表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/176

63. 問題児が寝ていた頃 1

 エーリュスフィア王国、アイオライト領、シトリス。


 古くから存在する町でありながら、治安が安定しているためスラム街もない。

 加えてとても(にぎ)やかな町である。



 だが商業区画では話が少し変わって来る。

 そのうえ深夜ともなれば、住居が少ない事も相まって、人気(ひとけ)がまったく無いのも仕方のない事だった。


「"――繰り返します。第三馬車より『パッケージ』が持ち出されました。付近の団員は至急回収にあたってください"」


 数刻前から拡散され続けている《"魔導通信(マギ・テレパス)"》。

 受け取っている者はひとりの例外もなく、静まり返った町を駆け回っていた。


 が、とある二人組だけは、今まさに足を止めたところだった。


 彼らの前に立っているのは一人のフード姿。

 性別はおろか、種族すら(うかが)い知れない。


「ふむ、やはりこのルートを使ったか」

「団長、まずは自分が」


 そう宣言した金髪の男は、腰から剣を抜くと正面で構える。

 この国では見かけない、細身で奇抜な見た目の武器だ。


「――《"ホーリー・エンハンス"》」


 淡い光を帯び始める剣。


 同時に驚くべき速さで踏み込み、()との距離を一気に詰める。

 身体能力の高い、猫耳族だからこそ成せる技だろう。


「――――!」


 高速で振り抜かれた剣が当たる瞬間、()は素早く取り出した短剣で受け止めた。

 火花が散り、甲高い音が路地裏に響き渡る。


「まだだ!」


 彼は叫びながらもう一度剣を振るう。

 さらに左手から光の刃を生成し、両脇から一斉に攻撃を仕掛けた。


 しかし最速の攻撃はまたも防がれる。


「なんだと!?」


 驚くのも無理はない。


 彼の魔法を絡めた剣術は自他ともに認める速さを誇り、エーリュスフィア騎士団の中でも追いつける者はごく一部しかいない。


 そのごく一部とは例えばそう、つい先ほど団長と呼ばれたエルフの男だ。

 彼はすでに()の背後に回り込んでおり、魔法陣とともに右手を振りかぶっていた。


 その手に添えられているのは新緑色のオーラ。

 剣の形を模した魔力の塊である。



 挟まれた上でこの速度。

 今度こそ避けるのは不可能なことくらい、誰が見ても明白だった。


 しかし――。


「ほう……」


 エルフの男は感心したように(うな)る。


 それは明らかに斬撃が当たっていたにもかかわらず、気付いた頃には()がその場にいなかったからだ。

 見る者によっては、まるで瞬間移動したように錯覚するだろう。


「団長、今のは一体?」

「体術ということはあるまい。おそらく確認されていない継承魔法の(たぐい)、ではなかろうか」

「なるほど、厄介ですね……」


 相手の魔法が分からない。

 それは次の行動が読めないということであり、脅威足りえるには十分すぎる要素。


 だが手がかりが無いわけでもない。


 あれだけの移動手段を有しながら、()は逃げることなく睨み合っている。

 それは瞬間移動できる距離に制限があることの証明だった。


「とりあえず今は足止めに集中するとしよう。応援はもう呼んであるのだろう?」

「はい。接敵時に《"魔導通信(マギ・テレパス)"》にて招集は掛けてあります」

「流石、『雷速』と呼ばれるだけはあるな」

「こんな時に茶化すのは辞めてください……」


 猫耳族の彼は、騎士団内で『雷速』の異名で呼ばれていた。


 だがそれは剣術の速さに対し、与えられたものに過ぎない。

 茶化された、そう取ってしまったのも無理はないだろう。


「他の団員が合流するまでしばらく掛かると思われますが、『精霊剣』は使用されますか?」

「いや、ここは市街地だ。あの魔法では被害を抑えるのは難しい」

「了解致しました」


 その言葉を合図に二人は武器を構えなおすと、敵を視界の中心に捕らえた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ