悲しみの果てにあるもの
始まりは2ヶ月前、まだ厳しさの残る2月のことだった。
「〜♪」
大好きな歌を口ずさんで父が神父を務める教会から少し離れた畑で野菜を収穫していると、遠くから兄の声が聞こえた。
「兄さん?私はここよ?」
「ステラ!と、父さんが…!」
16年間自分を育ててくれた父、フランク・エマーソンが長年患っていた病によって、帰らぬ人となった。
父とは言っても、血は繋がっていない。
ステラが赤ん坊の頃に引き取ってくれたのだ。
それでも両親の顔すら知らないステラにとっては唯一無二の存在。
これまでの思い出が蘇り、ステラはもう動かなくなった父の枕元で声をあげて泣いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そして葬儀は父の教会で執り行われた。
顔も知らない人が大勢父を偲んで泣いているのを見て、改めて父の偉大さを感じる。
「それでは…」
喪主を務めるカイルの声で、父の棺が埋められた。
《フランク・エマーソン》と彫られた石碑が涙を流した。どうやら天も父の死を偲んで泣いているようだった。
「…これが父さんに披露する最後の歌だ」
「…うん、そうだね」
ステラは濡れる地面に膝をつき、静かに目を閉じて息を吸った。
「…ほら見てごらん
あの青い空を 白い雲を 青い花を 白い鳥を」
ステラの声は透きとおるように辺りに響いた。
「………‼︎」
その時、人々は息を呑んだ。