに身を包んでいても
とても華やかなステージの上に立つ人よりも
綺麗な舞台で舞うダンサーよりも
お日様の下
にっこり笑う
そんな君を天使だと感じます
『ブランコに乗った頃』
大人になる事に憧れていた
大人は凄いと思っていた
そんな大人の視線に見守られていた頃
どんな我侭も可愛いと笑われた
どんな困難も泣けば解決した
どこに行っても大冒険だった
そして僕等は大人になった
何も変わってない
我侭なままだし 困難で泣くし いつも人生って冒険だ
大人になっても何も変わらないんだね
友達が変わるくらいで
ブランコに乗った友達
それが孤独に変わっただけで
『落ちた花』
それは花だった
どんな所に落ちても花のままだった
場所じゃなくて
咲く位置じゃなくて
それが花であるならば
何も変わらない
綺麗な花は 永遠に変わらない
『ゴールを目指さないマラソンマン』
誰もいないグラウンド
延々と走り続ける
ただ 黙々と走り続けた
何も考えられないならと
何も考えない僕は部屋を飛び出した
ずっと走り続けた
苦しくて辛くて心臓が止まりそうで
それでも走り続けた
体中の汗が 涙と交じって 泣いていた事さえ忘れるくらい
僕は走り続けた
誰もいないグラウンド
倒れ込んで自分が乾いて行くのを待った
自然の風が汗も涙も乾かしていた
『辿り付いた場所』
自由だと思っていた。
何物にも縛られない自由。
けれども、代価を支払い続ける不自由な自由。
暖かい手も、差し伸べられた手も、繋がれる手も、涙を拭いてくれる手も。
それら、至と高き代価と引き換えの自由。
傷口に触れた沢山の手は、とてもとても優しい手。
その手が、傷口なんて塞がっていた事を教えてくれた。
痛みなんて消えていた。
弱虫の逃避行を、必死に自由と呼んでいた僕。
失くしたパズルのピース。
ほんの少し、不自由に耐えていた僕は、気付くと全てのピースが揃っている事を知る。
一つ一つを丁寧に組み合わせる。
そこには、本当の自由があった。
ずっと同じ場所にいても良くて。
もう捨てなくて良くて。
永遠の安らぎを知る。
掛けたピースの中には、足りない物が見当たらなかった。
やっとやっと安息の地を見つけた。
この場所が。
この心が僕だった。
諦めなかった。
いつか目指した桃源郷は、今、この手の中にある。
僕の総ての歴史に感謝と謝罪を。
ありがとうと、ごめんなさいを。
もう、泡のように消える希薄な僕は存在しない。
誰に取っても永遠でいられる僕が在ます。
だから、もしも嫌じゃなければ。
想い出。
怒り、哀しみ、楽しさ。
どんな形でも構わないんです。
貴方の永遠の何かとして、僕を胸の奥に置いてやってください。
『例えば誰かの』
例えば 誰かの歌うラブソング
例えば どこかで戦争が
例えば こんなラブレター
例えば そこにある奇跡
例えば 転んで泣いてる子供
例えば 傷つき歩けなくなった あいつ
例えば そっと触れてくれた優しい手の感触
例えば 彼の別れの電話
例えば 彼女が嗚咽した記憶
例えば 忘れえぬ人の想い出
例えば 人生を変えた映画
例えば君
例えば僕
それを形作る物は どこか同じ 例えばで出来ているんだね
『ある夜のBGM』
一つのラブストーリーがクランクアップした日
真っ白い雪の中 君の肩に雪が積もっていた
ジングルベルが鳴り響く街
ゆっくりと辺りを闇が包み込む
それでも君は 一等明るいネオンの下で僕を待つ
早く見つけてと いつものように微笑みながら
そこには行けないんだ
こうして見守る事しか出来ないんだ
僕が汚してしまった君が まるで洗われて行くかのように白く染まる
その傷は きっと癒えるから
ジングルベルが鳴り止んだ街
BGMは 遠くから聴こえる 君の泣き声だった
『同じ月を見てる』
どこかで君が膝を抱えて泣いている時
どこかで貴方が優しく微笑んでいる時
どこかで誰かが困難に立ち向かっている時
どこかで子供が道に迷っている時
どこかで友達が何も信じられないと叫んでいる時
どこかで恋人が寂しいと呟いている時
どこかで出会う総ての人々
ふと夜空を見上げれば 等しく同じ月光に照らされて
僕等は同じ月を見ている
これは主にNTRされてない幸せな時に書かれています。
すべてが恋人達に向けたラブレターのような物です。
外見はゴリラですが、心根は乙女なのです。