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52. 問題児は一人になる

「あ、見て見て! この貝殻キレイじゃない?」

「ほーん」


 白浜で横になったいた俺は、ルカの話を適当に流すとあくびをする。

 たまには日光浴も悪くない。


「ちょっと、ちゃんと話聞いてる?」

「『ベレール先生の隣に立ち、謎の凶悪な魔獣たちに臆することもなく! か弱い生徒を守ったのっ! あ、見て見て! この貝殻――』」

「あーいい! もういいですー!」

「『あーいい! もういいですー!』」


 思いっきり殴られた。

 さすがにおふざけが過ぎたか。


「で、なんで昨日から不機嫌そうなの?」

「こんだけ被害が出た上で、『明日は海を満喫しましょう!』なんて言い出したバカのせいだよ!」


 つまりルカ、お前だ。

 こっちは早く帰って休みたい一心だったんだぞ。


「せっかく来たんだから楽しみたいじゃん?」

「狂ってるな」

「その発言、ほとんどの一年生を敵に回すと思うんだけど」

「はぁ……」


 認めたくないがその通りだ。

 最初に言いだしたのはたしかに彼女だが、賛同する者が多かったため臨海学校が続行するハメになった。


 反対派なんて少数であり、昨日までの騒ぎは果たしてなんだったのかという有様である。


 しかもあのライエンですら賛成していたからな。

 亜人領分からん。


「あ、そうそう! フレイヤちゃんから聞いちゃったよー?」


 彼女の目がメガネ越しに光る。

 凄まじく嫌らしい笑みだ。


 俺はふと海辺ではしゃぎまわるフレイヤを見た。


 ちなみに()()()()以来、彼女とは一切話していない。

 というか目すら合わせてくれないほど避けられている。


 完全に嫌われた、ということだ。

 まぁおかげで後遺症もなく、ああして元気に走れているのだからそれでいい。


「で、なんの話だよ」

「カッコつけて森の奥まで進んだあげく、足を踏み外して海に落ちたんだって?」

「なに?」


 一体どんな話をしたんだろうか。


「あのレイシスが、コケて海に――――ぷぷっ!」

「ほっとけ」


 あぁ、なるほど。


 笑い話を流すことで、学校での俺のイメージダウンを狙ったのか。

 フレイヤらしい、可愛い仕返しだな。


 ……ところで俺のイメージ、これ以上落ちる余地はあるのだろうか。


「くふっ……! レイシスが! コケて……!」


 フレイヤからの報復とはいえ、さすがに少しムカついてきたな。


 というかよくよく考えてみれば、コイツに譲歩する理由はまったくない。


「疾風の書、第三――」

「あー待って待って! ごめんって! 笑いすぎたって!」

「以後気を付けるように」

「はーい。……っぷ!」


 やっぱり一度、このまま打ち上げてやるべきだろうか。


 そんなことを考えながら彼女を見ると、さすがに懲りたのか今度はちゃんと謝って来た。


「で、俺を笑うためにわざわざ来たのか?」

「わたしがあなたに会う理由、必要かしら……?」


 ルカが色っぽい声で囁いて来る。

 すると今度は胸を寄せ、上目使いで迫って来た。


 初対面ならドキっとしたかもしれないが、俺はもうこいつの性格を知ってしまっている。



 つまり取り合うだけ時間のムダだ。

 これはただ遊んでいるだけだろう。


「必要だな。用がないなら帰れ」

「ねぇ、少しは付き合ってくれても良くない?」

「めんどい」

「む~」


 さすがに疲れて来たな。

 こっちは昨日の疲労だって抜けていないんだ。


「いいからさっさと本題を言え」

「レイシスだし仕方ないかぁ……。配慮とかしなさそうだしなぁ……」


 なにがだよ。


「まぁいっか。――それでこれ、どう思う!?」


 ルカが突然その場で回り出す。

 一体なにをしたいのか理解できない。


「魔法的な儀式か? ――っておい」


 また殴られた。


「水着よ水着! てか今時『舞い』で魔法なんて使わないでしょ!」

「なるほど……」


 亜人領ではいまだに古い魔法が使われていると聞いていたが、どうやら間違った情報だったらしい。


「で、わたしの水着の感想は?」

「黒いな」

「うん」


 悪いがその手に乗る気はない。


「……え、それで終わり?」

「他に目立った特徴はないと思うが?」

「……ほーん」


 こいつ、ワザと同じ流し方をしやがったな。


 俺が心の中が悪態をついていると、彼女はスッと背を向けた。


「つぎはライエンあたり弄ってこよ」

「やっぱりからかっていたのか」


 この分だといつも遊ばれてそうだな。

 あいつ耐性なんてなさそうだし、ルカにとっては格好のおもちゃなのだろう。


 少し見てみたい気もするが、まぁいいか。


「レイシスって変に鋭いからつまんないわー」

「うるせえ。さっさと消えろ」

「ひっどいなぁ…………ってあれ?」


 愚痴りながら歩き去るのかと思えば、彼女は突然足を止めた。

 まだ俺で遊び足りないのだろうか。


「今度はなんだよ。またしょうもない事だったらさすがにキレるぞ」

「いやいや違うって。たださっきのキレイな貝殻、どこ行っちゃったんだろうって思って」

「――なに?」


 彼女に言われ視線を向ければ、たしかにあの貝殻が()()()いる。




 俺はサッと砂を払い落とすと、何食わぬ顔で立ち上がった。


「もういいわ。ちょっくら散歩でも行ってくる」

「だから本当だって!」

「べつに貝殻なんてどうでもいいんだよ。ほらさっさと失せろ」

「……へーい」


 そうやってもう付き合う気はない意志を伝えると、彼女はしぶしぶと言った感じで去って行った。


 いや、途中からスキップに変わったな。

 あの切り替えの早さは俺も見習うべきだな。




 やがて一人になった俺は、誰もいない場所はないか考えていた。



 いま聞こえて来たのはライエンの悲鳴、あとはルカの笑い声だろうか。

 どんな光景が広がっているのか容易に想像がつく。



 ミーリヤにフレイヤ、そしてアリシャも本当に楽しそうだ。

 海辺で水をかけ合っているようだが、あの様子なら心配いらないだろう。



 ――今度もなんとか終わらせれた。


 不意にそんな言葉が頭をよぎった。

 もちろん調べるべきこと、考えるべきことなんて山ほどある。


 が、それはシトリスに戻ってからでも遅くない。

 いまはただ、誰も欠けなかったことを喜ぼう。


「さて、しばらく療養だな――――」


 俺は白い貝殻があったハズの場所をもう一度確認すると、静かにこの場を後にした。


以上でレイシス視点での二章は終わりとなります。

大変お待たせしてしまいましたが、ここまで読んでくださったみなさんのおかげで何とか書ききることが出来ました。


この後もう一話、フレイヤたちが海辺で遊んでいた際の簡単なお話を追加する予定です。

そちらも読んでいただければ嬉しいです。



最後にお手数かとは思いますが、少しでも面白いと感じて下さった方がいましたら、評価やブックマーク、感想を残して頂ければ執筆の励みになります。


もう済んでいるよ、というそこの貴方へ。


本当に励みになりました。ありがとうございます。

まだまだ書き続けていきますので、今後ともよろしくお願い致します。

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