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56. 問題児は考察する

 彼の父はエーリュスフィア騎士団の中隊長である。

 そのため貴族の中でも位が高く、また騎士養成所に通っていた経歴を持ち……。


 面倒になってきたな。


 要するにライエンってのはアレだ。


「ミーリヤと組む理由が見当たらない」


 まさかフレイヤと見た目が似ているから、なんてわけでもないだろう。


「ほら、フレイヤが誘拐された事件を覚えてる?」


 うなずいて返す。

 当事者のひとりなのだから忘れるはずもない。


「ライエンが凄く謙遜してたでしょ? その姿勢にお父様がひどく気に入ったらしいのよね」

「なるほど、大人の都合というやつか」

「そういうこと」


 端的に言えばお見合いの一環、ということだろうか。

 彼女はこれでも長女だ。


「にしても不憫なやつだな。よりにもよってミーリヤと、か……」

「それどういう意味よ?」

「あーいや、言い方が悪かったな」


 これでは誤解されても文句は言えない。


 だがライエンがフレイヤに好意を寄せている、なんて口にするわけにもいかないだろう。


 人の秘密をペラペラしゃべるような趣味は持ち合わせていない。


「べつにミーリヤがハズレって意味じゃないぞ」

「はい?」


 訝し気に睨まれた。

 一応フォローしておくか。


「少なくとも俺はミーリヤと組めたら嬉しかったからな」


 彼女は黒の書が得意という話だし、戦力はかなりのものだろう。

 それにある程度お互いを知っているわけだし連携も取りやすい。


「その……わたしだってレイと組みたかったのよ……?」

「奇遇だな。そっちも同じ考えだったのか」


 ミーリヤも本気で勝ちを狙っていたのか。

 俺は優勝を取らなければいけない以上、彼女と戦うことも考えられる。


 どうやら気を引き締める必要がありそうだ。


「――ってレイも同じ考えだったの!?」


 急に迫られたため思わず顔を見る。


「お前、なんでそんな顔が赤いんだ。熱か?」

「それはレイが……」

「俺が?」


 続く言葉を待つが彼女は固まったままだ。


 やがて数秒ほど待っただろうか。


「――いまアンタの顔を見て理解したわ。…………はぁ」


 なんだその露骨なため息。

 すかさず文句を言おうとしたのだが、不意にミーリヤが立ち上がる。


「もういいわ……。わたしはフレイヤに少し用があるから」


 そう言うや否や、彼女は教室の端で談笑しているフレイヤの元へ行ってしまった。


「なんであんなに不機嫌なんだ」

「今のはレイシス様がすべて悪いと思いますわ……」

「ふむ……」


 やはり今日のアリシャは冷たいな。



----



「それはレイシスさまが悪いかと……」

「…………」


 授業が終わり寮に帰った俺は、テルラに今日の出来事を話していた。

 が、結果は見てのとおりである。


「クラス対抗戦は名物イベントなんだろ? 勝ち以外になにを望むんだ」


 『名物』と言えば聞こえはいいが、これは実質品定めの場だ。

 なんせシトリス魔法学院は優秀な生徒だけでなく、貴族の人間もかなりいる。

 必然的に見に来る人間もその縁者ということになる。



 魔術士としての能力は遺伝するというのが通説だ。

 優秀な遺伝子を家系に取り込みたいと考えるのは自然な流れだろう。


「いや待てよ、そういう事だったのか……」


 やっと理解できた。


「クラス対抗戦は魔術士として優秀であることを、周囲に広める意味合いもあるのか」


 つまりアピールの場。

 無能な生徒である俺と組めば、ミーリヤの能力も際立つというものだろう。


 こう言うと聞こえは悪いが、責める気はまったくない。

 彼女はこれから家を背負うことになるのだし当然の行動だ。


 むしろ今のうちから意識しているのは、素晴らしい心がけとさえ思う。


「テルラ、話を聞いてくれて助かっ――」


 なぜかジト目で見られていた。


「――テルラ?」

「レイシスさま、もしやクラス対抗戦にまつわる噂をご存じないのですか?」

「なんだそれは」

「『ペアを組み、優勝した男女は結ばれる』という物です」

「それ、根拠はあるのか?」

「ありませんね。ただのジンクスですので」

「ふむ……」


 リサーチ不足だった。


「で、その噂となんの関係があるんだ?」

「……やはりレイシスさまがすべて悪いですね」


 それ以降、彼女は夕飯の支度をすると言い出し話すら聞いてくれなくなった。

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