75. 問題児は優等生とやり合う 1
睨み合う両者。
こうなるのは予想通りだったとはいえ、やはり新鮮な気分だ。
「やって参りました! Aブロック予選の最終戦!」
亜人領に来てから、それなりに付き合いのある相手だ。
こうして正面から戦う機会なんて滅多にないし、どんな手を使ってくるのか楽しみである。
「今回はまさかの姉妹対決、ライバル対決です! 意中のペア相手を射止めるのは一体どっちだ!」
……ふむ。
「フレイヤ、さっさと終わらせてあの女を絞めに行くぞ」
「あ、あはは……」
デタラメばっか言いやがって、変な噂が広まったらどうすんだ。
ただでさえフレイヤは男子生徒からの人気が高いんだぞ。
そんな奴らに冤罪を吹っ掛けられる、俺の身にもなって欲しい。
「ロズウィリア! 私は譲る気はないぞ!」
「お、おう?」
理由は知らんが、今日のライエンはだいぶ気合が入ってるな。
「たとえ貴様の退学が掛かっていたとしても、射止めるのは私だと言っているのだ!」
「……はい?」
まさかルカのお遊びを本気で受け止めてるんじゃ……。
思わずそう指摘しかけたが、俺が口を開く前にライエンは頭を叩かれていた。
「ちょっと! なに変なことを言ってるのよ!」
「ま、待て! 私はフレイヤ様を想って発言したのであって……!」
しれっととんでもない事を漏らしてんぞ。
あ、また叩かれた。
「ぐぅ――! なぜまた叩いたのだ!」
「わたしは微塵も悔しくないのだけれど、なんとなくムカついたからよ!」
その後もしばらくの間、彼らの口論を眺めていたのだが、とうとうルカの説明が終わったらしい。
「それでは見どころたっぷり間違いなしの戦いまで! 3……2……1……」
さて、試合の時間だ。
「フレイヤ。まずは打ち合わせ通り、初戦と同じ方法で様子見するぞ」
「はい、任せてください!」
「……0! 恋の戦がいま始まる!」
ルカのふざけた合図を皮切りに、俺とフレイヤは魔法を呼び出す。
「――!」
生み出された石片の嵐は、ライエンたちに向かってすぐ撃ち出された。
初戦とまったく同じ光景だ。
どう対処してくるか見物――。
「――ってうわ! きったねえ!」
まるで石片の壁にぶつけるかのように、突然現れた光の壁がすべてを防ぎ切った。
「うおおおお!? なんだあの魔法は!?」
「すげえ! あんなの見たことねえぞ!?」
観客席から挙がる声はもっともだ。
あれは対広域魔法の《"ホーリー・ファランクス"》だが……。
「いくらルール上問題ないとはいえ、ちょっとくらい自重しろよ……」
それ、一応軍用魔法だぞ……。
たしかに殺傷力はないからセーフだと思うが、学校行事で使うような魔法じゃない。
ハッキリ言って反則一歩手前だ。
「だから言っただろう! 譲る気はないと――!」
次に無詠唱で使ってきたのは《"ホーリー・スピア"》。
さすがは騎士団の訓練を受けてただけの事はある。
魔法の使用速度が実戦級だ。
しかも向こうの攻撃は《"ホーリー・スピア"》だけじゃない。
ミーリヤが重ねて放った《"弾丸射出"》も混ざっている。
俺たちが今さっき使った魔法と比べると数は圧倒的に少ない。
が、勝負を決めるには十分すぎる弾幕だ。
戦う前はあれだけケンカしてたのに、何だかんだ連携は取れてるらしい。
「面白くなってきたな――」
フレイヤはすでに魔法で木々を生やし始めており、なんとか防ごうと試みている。
だがあの数だ。
正直守り切れるか怪しい。
それにライエンはこちらの攻撃を完封して見せた。
どうせなら同じ手でやり返してやろう。
「まぁ軍用魔法なんて大層なものは使わないが」
俺は全域を見渡しながら《"フロスト・スピア"》を次々に使用。
標的は敵の魔法、もちろん全部だ。
ふむ、さながら氷の雨だな。
「えっ、ちょっ!? ――はぁ!?」
目を見開くミーリヤをよそに、文字通りの全弾相殺。
続いて《"フレア・ブレード"》を手元に生成し、疾風の書で一気に距離を詰める。
そのままペンダントを割ろうとしたのだが、寸前でライエンに受け止められてしまった。
「くっ――!」
あちらは光の剣、か。
相変わらず魔法の発動が早いな。
その後、しばらくお互いの魔剣を打ち付け合っていたのだが、不意に鍔迫り合いの形に入った。
「いい反応速度だったぞ」
「貴様というやつ……は! 本当に無茶苦茶な男……だな……!」
最初は色々あったが、なんとか望んだ配置を作り出せた。
ここからが本番だ。




