０３
ヴェルクリ万歳！
ショッピングも食べ歩きも、めっちゃ楽しいです。
『もう食べられないよぅ……』
寝言ではなく、お腹パンパンなチミコさんの切なくも幸せそうなつぶやき。
とっくに飛べなくなってますので、
ツェリアさんのお胸の安らぎスポットで、むにゅんとご休憩中。
「こんなにたくさんお買い物してしまうなんて、大丈夫なのでしょうか……」
心配ご無用、心底ご多幸。
今までツェリアさんたちには地味暮らしさせちゃってましたが、
カミコさん公認でリミッター解除された俺、
この覚醒シジマに全てお任せあれ！
これからはどんなことでも気兼ねなく、ですよ。
『太っ腹パラダイス！』
チミコさんは、もう少し自重してね。
『自重過剰も無礼講！』
……絶好調ですね。
では今日はチミコさんのリクエストにお応えして、
普段よりゴージャスでラグジュアリーなお宿にしてみましょうか。
「最近オープンした＂ベルモワール＂というお宿が、評判だそうですよ」
ほう、ベルモワール。
何だか名前からして高級感溢れる……
『あそこの街頭掲示板に、なんかあった！』
めざといですな、チミコさん。
なるほど、ポスターですか。
えーと、どれどれ……
『お客様のご満足の証しである笑顔こそがベルモワールの誇り』
『ＶＩＰ御用達の安全性と、趣向を凝らした料理が自慢のベルモワール』
『ヴェルクリ店オープン記念イベントは、新鋭パティシエによるスイーツの饗宴』
『ご家族、恋人同士、孤高の独身貴族、全ての皆様へ夢のように快適な体験を』
へえ、本店はエルサニア王都で、この街に出来たのが２号店。
建物の方は既に完成していたが、従業員育成に全力尽力。
そしていよいよ、高級宿激戦区ヴェルクリに満を持してオープン、ですか。
うむ、より上質の高級志向で真っ向勝負！
ってな感じの気合がビンビン伝わってくるポスターですな。
「お泊まりするのを躊躇してしまいます……」
いえいえ、こんな宣伝ポスターなんかでびびってはいけません。
実際に目で見て、がっつり体験することが肝要、
お宿の良し悪しは実際に泊まってナンボでしょ。
『入店拒否されるかも』
確かに俺はお偉いさん感なんてカケラも無いし、不審者っぷりも全開ですけど、
何の罪も無いいたいけな冒険者を第一印象だけで追い返すようなら、
相手がどんなに強大でも全力で闘うから。
『どうやって？』
えーと、ポスターに落書きしちゃう、とか……
『闘う前からレジスタンス！』
