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人形作成師と機械人形の買い物

ノアとダンテリオンの買い物、2人ともう一体の機械人形の出会いの話

 

 初めての外にノアは忙しなくきょろきょろしていた。アトリエでは見たことないものがたくさんあるわけだから当然なのだが手を繋いでないと逸れてしまいそうだ。本当なら首輪でも付けて繋いだ方がいいだろうけど流石にそれは人権的にどうか、と思い止めた。機械人形オートマタに人権あるのかどうかは知らないが流石に少女に首輪と言うのは絵面的にイケない気がする。



 ダンテリオンはしっかりと手を繋いでノアと買い物を楽しんでいた。本もそうだが服が最初だろう。流石に男物の服じゃ申し訳ない。服屋に行くと店員がノアを見て笑った。



「いらっしゃい。可愛い子ね」



「あ、ああ……。その……この子…ノア…機械人形オートマタなんだけど服を選んでほしい。僕じゃセンスないしお願いしたい」



 女性物の服は分からない、なら詳しい同性に任せる方がいい。ノアはなんで?と言った表情をしたが、女性店員……リーニャは「お父さんはね、女の子の服詳しくないからお姉さんに任せてほしいな」と少し屈んで目線を合わせた。



 ノアはそうなの?と納得するとリーニャと共に店内を動き回っていた。


 女の子の服選びってこんなにも大変だっただろうかと記憶から掘り出すがまだ幼い頃だったこともあってそう言えば文句がなかったんだろうなと思わず苦笑してしまう。

 数時間待たされるのも納得だ。

 だがここまで長いものなのかと思うと軒先で待つことにした。ふとノアとは違う一体の機械人形オートマタと目が合った。男性型の機械人形オートマタ。たぶん自分以外の誰かが作ったのだろう。それを確信するのは頸部の接続部のサインだ。人形作成師ドールメイカーの名前を刻むのが常識的で……見ればノエル・ヴィットリアと書かれている。ノエルと言う人物が作成した機械人形オートマタなのが一目で分かる。


「君は……待ってるの?」


「……カイルは待っています。アーリエ様の買い物終わるまでここで待っているのです」


 カイル、と名乗った機械人形オートマタは礼儀正しく待っている。ただ……この国では忌むべき色とされている白い髪に赤い目……所謂アルビノの外見であり、通りゆく人からは気味悪がられているのだろう。目には輝きがない。ちょっと失礼、とサインを見るとノアよりも一週間前に作られたようだ。この街にダンテリオン以外の人形作成師ドールメイカーがいるなんで聞いたことない。


 恐らくは捨てられたのかもしれない。アーリエと言う女性が戻ってくるかもしれないと言っていたがアーリエは……3日前に病気で亡くなった。それは誰もが知っているのだ。この街の工場長夫人が亡くなったのは大きなニュースで……新聞に大きく取り上げられたのだから。


「……アーリエさんはちょっと用事思い出して帰ったみたいだ。カイル……よければうちに来ないか?アーリエさんに頼まれているんだ」


 なんで?とカイルは首を傾げたが主人が亡くなったなんて言えない。ならせめて優しい嘘を、家で預かるか廃棄するかだ。だが問題はノエル。ヴィットリアの許可がないと廃棄はできないことだ。所在地が分からない……困ったものだ。


 カイルの手を引くと適当に男性の服を見繕った。なら……彼もいっしょにノアと育てればいいのだ。

 ノアの服を選び終えたリーニャが試着室から出た。


 淡い黄色のワンピースにおしゃれに編み込まれた髪はオマケだろうか。機械人形オートマタより女の子と呼べる感じだった。ノアも満足したのか笑顔であった。服の値段は……うん、予想はしていた。財布から銀貨を出すと、カイルの分も会計をした。


「その子……ダンテリオンさんが引き取るんですか?工場長が奥様亡き後……そうしたみたいなんです。うちが預かろうにもうちはお父さん機械人形オートマタ嫌いみたいでどうしようもならなくて……」


「そうだったんですね……。カイル……」


 嬉しそうなノアに不思議そうにしているカイルにどう説明すべきか。カイルは生まれて一週間とは言えそれなりに理解できるのだ。リーニャがそうだ、と手を叩くとカイルとノアの手を握らせて笑った。


「カイル君!ノアちゃんとお友達になろう!友達ならずっといてもいいんだよ!」


 その言葉にノアは本当?と目を輝かせた。本当よと笑ってはダンテリオンを見た。


「ね、ダンテリオンさん!心配ならリーニャもたまにきます!ノアちゃんにあいたいし……ね」


ノアだけのつもりがカイルも、とはダンテリオンは仕方ないなと手を差し伸べては微笑んだ。


「カイル、おいで」


一人も二人も変わらないさ。機械人形オートマタを一人にしてはいけないんだから。


ノアもカイルの手を引くと笑っては引っ張った。


「カイルー!いこ!」


「……命令とあれば。ダンテリオン様、暫し世話になります」


深深と彼はお辞儀をするとノアの手とダンテリオンの手を握った。


「カイル、よろしくね」


機械人形オートマタには無いはずの人の温もりのような温かさを僅かに感じた。


カイルの笑顔が僅かに見え、顔が綻ぶ。


家路につくまでの間、2体の機械人形オートマタの笑顔は消えることなかった。



ダンテリオンの周り賑やかになりました。

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