夏は春の後に訪れるんです2
「つまりおにぃは異世界の勇者として生まれたんだけどいろいろあって異世界の魔王になっちゃったんだよぉ」
俺のかわいい妹は知る限りでわかりやすく説明してくれた。
俺が異世界の勇者で魔王だなんて・・・。全く記憶にない・・・が。
妹の話を聞いている最中に度々激しい頭痛が襲ってきていたので何かしらの力で思い出せないようになっているのだと感じた。三回くらい吐きかけた。
「ありがとう。雅。俺の事なんだかわかってきた気がするよ。俺は異世界の勇者で魔王になってしまった勇者ってことでいいんだよな?」
「そう言ったし、同じこと繰り返されるのむかつくんだけど」
「!!?」
「急に態度変わりすぎでは!!?」
俺は驚いたが、冷静に考えればそもそもこれいつもの雅なのだ。
でも今までしおらしかったのはいったい・・・?
「おにぃ~もすんなり受け取んなや。あ~つうかめんどくせえ。凛の人格まで呼べるようになったんだな。どうすっかな~これ。とりあえずそこの魔族を生き返らせとくか」
いつものと言ったがいつも以上に口が悪いし、凛とは一体誰の事なんだ・・・?
おそらく妹は二重人格なんだろうけど。
「それは違うぞ。多重人格者で凛は大魔法使いだ」
「ん?」
心を読まれた?気のせいか・・・。
「そうだよ読んでんだよおにぃ~」
目の前の雅がにやにやする。
「つまりお前は心が読める人格ってことか?」
「そうだけどちげ~よ。私じゃあ攻撃魔法が使えないんだなあ・・・。まあただ攻撃以外の魔法が神がかってると言うかよ~。まあ見とけや愚兄」
雅が箒で叩かれて起きる気配のない女に近づいて何かを唱える。
異世界語なのだろうか。何を言ってるのかさっぱりだ。
少しして倒れていた女が目を覚ます。
「どうだ凄いだろ」
誇らしげに小さい胸を張る俺のかわいい妹。
特に何かしらの演出があるわけでもなかったので本当に生き返ったのか怪しい。
「私は今まで死んでいたのか。早くくたばれおいぼれ聖女め」
倒れていた女の目は化け物のように赤く光っていた。
「嗚呼すまん。この箒。魔族特攻じゃったすまん軽く殴ったつもりじゃったが、死んでしもうていたか」
「心配には及ばない。なぜなら私が今から軽く貴様を殴り殺すからだ」
「殴り殺すということはわしにふれるということじゃな?本当にそんなことして大丈夫かの~?」
殺気だっている魔族の女?とロリばばあ?は今にも殺し合いを始めそうである。
よくわからないがとりあえず静止しようと思い、二人に割って入ろうと俺はする。
「まあ待ちなよ2人とも。冷静になって」
そう言ったつもりだったが2人には届かない。
何故なら気がつけば俺は自宅の目の前に立っていたからだ。
「まあこの際おにぃには全部教えてやるよ」
雅が俺の耳元でそう囁いた。
「雅がやったのか・・・?瞬間移動・・・?かこれ」
「そうだよおにぃ~。とりあえずおにぃの部屋まで行こうぜ~」
妹に手を取られ俺は帰宅した。