学校に取り込まれる
よく子供の頃やった肝試し。何故か危険だとか聞くと行ってみたくなる。そしてその集団もまた、そんな一時の娯楽代わりに危険な場所へ向かう。まるで夜の外灯へ惹き付けられる蛾の様に。
草木も眠る丑三つ時、俗世的に言えば午前2時頃、某県道から外れた山間を一台の車が、この先にある目的地に向かって走っていた。周りには民家もなく漆黒の闇が広がっていた。
「本当にこの先にあるの?」
セカンドシートに座る女性が少し不安げにドライバーへ確認する。周りは真っ暗で民家無く、走る道はいつの間にか舗装すらまともでない道である。
「合ってるから大丈夫だって。早妃は怖がりだなぁ~」
「カーナビはこの先みたいね」
そして、それは車のヘッドライトの灯りに照らされながら現れた。そう、今回肝試しをする場所である廃校が。
時は少し戻って、大学にあるサークル棟の一室に心霊研究サークルと名が付いた部屋がある。心霊研究と名は付いているが、ぶっちゃけそういう場所に行ってみたい輩が集まってるだけのサークルであった。
そこには男4人、女2人の計6人が在籍しており、日々新しい場所を求め色々物色しつていた。何時もと変わらないそんな日にそれは訪れた。
コンコン・・・
ドアを叩く音に気付いた早妃は、返事をしつつおもむろにドアを開けた。そこには一人の少女が立っていた。
1年生にしては小柄な少女。しかし、背の低い子だっている。そもそも早妃も低い方であった。
「えっと、うちに何か用かな?」
入部とか思わないところが早妃である。
「怪しい廃校の情報いりませんか?」
まさかの心霊スポット情報提供であった。
それを聞いた部長が、その少女を部室に招き入れた。
少女の話では、ある場所に古いが4階建の廃校となった小学校があり、その小学校をある規則通りに巡ると帰られるが、規則を破ると学校に取り込まれ、2度と帰る事が出来なくなるとの事だった。
その話は聞いたことのない新しい情報だった。場所も近いのに不思議ではあったが、新しい情報の前にはそんなことは些細なことであった。そして、話を聞いた次の休みに皆で行くのであった。
目の前には、建っている場所を考えると不自然である木造でできた小学校が懐中電灯に照らされた。窓などは割れておらず、長い年月が過ぎているであろう放置されたそれは、まるでさっきまで子供達が居たかの様であった。
巡り方はこうであった。
2つのグループに分かれ、1つが右から入り、もう1つが左から入る。右のグループは1階→3階→4階→2階→入口、左のグループは2階→4階→3階→1階→入口と、蛇行しながら巡るらしい。こうするとグループどうしが巡る時間的にはそろって歩く事はあっても、前後ですれ違う事はなく巡れるとの事だった。
早妃は、左から入るグループとして仲間と共に学校に侵入する。
中に入ると、廃校の割にはホコリっぽさが無いことに不信感が湧くが、皆はそんな事を気にせず2階への階段を昇っていく。
2階は低学年のクラスだったらしい。教室を覗くと小さな机と椅子が整然と並んでいた。5つあった教室を全て覗いたが、全て同じであった。全ての教室の机と椅子が整然と並んでいたのである。
流石に皆も不信感が出てきた。何年も前に廃校した学校の教室にある机とかがいまだに整然としている事に。
4階は教室が3室と音楽室、理科室、家庭科室があった。ここにきて教室以外の部屋があったのである。まさか4階に在るとは思っていなかったメンツはちょっとビックリしていた。しかし、その部屋は2階で見た教室とは違い荒れ放題であった。音楽室を覗く時なんかは、かなり緊張しながら覗いたのに、肩透かしであった。仕方なく何もなかった音楽室の隣にある教室へ移った皆であるが、そんな中早妃はふと、上の階から物音がするのに気が付く。止まった早妃に気付いた他の人も、早妃が気付いた音に気付く。その音は誰かが歩く音に酷似していた。一瞬、もう1つのグループがわざと音をたててこっちを怖がらせてると思った。しかし、ここは4階である。当たり前この上は屋上であり、今回のルートには入っていなかった。
「何で上から足音聞こえるの?」
早妃は怖さからか、皆が思っている事を代弁する様に声に出していた。
「あ、あいつらが俺達を怖がらせようとやってるんだよ」
「あぁ。あいつらならやりそうだな」
「戻ったも知らんぷりしちゃおう」
「でも、やることがせこいね」
それぞれが、そんな事を漏らしながら教室を後にした。
それから残りの教室を探索終えた時、自分達が来た方角に懐中電灯の光が見えはじめた。むこうのグループが上から降りてきたみたいであった。ここで隠れてビックリさせてやろうかと思ったが、誰かが
「こっちに追い付くって事は、あっちの方が巡るペース早いんじゃないかな」
そうである。この巡り方だと、どちらかが遅く巡ると追い付かれてしまうのである。そして、追い付かれるという事は、怖くて進むのが遅いからでしかない。そして、さっきの脅かし。ここで追い付かれるわけにはいかないのであった。
そそくさと3階に逃げた?皆は、おもむろに向けた懐中電灯の光に照らされた廊下に愕然とした。ボロボロの壁にやはりボロボロになっている廊下がそこにあったのである。ある意味、この風景こそが本来の廃校の風景のはずなのにである。
この階も2階と同じで教室が5つあった。しかし、どの教室も荒れており、3つ目の教室を覗くとボロボロになったカーテンが外からの風でか、ユラユラとしていた。
「ねぇ、どんどん荒れた教室になってない?」
早妃は、あの音が聞こえてからこの学校が怖くてたまらなかった。でも、それを言ってしまうと、また怖がり早妃と揶揄されるので、教室についての意見を言ったのである。
「確かにこの階の教室は確かにボロボロだな。窓も割れてるし・・・!」
「あっ!」
「えっ?!」
誰かが発した声に皆が反応する。
そう、窓が割れているのであった。外から見た時は割れていなかった窓がである。これには流石に皆が怖がりはじめた。
「た、多分あいつらが怖がらせる為に割ったんだよ。そうに違いない」
「そ、そうだよね。でなきゃおかしいもんね」
早足で3階を抜けて1階に降りると、右からの入口に到達する。そして、そこから1階を抜ければ自分達が入った入口にたどり着く。
はずだった。
1階に降りるとそこには、もう1つのグループがたたずんでいた。先にゴールしていたらしい。
「なんだ、早いじゃんか。もう、巡りきったのかよ」
「2階の窓、割っちゃ不味くない?」
「怖かったよ~」
そう話しかける3人。やはり、しった相手を見つけると、今までの恐怖が無くなるものである。彼ら達も同じ様で、こちらを見つけると、手を上げて近寄ってきた。
「この学校、雰囲気はあるけど怖くなかったな」
「いやぁ、色々な場所に行ってるとこの位は平気だなぁ」
「「「だよなぁ~」」」
ひとりが怖くなかったと言い、ひとりが平気と言う。それに全員が納得するかの様に返事をしたのだった。
早妃以外が全員。
早妃は震えていた。皆がそろったはずのこの光景に対して。
そして早妃は、彼ら達に質問をしたのだった。
「屋上で足音ならしたでしょう?」
そうすると、バレたかぁという感じに彼らは暴露した。
「やっぱ、バレたかぁ~。いい感じに音出てたと思ったのになぁ」
「たから、バレるっていったじゃん」
「でも、雰囲気はあっただろ?」
早妃は何故、あの音を聞いてから無性に怖くなったのか。ここにきて思い出す。そう、この学校には屋上らしき場所は見えていた。しかし、4階から屋上に上がる階段はどちら側にもなかったのである。無いのに彼らは屋上で足音を出したと言う。
やはり、何かがおかしい。早妃はそう思っていたら、
「もう、皆そろったからここから出ようぜ」
「そうそう。1階も何にも無かったし」
「面倒だから帰ろうぜ~」
彼らはそう言って校舎から出ようとする。
皆も確かに面倒だから出ようとする。しかし、早妃が叫んだ。
「何であなた達は全員男なの?彼女はどこですか?」
その瞬間、周りの空気が凍るかの如く冷え込んだ。
そして、皆は思い出す。この学校の不思議な出来事に。
ホコリなき入口、整然と並ぶ机と椅子がある2階。上がれない屋上。2階より部屋数が多い4階。割れている窓がある3階。
そして、今までもう1つのグループだと思っていた、謎の人達。
その彼らが振り向く。それは人の形した人ならぬ者であった。
「わぁ~」
「な、なんだあれは~」
「きゃぁ~」
皆一目散に逃げる。
一人は2階へ。一人は入口へ。そして早妃は1階の廊下に逃げた。全員バラバラに逃げてしまったのである。
一人で逃げてる事に気付いた時は、自分達が入ってきた入口に付いた時だった。振り向いても誰もいない。
(探しに行かないと)
一瞬戻らないといけないかと思い、踵を返そうとして思い出す。この巡りの事を。そう、規則通りに巡らないと取り込まれるという事を。
(ダメ。まずは出なきゃ!)
そう思い、早妃はそのまま入口から外へ飛び出した。
そして、車まで逃げた早妃は息が荒れながらも振り返った。
そこには、半壊してボロボロに風化している小学校が懐中電灯の光に照らしだされていた。
その後の事はよく覚えていない。気が付いたら病院のベットの上だった。どうやら、あの後に別のグループが同じ様に肝試しに来た際に、倒れてた自分を発見して救急車を呼んでくれたそうだ。
そして、自分以外の人は誰もいなかったとの事だった。校舎内も含め・・・
2年後。
いまだに早妃以外の人物は発見されていない。
誰もいなくなり、閉鎖された部室にふらっと寄った早妃。あれは何だったのか。いまだに考えても全く解らない。ここにやって来た少女の事。今は崩れてしまっているがあの時には確かにちゃんと建っていた小学校。そして、仲間と思った人ならざる者。
ただ、1つだけ解っている事がある。そう、皆はあの学校に取り込まれてしまったという事だけは・・・




