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世界最強の大賢者♀は争い事に巻き込まれたくないので!英雄を無自覚に育てながらひっそりと暮らす  作者: 赤羽夕夜


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成長魔法

あの伝説の邪竜!ファフニールことファフくんが魔法の制御や常識を教えてくれたおかげで、人の世界に出しても恥ずかしくない程度に子供たちは魔法が使えるようになった。


一般的な読み書き、問題がない程度の算術を身に着けた。彼らが来て3年半経過した頃だった。13、14になる子供たちの体。男たちは拾った時は私の身長の頭1つ分、2つ分小さかったのに、今では身長を抜かされた。


子供の成長って早いな。子供を育てる母親はこんな時間の流れの早さを感じながら、子供たちを見守っていたのだろうか。森で泣いていた頃が懐かしい。


ファフくんもファフくんで、屋敷に住み始めて2年ちょっと。たまに元の姿に戻る為に本来の寝床に帰っているけど、いつもは子供に魔法や戦術を教えた後は、作ったお酒を1日中飲み続ける日々。......飲んだくれのおやじのような日常なのは気にしないでおく。だって邪竜だし。


とまぁ......子供の吸収力は早くて、勉強はもう私が教えられることはなかった。必要最低限は教えたし、勉強に根を詰めすぎるのもあれなので。後は子供たちの勉強意欲に任せよう。


教えて欲しいことがあればそれに応じて教えるし。やりたいことがあればやらせてあげよう。もう彼らとの約束の5年はもうすぐなのだから。


とあの頃の日々を懐かしんでいると、耳端からパンチが風を切る音や拳や足がぶつかる鋭い音が聞こえた。......ファフくんとレオンが手合わせをしているのだろう。


お酒の仕込みも今日の晩御飯の仕込みも終ったし、ちょっと気になるから様子を見に行こ。


厨房から勝手口にでて中庭に行くと、傷だらけで悔しそうな表情を浮かべるレオンが、拳で顔についた靴跡を拭っていた。ファフくんは涼し気な顔で、高くあげていた足をゆっくりとおろした。


「おまえの攻撃は素直過ぎる。殴る構えをしたからといって、殴るわけではない。魔法発動の動作をしたからといって魔法を使うわけではない。相手の動作を素直に信じるな。二手三手、相手がどういう動きをするのか予測して動くことも大切だ」

「はい!師匠!もう一度お願いします!」

「フ......師匠か。良い響きだな。ほら、もう一回やるぞ。立て」


真剣にアドバイスを送るファフくんに、息を切らしながらもアドバイスを受け取るレオン。それは師匠と弟子の図だった。

最初はどうなるかと思ったけど、レオンたちと打ち解けられてよかったね。ちょっと茶々いれようと思ったけど、本気でやっているところの邪魔をしちゃ悪いし、カールたちの様子を見にいこう......としたけど。こっちもファフくんの分身体が授業を行っていた。


......いや、任せたのは私だけど、今日はヤケに私ってば孤立してない?ちょっと寂しさを感じつつ、仕方ないので、農園で野菜の収穫をしようとそちらへ向かうことにした。



「レイナ?お勉強終ったの?」

「お姉ちゃん......うん。もう基礎の授業は終りだって。自由時間になったから......成長魔法の練習をしてるの」

収穫の道具の準備をして向かうとレイナがトマトを育てている畑の一角に座っていた。その下には今しがた成長魔法で育てたトマトがみずみずしく鮮やかな赤い実をつけていた。


さすが、5人の中でも成長魔法が得意なだけある。植物に成長魔法を使わせれば5人の中でも一番上手だ。栄養不足、過多を起こしていないし、周辺の土にも影響を与えていない。


成長魔法を植物に使うと、対象の植物を中心として、その辺一体の土の栄養が不足してしまう。そうなると土は干からびて作物が育たない土地になってしまうのだ。


その被害を失くさずに成長魔法を使うのは中々難しい。その調整がこの年でできるのは大したものだ。ま!私の場合は指先ひとつで出来てしまうけどね!


レイナは私に気づくと顔を挙げて挨拶をしてまた顔を伏せてしまう。横顔からなにか思い悩んでいるようで表情は暗い。

「トマトも綺麗に育っているのに、なにを思い悩んでいるの?」

「トマト......綺麗に育ってるんだけど......1株しか育てられなくて。同時にいくつものトマトを成長魔法で一気に育てたいんだけど、周辺の土にも影響でちゃうから......難しくて」

「え?そんなの簡単じゃん」

「え?」


意外に簡単に解決することで思い悩んでいたのでよかった。簡単な解決方法ならいますぐにでも実践できるから。私は転移魔法で倉庫にある肥料を出現させる。トマト畑の空いているところに適当にばらまいて、トマトの種を植える。


「いいよ。ここに成長魔法使って」

「でも......」

「いいから。もし全部枯れたとしても、また元に戻せば大丈夫だし。被害が出る様ならその前に野菜たちを避難させるから。ほら、早く」

「うん、......わかった」


魔法を使うように促し、レイナは肥料を蒔いたトマト畑へ向けて魔力を集中させた。成長魔法が発動し、種が発芽し、茎は伸びて、今しがた蒔いたトマトの種は立派な実をつけた。


「えっ............!トマトが枯れてない!なんで」

「土の養分を一気に吸収して身をつけるなら、その吸収する土の養分を用意すればいいのよ。ほら、今蒔いた土を見て」

「あっ......干からびてる。泥みたいに湿っていたのに。砂みたい......」

「魔法で足りない養分ならその分、現物で調整すればいいの。植物に成長魔法を使う場合は覚えておくといいよ」

「――うん!ありがとう!お姉ちゃん」

「よし。感覚忘れないうちに、新しい野菜の種を植えるから育てるの手伝ってくれる?冬に育つ野菜を植えるから、氷魔法とかつかって温度調節しながら成長魔法使うから」

「わかった!成長魔法をかければいいのね!」


問題が解決してすっかり明るい表情を取り戻したレイナは空になった麻袋を持ってくれ、軽い足取りで私の後をついてくる。


この後、無事、野菜を収穫し終えた私たちは泥だらけになりながら野菜を持って家に戻った。料理も学びたいようだったから、まずは簡単なものから教えることにした。

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