機械人形の勉強
機械人形であるノアと人形作成師であるダンテリオンが一緒に勉強する話。
ノアを生み出した翌日、彼は1冊の絵本とノートとペンを渡した。彼女はなんだ?という感じに見つめるとダンテリオンはソファに座らせてテーブルに置いた。
「勉強しようか。生まれたてで早速だけどごめんね。ノア、僕の真似をしてみて」
そう言うとペンを持ち、絵本に書かれた文をノートに写していく。何事にも興味を持ち始めたノアはなかなかペンが動かない。それに気づいたダンテリオンは彼女の後ろから支えてそっと動かした。
「これがこの国の共通の字。こうやって書くんだよ、ノア……これが君の字だ」
大人の字で書かれた彼女の名前。ノアは感心したかのようにノートに大きく沢山の自身の名前を書き始めた。きらきらと目を輝かせては1ページ丸々自身の名前で埋め尽くされたノートをみてダンテリオンは笑った。
生まれたばかりの子ども……いや生まれたばかりなのだからそうなのだけど反応が可愛らしくて微笑ましくなってしまう。
ノアはそうだ、と絵本を捲ってそこからダンテリオンの名前の字を見つけると大きく書き始めた。ノートに大きく書かれた「ダン」と言う字に彼は嬉しくてノアの小さな身体を抱きしめる。昔、妹が生きてた頃確かにそうしてた。この日から僕は昔を始めている。だけどこれは昔じゃなくて現在なのだ。
「ダン、苦しいよ。それにお勉強もっとしたい!」
ノアの声にふと我に返ってダンテリオンは離すと小さな頭を撫でて、ごめんと呟く。つい嬉しくて可愛くて抱きしめてしまった。口をとがらせて怒るノアは絵本の中に書かれてる文字をどんどんノートに書いていく。
外見が14歳ほどにしか見えないのに中身はとても子供で、とても好奇心旺盛だ。絵本では足らないのか文字という文字が書かれた新聞を読み始めては声に出している。すごいな、と声には出せなかったが感心すると手加減できなかったのか盛大に破ける音がしてノアはソファから転げ落ちた。
新聞自体はそこまで高いものじゃないがノアに傷が出来たらと思うとダンテリオンは気が気でなかった。と言っても機械の身体は頑丈だ。ノアはにっこりと笑うと「大丈夫!」と言って転げ落ちたソファに座り直してはさっきの破けた新聞を取った。機械人形だからこそよかったけどこれだ生身の身体だと思うとぞっとする。
「ね、ダン!わたしにもっともっと教えて!これのこと沢山教えてよ!」
破けた新聞を持ってキラキラと話す彼女には厭きないどころがもはや楽しいことばかりだ。
そうだな、とダンテリオンは頷くが身なりにふと気づいて立ち上がるとクローゼットを開いた。
流石に作成時の長いロングワンピース一着しかないのは心もとない。妹の古い服しかないが……なにせ妹は5歳で亡くなったのだ。着れる服がないわけで取りあえずは買い物かと自身のクローゼットも開くとブラウスとズボンを取った。
ズボンは裾を切って彼女に合わせるとベルトで固定する、ブラウスは長いから裾を前で結んでやると機械人形の特徴の継ぎ接ぎは隠れただろう。一応昔の帽子を被せるとノアの手を引いた。
「ノア、君の本と服を買いに行こう。外に出るのも立派な勉強だ」
「うんっ!キラキラも沢山ね!」
キラキラ?何のことだとダンテリオンは思ったが今は彼女が楽しんでくれるならいい。
アトリエに、光が差した気がした。ノアの大きな声と共に。
「行ってきます!」