【閑話】仕事終わりの一杯
「んぐっんぐっ......ぷはッ!このビールというのはしゅわっとした舌触りと喉まで広がる苦みがたまらんな!このサラミとかいうのも塩分が酒と合う。今までもらった酒の中で好みの部類に入る」
「そうでしょ?発泡酒だからファフくんのところに持っていく頃には炭酸が抜けて美味しくないんだよね~。やっぱ入れたてが美味しいのよ」
ビールを作るための専用器具を使ってなんとか再現してみたが、お気に召したようで何よりだ。魔法の練習を終えてかえってきた子供たちはボロボロな様子で。今はお風呂に入っている。
魔法で身綺麗にしたファフくんは、一足先に晩酌を楽しんでいる。
私はというと、子供たちのご飯の準備のためにビーフシチューを拵えていた。お肉は子供たちが王都で買ってきたミノタウロスの亜種の肉。牛肉と同じ味がするけど、穀物牛のように臭みがあるから、シチューに混ぜてスープまで臭くならないようにきちんと臭みを抜いている。
今日のシチューは自信がある。
「そんなにそのスープはうまいのか?」
「また私の心を読んだの?......味見してみる?」
ファフくんが頷いたので、小皿を食器棚から取り出して具と汁をちょこっとだけのせて差し出す。くんっとシチューの匂いを確かめると、ファフくんはシチューを嚥下した。
「どう?」
「......うまい。野菜と果実の風味、肉の豊かな香りがたまらん。......魔法もそうだが、酒作りも料理もできるって......おまえ、意外になんでもできすぎないか?」
「ええ~そこまで褒められても~。出るのはシチューのおかわりくらいだよ?」
褒められるなんて久しぶり。この世界に来て色々忙しかったし、人間関係の構築は苦手な方だったし。......あれ、というか、褒められるなんて前の世界振りじゃん。
そう思うとなんだかにやけが止まらない。それに気づいたファフくんは意地悪い笑みを浮かべた。
「だったらもっと褒めてやろうか?」
「食べるなら用意するからやめて。恥ずかしくなるから」
顔が熱い。鍋の方を向いて気持ちを紛らわせるように、鍋をかき回す。
なんか薄い笑い声が聞こえるが、気にすると余計恥ずかしくなるから無視だ。
......お風呂場の方から子供たちの賑やかな声が聞こえてきたので、彼らが食べれるように7人分のシチューとパンをテーブルの上に並べた。
ファフくんのはちょっとお肉多くしたげよ。




