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80. 問題児は出自を誤魔化す

 しかし面倒なことになったな。

 ライエンの顔を見るに、『ただ単に気になった』程度なのが不幸中の幸いか。


 変な事さえ言わなければ、何とか切り抜けれそうだ。

 強いて問題点を挙げるとすれば、亜人領の地名なんてほとんど知らないという事だろう。



 ……いや、致命的な問題だな。

 せめてアイオライト領のどっかにしておけば、なんとかなるかも知らんな。

 領主はアリシャの密入国を手伝ってくれたそうだし、おそらく味方と見て間違いない。


 色々あり過ぎて後回しにしていたが、真っ先に経歴を作っとくべきだった。


「実はアイオライト領の生まれでな」

「ふむ、意外だな。ロズウィリアは常識が欠如しているから、てっきり田舎の出かと……」

「おい、さすがに常識は持ち合わせているぞ」


 たしかに()()()の文化やら風習にはうといが、そこまで言われる筋合いはない。


 ――はずなのだが、フレイヤとミーリヤの視線がなんだか痛い。


「常識ねぇ?」

「あ、あはは……」


 筋合いはない……よな?


「まあロズウィリアの非常識は今に始まったことではない。それで具体的にはどこら辺なんだ?」


 さも俺が、昔から常識がないみたいに言うのは辞めて欲しい。


「具体的って?」

「アイオライト領だけでは広すぎるだろう」

「まぁ、たしかにそうだな」


 先ほどから適当に会話しつつ記憶を探っていたのだが、細かい地名がどうも思い出せない。


 が、もちろん秘策ならある。


 俺はこっそりフレイヤに目配せをする。

 若干不思議そうに見返してきているが、すぐこちらの意図に気付いてくれるだろう。


「実は北の方でな」

「ほう、北か」

「そうだ。北だ」


 もう一度フレイヤを見る。

 すると彼女は小さく目を見開いた。


「北というと、もしかしてラクス……だったり?」

「おお! さすがフレイヤだ! よく分かったな!」


 作戦成功である。

 ちゃんと伝わったみたいで助かった。


「ラクスなら私も行ったことがあるぞ。ガレイ湖で獲れるリーフフィッシュの味は今でも覚えている」


 なるほど、『ラクス』とやらでは『リーフフィッシュ』と言う奴が特産品なのか。


「だろう? 俺も大好物でな。そりゃもう慣れ親しんだ故郷の味って奴だ」


 この調子で行けば上手く誤魔化せるかもしれない。


 なんて一瞬思った時だ。

 ライエンが首を捻りながらたずねてきた。


「慣れ親しんだ……? ロズウィリアはリーフフィッシュを普段から食べていたのか?」

「なにか問題でも?」


 最初に『リーフフィッシュ』という単語を出してきたのは向こうだし、食べれない物、という訳でもないだろう。

 まさか引っ掛けとして発言したとも思えない。


「いや、問題という程でもないんだが少々驚いてな。ただ者でないとは思っていたが……」


 嫌な予感がするな。



 いや待てよ、『リーフフィッシュ』……?


 なんか聞き覚えがあるな。

 そういやガレイ湖なんて名前もどこかで……。


 ふと視界にミーリヤが入る。


「……あー、ふーん」


 彼女たちと初めて会った際、出してもらった料理の中にあったのを思い出した。


 ということは、だ。

 これは俺の予想だが、『リーフフィッシュ』は高級食材なのかもしれない。

 てか十中八九そうだ。


「ま、まぁ詮索しないで貰えると助かる」

「すまない、これは失礼した。普段の振る舞いのせいで勘違いしていたが、ロズウィリアも大変な思いをして来たのだな」


 なんか良い感じに勘違いしてくれたっぽい……のか?。

 これはあれか、話の流れ的に没落貴族の人間とでも思われていそうだ。


 もはや事実とは真逆と言っていいほどかけ離れているが、なんとかうやむやに出来るかもしれない。


 いやー、今日はツイてるなー。


「突然不躾な質問をしてすまなかった。もう本題に戻ってくれて構わない」

「なんだそりゃ」

「もう忘れたのか? 貴様が剣舞けんぶを扱える理由の話だ」


 そういや元々はそんな話だったか。

 やっぱ厄日だな。


「それは、だな……」


 適当に練習秘話的なものを捏造してしまおう。

 なんて事を考えていた時だった。


「ご主人さま。やっと見つけました」

「ん?」


 後ろから声を掛けられ振り返ると、テルラがいつのまにか立っていた。

 全く気付かなかったな。


「あの、大変不躾なお願いなのですが、少しお時間を頂けませんか?」

「……? 俺は別に構わないが」


 そう言いながらもう一度正面を向く。


「わたしたちの事なら気にしないで」

「ですです!」

「ライエンだってもちろん気にしてないわ」

「あ、あぁ……」


 ミーリヤが無理やり話をまとめた気がしなくもないが、これは思わぬ助け舟だ。


「悪いな。ちょっと行ってくる」

「ええ、いってらっしゃい」


 俺は彼女たちに一言詫びるとテルラに視線を戻す。


「ということだ」

「本当に申し訳御座いません。ありがとうございます」


 そこまで畏まることも無いと思うんだが。

 いや、彼女はいつもこんな感じだったか。

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