森に捨てられていたのは…
昼間釘を刺されたが、やはり森の中で子供が野垂れ死になるのは目覚めが悪い。これでも平和な日本で育ってきたので、罪のない子であれば話を聞いてあげようとする優しさはある。......自分でいうこともないと思うけど。
それにここで見棄てたら、人間として終わっているような気がして気分的に悪い。その辺は後の私の感情に任せるが、とりあえずは様子は見に行こう。人間の死体が自分の住処の近くにあるのは気持ちのいいものでもないし。
私はファフくんが見ていた方向を頼りに生命感知式の探索魔法を周囲にかける。すると男女5人の5歳~10歳くらいの子供が傷だらけで身を寄せ合っていた。
誰も彼もがやせ細っており、冷える外気で凍えないように体を震わせている。私はよく見えるように明かり代わりに使っていた火の魔石を彼らに向けた。
「――誰だッ!」
子供のリーダー各だろうか。プラチナブロンドの短髪が特徴なガタイのいい少年が子供たちを庇った。
「あなたたちこそ誰?人の住処に土足で踏み込んで......人の家に勝手に上がってはだめだと親から学ばなかった?」
「俺たちに親はいない」
「あら、そう。ま、その辺はどうでもいいとして。......とりあえずここで死なれるのは目覚めが悪いの。森の外まであなたたちを送り届けてあげるからついてきな......」
「嫌ッ!戻りたくない......!死にたくないッ」
森の外という言葉に反応するように、子供たちの一人が震え始める。よく見ると鉄の首輪が5人についていた。
「......あなたたち、奴隷ね。主の元から逃げ出したの?」
「主なんかいるものか!俺たちは奴隷商に村を襲われて売り飛ばされる最中だったんだ!」
「村中の子供が襲われて......逃げるときも何人もの仲間が殺された」
「こわい......こわいよぅ、助けてぇ…...」
なるほど。山賊崩れの奴隷商は小規模の村を襲って人を攫い売り飛ばすのだと、以前ハルトから聞いた気がする。カーバル皇国も奴隷がいるので、そこまで驚く話ではないのかも。ここに来た時の私からすれば卒倒したが。しかし、警戒心高いな~。リーダー格の子供以外私と目を合わせようとしない。
好意的にしても信じてもらえないだろう。
......。
「ここで放置して死なれても私の目覚めが悪いの。悪いけど、この森から出ていくか、私についてくるか、どちらか選びなさい」
子供たちは警戒した視線を私に向ける。奴隷商に村を襲われ、命からがら逃げた先に得体の知れない女に声を掛けらるのは警戒に値するだろうけど。でもここで好意を素直に見せたとして、人間不信になりかけている彼らには響かないような気がした。
死ぬなら死ぬでそれで構わないが、私の目の届かない場所で人知れず消えて欲しい。
「俺たちを助けてくれるのか?」
「さぁ?私はこんなところで死なれたら森が汚れるからあなたたちをとりあえず保護するだけ。助けだと思うのはあなたたち次第。さぁ、今ここで死ぬか、とりあえずは希望にかけてみるかはあなたたちが選びなさい」
これで断られてはしようがない。強制転移で森の外に追い出すだけだ。彼らが弱肉強食の世界でどれだけ生きられるか定かではないが。それも運命だろう。
答えはすぐに出た。
「いこう。ここで固まっても寒さと空腹で死ぬだけだ」
プラチナブロンドのリーダー格の子供が子供たちに動くように促す。膝を抱えてた子たちは恐る恐る顔を上げる。リーダーの言うことは素直に聞き、ゆっくりと立ち上がった。
「そ。じゃあ行くわよ。......ああ、動かないでいいわ。転移魔法で私の家まですぐだから」
......。