運命の分岐点
「あぁ あなたがここにいること
あなたの全てを 祝福しているようだよ」
先ほどまでの黒い雲が嘘のように、爽やかな空が顔をのぞかせ始めたではないか。
更に、真新しい石碑の周りに緑が茂り始めたのだ。
しかし目を閉じているステラはそれに気づかないまま歌を続ける。
「花が 鳥が 風が 緑が 全てがあなたを見守っているようだ
私は感謝したい この広い世界であなたと出会えたこと
あなたと共に居られることに」
緑はどんどん生い茂り、花が咲いて蔓が伸びていく。
「…っ、ステラ」
はっと気づいたカイルがステラの肩に手を置くと、植物の動きが止まり、ステラの歌も止んだ。
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「…おまえ、魔力が開花したんじゃないか?」
葬儀が終わり、チャペルの後片付けをしているとカイルがそう話しかけた。
「…そう、なのかな…」
大抵、13歳頃に魔力は開花するのだが、ステラの場合これまで全くその兆候が見られなかった。
「…感情が昂ぶって開花することもあるらしいからな」
「…そうなんだ…」
魔力を消耗したからなのか、やけにだるさを感じたステラはそれっきり黙って作業をしていた。
すると、大きな音を立ててチャペル後方の扉が開いた。中に入ってきたのは初老の紳士。
「…あの…父の葬儀はもう…」
「…あなたは、彼の娘さんですか?」
「え、えぇ。と言っても実の娘ではないのですが…」
そう口ごもると、紳士はステラの手を取って唐突に言った。
「単刀直入に申し上げます。私の学園で声楽を学びませんか?」
「…は、はい…?」