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世界最強の大賢者♀は争い事に巻き込まれたくないので!英雄を無自覚に育てながらひっそりと暮らす  作者: 赤羽夕夜


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魔法石の勉強

ある日の夜も更けた頃。リビングで酒盛りをしているファフくんと、魔法石の調整をしている私を除いた子供たちは寝静まる時間。


今日はコンロに使っている火の魔石の調子が悪いので、原因解明と合わせて新しい魔石に取り換える作業の準備として、魔石に火魔法を込める作業をしていた。


すると、後ろから扉がゆっくりと開く音がするので、振り返ると本を片手に持ったカールが立っていた。カールは勉強熱心で夜遅くまで本を読む癖があるので、この時間にやってくるのは珍しくはなかった。


「姉さん、ちょっといい?」

「いいけど、どうしたの?」


顔色を伺う子供のように遠慮がちだが、頷くと、ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。ベッドと一人掛けの椅子しか座るところがない。その椅子も今は私が座っているので、必然的にベッドの上に座るカール。


魔法石に魔法を込める作業だけやってしまいたかったので、5分だけ待ってもらった。彼に向き直ると、本のとあるページを開いた。


本は魔法石学の本だった。そのページには魔法石の属性について書かれていた。


あ~、それ、間違った知識のやつだ。多分、私が教えたこととの食い違いを質問したかったのだろうか。返事を待つとやはり、予想範囲内の返答が帰ってきた。


「魔法石には火、水、風、土、光、闇の属性があって、色味や鉱石の採掘場所によって取れる鉱石や、込められる魔法に違いがある。例えば火属性の適正がある魔法石の場合、水、風、土属性は込められない。水、風、土、光、闇……も同様であるって書いてあるんだけど……姉さんがいってたことは違うかなって」

「たしかに、採掘場所によって取れる鉱石は違いあるし、鉱石によって込められる魔法には違いがある。けれど、例えば、火属性の適正がある魔法石に他の属性魔法が込められないわけじゃない。ただ、込め方次第でもあるし、適正外の魔法を込めると魔法の威力や発動に影響がでちゃうけど。さらに言えば、鉱石の適正魔法と違う属性魔法を込めると魔力の変質が起きるの。……試しにやってみましょう」


丁度よかったので、机の引き出しに閉まっていった魔力を込める前の翡翠を取り出す。以前アールたちに街で買ってきてもらったものだ。翡翠は風属性の魔法の適正を持つといわれる原石であり、魔力が込められた魔法石は高値で取引されている。


宝石や鉱石に魔法を込めることで魔法石となる。原石となれば、魔力を込められる人間は皇国や王国ではまだまだ少ないので、安値で取引される。


これは原石だ。


「風魔法の石には風属性しか込められない。でも、込め方によっては魔法は込められる。まずは大気中にある魔素を宝石に吸収させるように、操作をする」

「魔力じゃなくて魔素を取り込ませるの?天然の魔法石ならともかく、それじゃあ魔法石にならないんじゃ?」

体に吸収される魔素を磁石をイメージして引きはがす。その引きはがした行き場の失った魔素を体の中に変換された魔力でうまく操作をして宝石に取り込ませる。


「魔素は魔力の力の元。純粋な力だから。属性魔法の魔力に変換させる前のものを取り込ませることで、単純に力が宿る宝石になる。たしかに属性魔法に適応するように変換された魔力であれば、翡翠は風魔法が適正になる。けれど……宝石に取り込ませた純粋な魔素を、取り込ませた状態で属性を変質させる……そうね。風だから、わかりやすく水、にしようか」


宝石に込められた魔素と魔力回路をつなぐ。宝石から流れる魔素を魔力回路を使って魔力へと変化させて、属性をそのまま変化させる。――すると、翡翠の色が青へと変質を遂げる。


「これ...…は?翡翠の色じゃない……魔法石の色味ではあるけど、風属性の魔法石の魔力が感じられない。でも水属性の魔力を注いだはずなのに、水属性じゃない……」

「風属性の魔法石に水属性の魔力を込めると氷属性になる。氷属性が水と風の魔力が変質した魔法なのはわかるでしょ?」

「――そうか!……魔法石に魔力を込める場合、適正の魔力しか込められないけど、魔素を取り込んだ鉱石の純粋な魔素だけを内側で魔力変換すれば問題なく変換できるわけか……!すごい……」

「でしょ?私もこれに気づいた時には驚いた。ま、でも、そもそも魔素の認識自体私と外で違いがあるからねぇ」

「これ……すごい発見だと思うんだけど、本とか書いたりしないの?」


それはまったく考えてなかった。どうせ死なないし、教える人もいないと思ってたから。それに死者蘇生にたどり着いただけで世界の神とやらに呪いを掛けられたのに。本なんて書いて自分が研究してきたことを知識として残した日にはさらに事態が悪化しそう。


……それに決めたのだ。私は皇国が繁栄するような知識を書き記しておかないと。私は自分や周りが苦労しなければそれでいいし。


というと、なんか幻滅されそうだから、適当に本音混じりの誤魔化いれとこ。

「ん~本書くのとか興味ないんだよね。それにそんな凄い発見とか思ってないし。より良い生活に使えればそれでいいって思ってるからね」


というと、カールはそれ以上なにもいうことなく、そっかと返す。


「姉さんがいいならそれでいいや。……姉さんの発見が僕たちしか知らないって思うと……特別感があっていいし」

「~~!もう!このこったら急にデレを見せるなんて!可愛い!抱きしめちゃうッ!」

「……むぐッ、姉さん苦しい……」


可愛いこと抜かすので胸いっぱいにカールを抱きしめて挙げる。ふわふわのブロンドが鼻を擽る。くしゃみ出そう。


カールと言えば、身じろぎはするけど、抱きしめられることに対しては嫌ではなさそう。


窓辺から月明かりが指す。もうそろそろ寝ないと明日以降に支障がでそう。子供たちも寝かせないと。手に握っていた氷の魔石をカールの手の上に載せる。

「その氷魔法の魔法石はカールにあげるよ。魔法石は腐るほどあるし」

「いいの…...?」

「いいよ。いつでも作れるし。だから今日はもう寝よ」

「うん......。ありがとう。魔法石大切にするから」


カールは魔法石を大切そうに抱える。本を忘れそうだったので、渡してあげると恥ずかしそうに顔を伏せた。子供ってどうしてこう可愛い反応をとるのだろう。もしかしたらうちの子だけかもしれないけど。


......もしかして、私って子煩悩なんだろうか。


小さな背中を見送ると本格的に眠くなったので、ベッドに横になった。


......あ、枝毛がある。

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