表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最強の大賢者♀は争い事に巻き込まれたくないので!英雄を無自覚に育てながらひっそりと暮らす  作者: 赤羽夕夜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/42

あれから十数年後の皇国

およそ数年前、皇帝の治世が変わる。前皇帝から現皇帝のハルトに代わり、皇妃はハルトの良人であり、皇国唯一の聖女となったミーユとなる。


ハルトとミーユは皇太子時代よりより贅沢に身を包むこととなる。ミーユは欲しいものを手にし、目ざわりな人間はなにかと難癖をつけ排除し、自分の耳障りのいいものだけを周りに置いた結果、政治は内側から腐りかけ始めていた。


彼女たちに諫言する貴族はもうこの皇国内にはいない。いるのは私服を肥し、税を増やし、民の暮らしにくい世の中を作る国にとってのがん細胞だった。


しかし、それは内部事情の話であって、皮だけみれば国の体裁は不思議と保っていた。皇国は魔法石が採取できる鉱山があり、金銭的にうるおい、商人が商いを行っているので、かろうじて経済が回っているからだった。


――民は不満を募らせ、商人は徐々に自分の商品の販売経路を他国へと移そうとしていた。


とにかく、皇国の情勢はよくなかった。カール、アールはその事実を知ることなく、皇国へ身を移すことになる。



「じゃあ、カール……俺はここで」

「ああ!……でも、一緒じゃなくていいのか?」

「うん……あんまり知らない人と喋るの、苦手だし。俺は俺で人の少ないところでこもって勉強するよ」


皇国につくと、アールは連絡を取りあっていた、ダレス商会の友人と落ち合った。途中まで同行していた、片割れに、アールは心配そうに声を掛けた。


カールはエミリアからもらった魔法石の図鑑を抱きしめる。不安だけど、自分が決めた道に進むために、ずっと連れ添ってきた片割れと別れる不安。でも、この先に未知の生活へのワクワク感。


赤面させて、本で顔を隠した。


アールは肩をすくめて口角を上げる。この頑固者にこれ以上言っても無駄だ。そして、強くなったことに嬉しく思うこともあった。


いつも自分の後ろを引っ付いてあるくか、エミリアの後ろにいて自分の意見をいわなかったカールが。確固たる意思を口にして、自分の道を決めるということに。


これ以上野暮なことは言えなくて。


「わかった。なにかあったら俺を訊ねろよ」

「うん。アールこそ。困ったら俺の家に来ていいよ」

「……ふっ。じゃあ、またな。俺はそろそろ商会に行くよ。明日から仕事だから準備しなくちゃ」

「うん。……じゃあ、またね」


アールはカールに背を向けて、友人の元に駆け寄る。カールもアールの背中を見送り、反対側の道に進む。これから宿を予約して、住む家を見つけなくては。


質素に暮らしていけば一生分暮らしていくことはできるし、いざとなればまたお金を稼げばいい。そのために術はもう持っているから。


カールも今日泊まる宿を探すために、人波を掻き分けていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ