人形作成師と機械人形の邂逅
人が魂を込めて作ったものには命が宿る。
1人の男性と人形作成師と機械人形が生きた証を刻む物語である
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ある街の奥にある小さなアトリエ。少し埃っぽく、陽の射さない場所で青年は命を吹き込んでいく。テーブルには設計図もないのに彼は頭の中に設計図があるかのように手が動いていた。彼の名前はダンテリオン・メイカー。この街で 珍しい人形作成師として生計を立てている。他の町では競い合うように人形作成師が沢山いるのだがダンテリオンの住んでる街では機械人形は余りいないのだ。この街は工業の発達している街だが技術が優れていることもあり機械人形が必要ないのであった。といえども機械人形が必要な家庭もいる訳で、彼は機械人形の修理や作成をしているのだ。報酬は硬貨だったり食事だったりと彼の必要に応じてだ。
ふとひとつの額縁に入った写真を眺めてはダンテリオンは微笑み、今作ってるものに名前つけるかのように囁く。
「ノア」
完成した機械人形はどこまでも深い深海のように美しい蒼の瞳、それに負けないほどのプラチナブロンドの波打つ髪はこの世で美しい機械人形だった。彼の妹の名前、ノアと呼ばれた機械人形は青い瞳をゆっくりと瞬かせて金糸雀のような声を紡いだ。
ノアは彼の想い出の中で生きてる少女。自分のために作ったのだ。
「……ますたー、おはようございます。のあ……私はノア……認識しました。ノアはマスターを守る機械人形。どうか命令を」
ダンテリオンは予想内のことだと、1つ咳払いして優しく触れた。
「……初めまして。僕はダンテリオン・メイカー。ダンと呼んでくれ、ノア」
ダン、その響きははるか昔に捨てたものだったが彼女なら呼んでもいい。ダンテリオンの優しい表情は機械人形であるノアには分からないものだったが淡々とした口調で答えた。
「ではダン。ノアに命令をください。あなたを守るために作られた存在、あなたのための機械人形ですから」
あなたのための、それはとても嬉しいものではあったがダンテリオンには複雑だった。昔の再現なんて無理なの知っていた。それでも諦めきれなくて、ダンテリオンは願って作ってしまったのだから。
「……僕の家族になって。僕と毎日を過ごして」
戦いなんてしなくていい、兵器になんてならないで。ノアは普通の女の子のように生きて。あの子が叶えられたかった夢を叶えて欲しい。それが夢なのだから。
ノアは無表情であったが頷くとダンの手の甲に口付けた。
「……ダン、私はこれからあなたの家族になります。機械人形の私には家族は分かりません。ですがあなたの理想の家族になれるように尽くしますから」
刹那、妹の面影を見た。優しい声で「ダンお兄ちゃん」と呼ぶ声もした。ダンテリオンは我に返りノアを抱きしめた。機械人形のノアにはその行動が分からないが真似て抱き締め返した。
「ノアは戦わなくていいんだよ、ノアは女の子なんだから」
この国の戦が始まる時どうか彼女を奪わないで。抱きしめる腕に力が入る。ノアが「少し苦しい」との声で離し、ダンテリオンはごめん、と呟いた。
「ダン」
彼の名前を呼んだノアはぎこちないながらも笑っては手を握った。
「ノアに沢山教えてね。機械人形の私には分からないことだらけだから」
ダンが握った手のひらが開くと小指を差し出して笑った。
「ああ、ノア。僕がこれからたくさん教える。約束だ」
指切りげんまん 嘘ついたらお互いご飯抜き
そう言って誓って笑いあった。
新しく始まる日、君と過ごす二人暮らし。ダンテリオンの目に涙が溢れていた。
初めまして。拙い作品を閲覧して下さりありがとうございます。
ずっと頭の中で温めてた話なのでどこかで出せたらなぁと気持ちがありましてやとこさかけた感じでございます(笑)
スローペース更新になりますがよろしくお願いします。