79. 問題児は追い詰められる
「やりましたね!」
「最後の魔法、完璧すぎてビビったぞ」
「えへへ……」
フレイヤは満面の笑みで俺の手を握って来る。
「これも全部レイシスさんのおかげですっ――!」
「お、おう……」
どちらかと言えば、フレイヤが天才だっただけな気もするが。
まぁ俺の考えを伝えたところで、聞き入れてくれそうな雰囲気じゃない。
「ずいぶん仲良くなったわねー」
「ずいぶん仲良くなったな……」
いつの間にか近くまで来ていたミーリヤとライエン。
俺を見る目はどちらも不服そうだ。
フレイヤに好意を抱いているライエンはまだ分かるが、なんでミーリヤにまで白目を向けられてるんだ。
「二人ともお疲れ様。結構手ごわくて焦ったぞ」
「焦った、ねぇ?」
「相変わらず貴様はデタラメしか言わないようだな」
「えぇ……」
まったく信用されていなかった。
「でも最後ライエンにカウンターを決められた時、割とマジで驚いたんだぞ?」
「あれはたまたまだ。意識してやっていないからな」
無意識であれをやったんなら、なおさら凄いことだ。
魔術士同士の戦いなんて、突き詰めればどれだけ無意識レベルで戦えるかの競い合いだからな。
というかいちいち意識してたら間に合わん。
「ミーリヤも凄かったな。あんだけ魔法を連射できる学生なんて、そうそういないんじゃないか?」
「その魔法を全部かわして切り伏せたのはどこの誰よ」
今日の俺は、なぜこんなに責められているんだろうか。
「――って待て、フレイヤだってお前の魔法を撃ち落としただろ」
「それはそうだけど、レイの方が何倍も異常じゃない」
「異常? どこが?」
「ロズウィリア、まさか自分のしたことが分かっていないのか?」
またもジト目で見返してくる二人。
やはり頼れるのは彼女しかいない。
「なぁ、フレイヤ」
「レ、レイシスさんらしいと思いますよ……?」
ふむ。
どうやら俺が勘違いしていただけで、仲間はいなかったらしい。
しかしそうなると、こうまで言われる理由が本当に分からない。
使った魔法はかなり制限したし、高度な技術も無詠唱ぐらいだ。
本当は無詠唱も使いたくなかったが、さすがにそこまで手を抜くのは難しい。
初戦ならまだしも、他の試合はどれもレベルが高かったからな。
「その顔、本当に分かっていなさそうね……」
「一通り振り返ってみたが、やっぱり異常は見当たらないな」
「はぁ……」
「我々が言いたいのは貴様が見せた剣舞のことだ。あんな物、異常以外の何者でもないだろう」
「なんだそれ、初耳だぞ」
剣舞って言うと……双剣で魔法をいなしたアレか?
セレーナの技を真似ただけのお粗末な物だぞ。
それに彼女だって、亜人領では割とポピュラーな剣術だと……。
ポピュラーな……剣術だと……。
いや待てよ。
「剣舞って言うのは、遠い昔に存在していたとされる剣術の名前なんです。初代エーリュスフィア国王が使っていたことで有名ですね」
「うむ、その通りだ。まあおとぎ話ではあるがな」
「……ほーん」
完全に失念していた……。
脳内ファンタジーまみれであるアイツの話を、真面目に信じた俺が馬鹿だった。
さて、どう誤魔化したものか。
「実は、だな」
「なによ?」
若干食い気味に近づいて来るミーリヤ。
「話せば長くなるぞ」
「別に構わないわよ。今日はもう、なにも予定がないんだし。レイだってそうでしょう?」
たしかにその通りだ。
この後予定なんて入れてないし、本選も明日からである。
完全に手詰まりだな。
仕方ない、適当に考えるか。
「あれはまだ、俺が小さかった頃の話だ」
「そういえばレイシスさんの昔の話って、初めて聞くかもしれません」
「あ、たしかに」
そりゃ秘匿情報である事を抜きにしても、出来れば話したくないからな。
まぁ今から話す内容はほとんど作り話になるだろうが。
俺はサクっと中身を考え、説明を始めようとする。
だがライエンは何か言いたげな顔をしていた。
「どうかしたのか?」
「すまないが、最初に少し質問してもいいだろうか」
「おう、別に構わんぞ」
「前々から疑問だったのだが、ロズウィリアはどこの生まれなのだ?」
その言葉を聞き、表情が固まる残りの三名。
あれでも彼は騎士団の関係者なんだぞ。
本当のことを言えるわけがない。




